サイエンス

私たちはコンピューターのシミュレーションの中で生きているという「シミュレーション仮説」を実証する方法とは?


「私たち人間が生きる現実世界は、実は高度な文明をもつ何者かによるシミュレーションに過ぎない」と考える「シミュレーション仮説」というアイデアがあります。シミュレーション仮説は直観的には「ありえない」と思ってしまいますが、経験や意識、歴史などについても「シミュレーションがねつ造したもの」と言われてしまうと反論が難しいもの。このシミュレーション仮説が正しいかどうかをテストする方法について、ポーツマス大学の物理学者であるメルビン・M・ボプソン氏が解説しています。

How to test if we're living in a computer simulation
https://theconversation.com/how-to-test-if-were-living-in-a-computer-simulation-194929


「宇宙が実はシミュレーションである」という考え方は、2003年にオックスフォード大学教授で哲学者のニック・ボストロム氏が提唱したもの。人類は仮想の宇宙を作ってシミュレーションを行うことでその研究を行っていますが、同様のことをより発達した文明が行う場合、「地球や、地球に住む人々がシミュレーションの中の住民である可能性もまた高い」とボストロム氏は主張しています。シミュレーション仮説の是非については、数学者や理論物理学者の中でも意見が分かれており、天体物理学者のニール・ドグラース・タイソン氏は「その可能性はフィフティ・フィフティであり得る」と述べています。

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一方で、オックスフォード大学の理論物理学者たちによる研究チームは、2017年にシミュレーション仮説を否定する研究結果を示しました。研究では、「重力異常」と「計算の複雑性」から「我々が暮らす現実世界は、単なるシミュレーションではない」と結論付けられています。ここでは、「粒子の数に比例してシミュレートが複雑になる場合、シミュレーションに必要なコンピューターパワーが際限なく大きくなる」ということが重要なファクターになっています。

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By Bruce Aldridge

ボプソン氏はシミュレーション仮説がもっともらしいとされる理由について、「宇宙全ての目に見える物質には最小単位である『素粒子』があり、これは情報処理に基づく最小サイズのビットと合致します。すなわち、私たちの世界は『ピクセル化』されていると言えます」と説明しています。また、物理法則がプログラミングのコードに似ている点や、数学の方程式や幾何学模様が世界のいたるところに発見ないし適用できるという、世界が完全に数学的であるという点も強く影響しています。

また、シミュレーション仮説の最も裏付けとなる証拠として、ボプソン氏は量子力学を挙げています。量子力学には、「決まった状態にある粒子でも、実際に観察したり測定しない限り、存在が確定しない」と考える「状態の重ね合わせ」というものがあります。これは、観察者やプログラマーを必須とする仮想世界のシミュレーションと同質であるとボプソン氏は指摘しています。さらに、「結び付いた粒子は、どれだけ離れても、理論上の光速を越えた速度で自動的に対応した動きをする」という「量子もつれ」についても、物理法則では考えられないが仮想シミュレーションのコードで設定すれば説明可能だと考えられます。


シミュレーション仮説を証明するためにどのような実験が可能なのか、ボプソン氏は大きく分けて2種類のアイデアを提案しています。まず、私たちの宇宙がシミュレートされているものだとすると、私たちの周囲のいたるところに多くの情報ビットが含まれていると想定するのが合理的な考えです。「これらの情報ビットを検出すると、シミュレーション仮説が証明されます」とボプソン氏は述べています。

ボプソン氏は2022年に、「素粒子あたりの最も可能性の高い情報量」について具体的な予測を行う論文をオープンアクセスの査読付き科学メガジャーナルであるAIP Advancesで公開しました。素粒子内にある情報をエネルギーのフラッシュで消去した場合、結果として生じる光子の周波数範囲を予測できます。ボプソン氏が2019年に提案した「質量エネルギー情報(M/E/I)等価原理」によると、質量はエネルギーまたは情報として表現できる上、その逆も可能です。現実世界の最小単位である素粒子のエネルギー量と、シミュレーション世界の最小単位であるビットの質量などを計算することで、シミュレーション仮説について検証できるとボプソン氏は説明しています。


2つ目のアプローチとして、ボプソン氏は物理学者のジョン・バロー氏による「シミュレーションでは小さな計算エラーが蓄積され、それを継続するにはプログラマーによる修正が必要である」という主張を取り上げています。バロー氏の主張によると、シミュレーションされている世界では、自然の定数が変化するなどの矛盾した実験結果が突然現れて、それが新しい常識として固定化されるといった経験を私たちがする可能性が高いとのこと。したがって、これらの定数を監視し続けることも重要だとボプソン氏は指摘しています。

ボプソン氏は最後に、シミュレーション仮説はあくまで実験的なアイデアだとしても、シミュレーション仮説を真剣に受け止めて考えるほど、世界の最大の謎の1つである「私たちの現実の性質」について証明または反証できる可能性が高まると主張しています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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