「ゲーム・オブ・スローンズ」原作者が架空の宇宙に存在するエイリアンウイルスの行動方程式を物理学の論文として発表

人気海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の原作小説である「氷と炎の歌」の作者であるジョージ・R・R・マーティン氏と、「Wild Cards」シリーズの著者のひとりであるイアン・トレギリス氏が、架空の宇宙におけるウイルスのダイナミクスを説明するための数式を論文で発表しました。

Ergodic Lagrangian dynamics in a superhero universe | American Journal of Physics | AIP Publishing
https://pubs.aip.org/aapt/ajp/article/93/2/127/3331568/Ergodic-Lagrangian-dynamics-in-a-superhero

Imagining the physics of George R.R. Martin's fictional universe
https://phys.org/news/2025-01-physics-george-rr-martin-fictional.html

George R.R. Martin has co-authored a physics paper - Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2025/01/george-r-r-martin-has-co-authored-a-physics-paper/

ファンタジー小説作家のマーティン氏が作成・編集したシェアード・ユニバース作品がWild Cardsシリーズです。複数の著者によりシリーズ作品が執筆されており、マーティン氏だけでなく多数の有名作家がシリーズ作品を執筆しています。Wild Cardsは人間のDNAを変異させるエイリアンウイルスを題材としているのですが、マーティン氏とトレギリス氏は同作品に登場するウイルスの行動方程式を、査読付きの学術誌であるAmerican Journal of Physicsで発表しました。

Wild Cardsのエイリアンウイルスに関する科学を探求するというアイデアは、Wild Cardsの公式ブログへの一連の投稿から始まったそうです。トレギリス氏は「他の物理学者と同じように、私は大まかな見積もりから始めましたが、その後、行き過ぎてしまいました。最終的には半分冗談で、ブログに書くよりも本物の物理学論文を書く方が簡単かもしれないと提案しました」「理論家として、単純な基礎モデルで規範を整理できるのではないかと考えずにはいられませんでした」と述べ、ブログ上で自身のアイデアを記述するよりも物理学の論文として公開する方が簡単だったと説明しています。

トレギリス氏がエイリアンウイルスの行動方程式として導き出したのはラグランジュの定式化で、システムが進化するさまざまな方法を考慮しています。サイエンス系メディアのPhys.orgは「ラグランジュの定式化は物理学の基本原理であり、架空の例は強力な教育ツールにもなります」と指摘しました。

トレギリス氏はエイリアンウイルスの行動方程式を導き出すことは楽しいが終わりのないパズルだったと語っています。なお、マーティン氏とトレギリス氏はフラクタルや熱力学の類似性に基づくモデルを試行錯誤したあと、ラグランジュの定式化にたどり着いたと説明しました。論文では「我々はWild Cardsに登場するウイルスという抽象的な問題を、単純で具体的な動的システムに変換しました。このシステムの時間平均動作により、結果の統計的分布が生成されます」と記されています。

今回発表された論文により、Wild Cardsのウイルスは物理学でモデル化できるようになりました。ただし、トレギリス氏はこれは原作における絶対的なルールではないと強調しており、「優れたストーリーテリングとは、登場人物、つまり彼らの欲求、ニーズ、障害、課題、そして彼らが世界とどのように関わっているかということについてです。架空のウイルスは、Wild Cardsの世界、そこに住む登場人物、そして彼らの行動から生まれる筋書きを正当化するための単なる口実に過ぎません」と説明しています。