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効率の良い太陽光発電を実現するための日照評価に人工衛星からの画像を適用する手法をGoogleが解説


近年のエネルギー需要は急速に増加しており、国際エネルギー機関(IEA)の調査では、2014年から2024年までの10年間にかけて電力使用量は約2倍に増加していることが明らかになっています。そのため、急増する電力需要に対し住宅へのソーラーパネルの取り付けなど、再生可能エネルギーへの移行が急ピッチで進められています。Googleが2024年12月12日に、住宅環境によって変化する太陽光の当たり具合を航空写真から判断する「Solar API」が人工衛星が撮影した画像に対応し、世界中のあらゆるエリアでの日照評価が可能になったことを報告しました。

[2408.14400] Satellite Sunroof: High-res Digital Surface Models and Roof Segmentation for Global Solar Mapping
https://arxiv.org/abs/2408.14400

Satellite powered estimation of global solar potential
https://research.google/blog/satellite-powered-estimation-of-global-solar-potential/


住宅用ソーラーパネルの設置の際には、住宅所有者への理解や手作業による測定、ソーラーパネル設置に向けた設計などの作業が行われるため、時間がかかるほか、複雑になることが問題視されてきました。特に、この問題はデータが限られている新興市場で顕著とのこと。

そこで、Googleは航空機から撮影した建物の屋上の画像を元にソーラーデータを構築する「Solar API」を2023年にリリースしています。これにより、3Dモデルを利用した設計の最適化や効率的なソーラーパネルレイアウトの実現、コストの削減などが可能になりました。

これまで、Solar APIは日本、アメリカ、ヨーロッパだけで使用可能でしたが、新興市場における太陽光発電のニーズの高まりから、Googleは人工衛星が撮影した画像のSolar APIへの適用について調査を実施。人工衛星が撮影した画像は航空写真よりも解像度が低く、正確な標高マップの不足や画質の低下、斜めから撮影したことによるゆがみなど、さまざまな問題を抱えているとのこと。その一方で、機械学習モデルを衛星画像に適用することで、数値表層モデル(DSM)と屋根セグメンテーションマップの生成が可能になり、日照評価が可能な範囲が世界規模に広がります。


GoogleではSolar APIの人工衛星画像への適用のために、1つの画像から高品質の高さマップや屋根を平面化できるインスタンスを生成する新たな機械学習モデルを開発。また、撮影した画像のゆがみを元に高さを視覚的に分かりやすくするモデルも開発されています。

これらのモデルは、平均絶対誤差(MAE)や屋根勾配誤差などのさまざまな指標を使用して定量的に評価されます。

人工衛星の画像を用いることで、Solar APIはさまざまな国での日照評価が可能になりました。以下は国別の高さマップの誤差を示したグラフ。Googleによると、国間のバラつきは小さいものの、チリとフィリピンはグラウンドトゥルースデータのノイズの問題もあって誤差が大きくなっているとのこと。Googleは「DSMが文化によって異なるさまざまな建物のスタイルやサイズ、複雑な屋根の構造に対応できることを示唆しています」と評しています。


Googleは「私たちのモデルは、さまざまな建築様式や風景にうまく一般化されます。屋根が平らになっている地域では、DSMは障害物や屋根の表面を高い精度で正確に捉えるほか、傾いた屋根が多いエリアでは、DSMは屋根の傾きを効果的に予測することが可能です」と述べました。以下はインド・アヨーディヤーで人工衛星が撮影した画像(左)とDSMが出力した画像(中)、最終的に生成された屋根セグメンテーションマップの画像(右)です。


マレーシア・クアラルンプールでの画像が以下。


オーストラリア・アデレードでの画像はこんな感じ。


Googleは「今回のSolar APIの人工衛星の画像への拡張により、ソーラーデータの可用性が大幅に向上しますが、入力する画像の解像度や雲量などの要因が最終的に出力される画像の品質に影響を与える可能性があります。私たちは、継続的な研究とユーザーからのフィードバックを通じて、精度の向上に取り組んでいます。今後の研究では、障害物の検出や屋根の材質の検出、既存のソーラーパネルの識別など、新しい研究の方向性を探ることにも焦点を当てていきます」と語りました。

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in ソフトウェア, Posted by log1r_ut

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