ラットの神経細胞2000個を用いた7万以上のシナプス結合のマッピングにハーバード大学の研究チームが成功

ハーバード大学の研究者らが、4096個のマイクロホール電極アレイをCMOSチップ上に配置して、2000個のラットの神経細胞をプロットし、7万以上のシナプス結合のマッピングに成功したことがわかりました。
Synaptic connectivity mapping among thousands of neurons via parallelized intracellular recording with a microhole electrode array | Nature Biomedical Engineering
https://www.nature.com/articles/s41551-025-01352-5

Harvard team built a CMOS chip to map 70,000 synaptic connections between 2,000 rat neurons | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/harvard-team-built-a-cmos-chip-to-map-70-000-synaptic-connections-between-2-000-rat-neurons

研究を行ったのはハム・ドンヒ(咸燉憙)教授らのチームです。
シナプス結合は、電子顕微鏡によって可視化することが可能ですが、走っている信号の測定や記録はできません。一方、パッチクランプ電極を用いれば、微弱な神経信号も正確に記録することが可能ですが、ほんの一握りの細胞しか測定できないため、多数の神経細胞を研究するには限界がありました。
研究に用いられたマイクロホール電極アレイは、パッチクランプ電極と似ていますが、1つのチップにアレイを4000個以上配置することで、何千ものニューロンを効果的にモニターすることができるとのこと。また、ナノニードル電極よりも神経細胞へのアクセスが優れている上に、作成も容易である点が、研究の特徴の1つだそうです。
これまでもシナプス結合のマッピングは行われたことがありますが、従前の記録は「300」だとのことで、7万以上のシナプス結合のマッピングに成功した今回の記録は、実に200倍以上の成果を挙げたことになります。
2000個の神経細胞から得られた情報量は膨大で、研究チームの最大の課題の1つは「圧倒的な量のデータをどのように解析するか」だったとのこと。今後、それぞれの神経接続が生きた脳でどのように機能するかをマッピングすることができれば、たとえばAIのトレーニングや、より効率的なAIチップの製造への応用が期待でき、膨大な電力抜きに巨大な計算能力が得られる可能性があります。
また、シナプス結合の発火・誤発火を理解することで、心の知覚にどのような影響を与えるのかを観察し、メンタルヘルスの研究にも利用できると期待されています。
なお、人間の脳には平均して860億個のニューロンがあり、ニューロン1つあたり平均して35個のシナプス結合があると考えると、合計のシナプス結合は30兆にも上るため、今回の研究は、人間の脳のマッピングに向けての千里の道のりの一歩にすぎないとのことです。
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in サイエンス, Posted by logc_nt
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