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180本の論文に名を連ねる謎のフランス人「カミーユ・ヌース」とは何者なのか?


2020年に突如として現れたフランス人「Camille Noûs(カミーユ・ヌース)」は、天体物理学や分子生物学、生態学などの分野にわたる180本の論文の共著者として名を残しています。この人物は一体何者なのか、学術雑誌のScienceが紹介しています。

Who is Camille Noûs, the fictitious French researcher with nearly 200 papers? | Science | AAAS
https://www.sciencemag.org/news/2021/03/who-camille-no-s-fictitious-french-researcher-nearly-200-papers

実は、カミーユ・ヌースは実在の人物ではありません。カミーユ・ヌースは、研究者による研究者のための保護団体「RogueESR」によって考案された架空の人物であり、フランスで男女両方に付けられる名前として一般的な「Camille(カミーユ)」と、フランス語で「私たち」を意味する「Noûs(ヌース)」という名字から構成されています。

RogueESRは、2019年にフランスで起草された研究改革法案に抗議していました。この法案は国の研究開発費を2030年までに3%引き上げるというものですが、同時に新しいタイプの研究職の導入を求めるものでもありました。このポジションを求めるあまり、出版数や引用文献数などの指標に基づく研究評価制度を利用し、価値の低い大量の論文を執筆する研究者が現れることをRogueESRは危惧していました。


そこで、RogueESRは「共著者に架空の研究者を含めるとどうなるのか」という実験を開始。RogueESRに賛同する研究者たちがカミーユ・ヌースの名前を自身の論文の共著者として加えた結果、カミーユ・ヌースの名前が載った論文の数は記事作成時点で合計180本に上っています。RogueESRはカミーユ・ヌースについて、「科学における集団的努力を体現し、個人の定量的評価に抗議することを目的とし、カミーユ・ヌースという名前を論文に加えている」と述べています。


しかし、架空の人物を論文の共著者に加えるということはさまざまな問題を引き起こします。ノースカロライナ大学シャーロット校の生命倫理学者であるリサ・ラスムッセン氏は「論文に共著者として名前を連ねるということはその論文に対する責任を負うということであり、架空の人物ではそれが不可能だ。カミーユ・ヌースの名前の価値が大きく損なわれた時には、論文の著者は信用を失う可能性がある」と指摘しています。

既にエジンバラ王立協会や学術雑誌「Solar Physics」などが、カミーユ・ヌースの名前が入った論文を認めない方針を打ち出しており、RogueESRの活動に対する批判の声が上がっています。ラスムッセン氏は「オープンで協調的な団体の大きな目標は称賛に値するが、共著者として名を連ねる場合、その要件は満たさなければならない」と述べています。

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in Posted by log1p_kr

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