サイエンス

スペインで発見された世界最古のワインと思われる液体に予想外の成分が含まれていたことが判明


2019年、スペイン南部のカルモナという都市で約2000年前の壺(つぼ)が発見されました。壺は無傷で完全に密封されており、中には液体が入っていることが確認され、後の検査でワインだと思われる液体であることが明らかになりましたが、液体と一緒に驚くべき物が入っていたことがわかりました。

New archaeochemical insights into Roman wine from Baetica - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352409X24002645


World's oldest wine discovered in southern Spain
https://www.nbcnews.com/news/world/worlds-oldest-wine-discovered-southern-spain-rcna157894

2019年にカルモナで民家の修復作業が行われていたとき、古代ローマの墓地とみられる構造物が発見されました。墓の大きさは幅1.73m×長さ3.29mで、西暦1世紀頃に作られたものだとみられ、おそらく家族の墓だと考えられています。


入り口の左右の壁には全部で8つの小さな空間があり、そのうち2つは空で、残りの6つにはそれぞれ壺が入っていました。


壺の中には埋葬の儀式に使われる供え物や琥珀(こはく)のビーズなどが入っていましたが、そのうちの1つには赤みがかった液体が入っていることが判明。後の調査で成分的には「白ワイン」である可能性があることがわかり、さらに液体と共に「遺骨」が一緒に入れられていたことがわかりました。

壺を調査した研究者らは「古代ローマ世界におけるワインの宗教的意義を考えると、ワインは非常に象徴的で、埋葬の儀式と密接な関係がありました。実際、ワインは通常、水や蜂蜜のような食物とともに埋葬品の中に置かれ、死者がより良い世界へ渡るという願いが込められた供物として使われていたと考えられています。従って、今回骨壷の中で発見された赤っぽい液体は、間違いなくワインか、あるいは長い年月をかけて腐敗したワインの名残りかもしれません」と指摘しました。

これまでのところ、液体の状態で保存されている最古のワインと推定されるのはドイツのシュパイヤーで発見された「シュパイヤーワインボトル」で、約1700年前のものと考えられています。今回発見された液体がワインであると認められると、世界最古のワインの記録が約300年分さかのぼることになります。


発見された液体の原産地を特定することはできませんでしたが、液体に含まれるミネラルを分析したところ、カルモナの南に位置する都市、ヘレスで現在も生産されているシェリー酒に匹敵する可能性があるとのことです。

なお、研究者らの発表によれば、墓は高位の人物にふさわしい装飾品などで満たされていたため、「おそらく裕福な家族の墓だった」と考えられるとのこと。壺は空のものもあれば指輪や香水の残骸などが確認されたものもあり、これらはいずれも死者が死後の世界で使うために埋葬されたものだと考えられるといいます。また、液体と一緒に入っていた骨は男性のものでしたが、これは「古代ローマでは女性がワインを飲むことは禁じられていたため、男性の骨であることは当然」と考えられるそうです。

研究者らは「古代ローマでは、他の社会と同様、死には特別な意味があり、残された人々は何らかの形で死者を記憶にとどめたいと願っていました。遺骨が骨壺に納められた後は、一種の儀式として、あるいは故人がより良い世界へ移行するのを助けるためとして、骨壺にワインが満たされたに違いありません」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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