脳の学習原理は人工知能のものとは根本的に異なっている
イギリスのMRC脳ネットワークダイナミクスユニットとオックスフォード大学による研究で、脳の学習原理が人工知能のものとは根本的に異なってることが示されています。
Inferring neural activity before plasticity as a foundation for learning beyond backpropagation | Nature Neuroscience
https://www.nature.com/articles/s41593-023-01514-1
Study shows that the way the brain learns is different from the way that artificial intelligence systems learn | University of Oxford
https://www.ox.ac.uk/news/2024-01-03-study-shows-way-brain-learns-different-way-artificial-intelligence-systems-learn
人工知能(AI)に学習を行うとき、同じ情報を用いて何百回もトレーニングすることになりますが、生物の脳は新しい情報を1度見るだけでも学習することができます。
研究チームは、学習中の脳のニューロンの挙動やシナプス結合の変化を説明する情報処理モデルを調べて分析、シミュレートし、人工のニューラルネットワークとは根本的に異なる原理であることを発見しました。
人工のニューラルネットワークの場合、外部アルゴリズムはエラーを減らすためシナプス結合を調整しようとします。
しかし、研究チームによると、人間の脳の場合はシナプス結合の調整より前に、まずはニューロンの活動を最適なバランスに調整しようとするとのこと。この調整は、既存の知識を保持しつつ、干渉せずに学習を効率化するために行っているものだと考えられるとのことで、研究チームは「prospective configuration(予期的調整)」と呼んでいます。
また、「prospective configuration」を採用したモデルは、コンピューターシミュレーションによると、自然界で人間や動物が直面するタスクで、人工ニューロンネットワークよりも効果的な学習ができることが示されたとのこと。
論文の筆頭著者であるYuhang Song氏は、「機械学習の場合、既存のコンピューター上で『prospective configuration』をシミュレートすると、生物学的な脳とは根本的に異なる方法で動作するため、時間がかかります。このため、新たなタイプのコンピューターや、脳に着想を得た専用ハードウェアを開発する必要があります。新たに生み出されたハードウェアなら、高速かつほとんどエネルギーを消費することなく『prospective configuration』を実装することができます」と述べました。
・関連記事
信者と対話して罪を赦す「AIキリスト」が誕生、罪を告白した3分の2が「スピリチュアルな体験だった」と語る - GIGAZINE
AIに自力で解決しようとするのではなく「正しいタイミングで外部ツールを頼る」方法を学ばせることでパフォーマンスが約30%上昇したという研究結果 - GIGAZINE
ジョー・バイデンと習近平が「核兵器を管理するのはAIではなく人間であるべき」という考えに同意 - GIGAZINE
約1億6600万円でAI搭載のヒューマノイドロボット「Ai-Da」が描いたアラン・チューリングの肖像画が落札される - GIGAZINE
・関連コンテンツ