サイエンス

シートベルトに埋め込んで人間の生体信号をリアルタイムで追跡するバイオセンサーが誕生


シンガポール国立大学と中国清華大学の研究者らが、利用者の皮膚に直接触れることなく心拍数などを計測できるセンサーを開発しました。シートベルトに組み込むことで、交通事故の防止に役立てられる可能性があるとのことです。

A digitally embroidered metamaterial biosensor for kinetic environments | Nature Electronics
https://www.nature.com/articles/s41928-024-01263-4


Seatbelt-integrated biosensor could reliably track the alertness and stress of pilots and drivers
https://techxplore.com/news/2024-11-seatbelt-biosensor-reliably-track-stress.html

シンガポール大学のジョン・ホー氏らは、「バイオセンサーは、ドライバーの覚醒度をモニターしたり、心身の不調を検出したり、ストレスレベルを測定したりするために自動車へ搭載できます。しかし、装着者の動きや外部からの干渉の問題があるため、心拍数や呼吸などのバイオマーカーを物理的な接触なしに測定することは依然として困難です」と指摘。このような問題を解消するため、服の上からでもバイオマーカーを測定できるセンサーを開発したとのことです。

以下の画像で、シートベルトに付いている白い帯がバイオセンサー。胸に付いているのが呼吸計測用バンドで、右腕に付いているのが心電計のセンサーです。


バイオセンサーを服の上から当てた状態で、呼吸の状態や心拍数を計測できます。


ホー氏らが開発したバイオセンサーは「メタマテリアル」をベースに設計されていて、センサーとして機能する導電糸を直接シートベルトに編み込んでいるとのこと。この設計により、車両の振動や他の乗客からの環境ノイズを軽減しながら、微妙に揺れ動く生理学的な反応を衣服を通して検出することが可能になるそうです。

ホー氏らは、飛行機内のキャビンのシミュレーション環境と、実際に走行する自動車内でバイオセンサーの性能を検証し、「利用者の体にフィットし、ダイナミックな環境でもわずかな心肺信号を確実に検出する」という結果を示しました。

ホー氏らは「私たちは、シンガポールのさまざまな交通条件下で1時間半にわたり自動車を走らせ、バイオセンサーが周囲の環境に影響を受けないことを示しました。さらに、航空機の機内シミュレーターでモニタリング能力を評価し、睡眠から覚醒する人のわずかな心拍数変化を検出することにも成功しました。これらの結果は、バイオセンサーがいろいろな環境で信頼性の高いモニタリングを行える可能性があることを強調するものです」と述べました。


ホー氏らが開発したバイオセンサーは、近いうちに改良され、もっと現実的なシナリオでテストされる可能性があるとのこと。将来的には一般の自動車や飛行機のシートベルトに組み込み、運転中の心不全などを検出できるようになるかもしれないそうです。

共同研究者のシー・ティアン氏は「私たちのバイオセンサーは、走行中の車両内でドライバーの心拍と呼吸を連続的かつ確実に監視することができます。今後は、センサーの無線コンポーネントを小型化し、コンパクトなモジュールに統合して効率よく大量生産することに重点を置く予定です。また、生理学的データを分析して、ドライバーの疲労、ストレス、健康状態を評価するアルゴリズムの開発も目指しています。自動車メーカーと協力し、実際の環境におけるシステムの改良と検証を行う予定です」と述べました。

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in 乗り物,   サイエンス, Posted by log1p_kr

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