TikTok禁止をアメリカの連邦控訴裁判所が支持、このままだと2025年1月に1億7000万人ものTikTokユーザーが消滅か
アメリカでは2024年4月に、TikTokの親会社であるByteDanceに対してTikTokの売却を命じる「TikTok禁止法」が可決されました。この法律に対してはTikTokや著名なTikTokユーザーらが「アメリカ合衆国憲法に違反している」と主張していましたが、アメリカのコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所が2024年12月6日、TikTok禁止法を支持する判決を下しました。
24-1113-2088317.pdf
https://media.cadc.uscourts.gov/opinions/docs/2024/12/24-1113-2088317.pdf
TikTok on verge of ban after losing in court - The Verge
https://www.theverge.com/2024/12/6/24297454/tiktok-divest-or-ban-dc-circuit-court-appeals
U.S. TikTok Ban Is Upheld by Appeals Court - WSJ
https://www.wsj.com/politics/policy/tik-tok-congress-ban-court-ruling-1f0d6837
Federal appeals court upholds law that could ban TikTok, say platform could be unavailable in U.S.
https://www.nbcnews.com/tech/tech-news/federal-judges-uphold-tiktok-ban-say-platform-us-rcna183106
2024年4月、アメリカの上院と下院で「Protecting Americans from Foreign Adversary Controlled Applications Act(外国の敵対者が管理するアプリケーションからアメリカ人を守る法)」が可決され、現職のジョー・バイデン大統領も署名しました。
この法律は、ソーシャルネットワーキングアプリが「外国の敵対者が管理するアプリケーション」であるとアメリカ大統領および関連条項によって判断された場合、270日から360日以内に配布・維持・提供の禁止を求めるものです。「敵対的な外国」に指定されている中国が管理するとされているTikTokについても、法律に基づいてアメリカ企業に売却することが義務づけられており、売却しない場合はアメリカでアプリを配信することができなくなります。TikTok禁止を念頭に置いた法律であることから、TikTok禁止法とも呼ばれます。
TikTokを使い続けること自体は犯罪ではないものの、GoogleやAppleなどのアプリ配信ストアを運営する企業は、TikTokアプリをダウンロードまたはアップデート可能にすることが禁止され、違反した企業にはユーザー1人ごとに5000ドル(約75万円)の罰金が科されます。つまり、法律に違反した企業は合計で数千億ドル(数十兆円)もの罰金が科される可能性があるというわけです。
当然ながらTikTokはこの法案に反対しており、「TikTokの禁止は表現・言論の自由を保障するアメリカ合衆国憲法修正第1条に違反している」として、コロンビア特別区連邦控訴裁判所に異議申し立てを行いました。
TikTokがアメリカでの禁止措置をめぐり訴訟 - GIGAZINE
ところが12月6日、コロンビア特別区連邦控訴裁判所の裁判官団は満場一致で、「TikTok禁止法は合憲である」という判決を下しました。裁判所の意見書では、TikTokがもたらす国家安全保障上のリスクとTikTokが提案する救済策については、政治部門によって複数年にわたる調査・検討が行われており、この点は法律の正当性を示す上で大きく有利だと主張しています。
この判決に対し、TikTokは最高裁判所で覆されることを期待する声明をXで発表。声明では、「最高裁はこれまで、アメリカ国民の言論の自由を保護してきた実績があり、この重要な憲法問題でも同様の対応をしてくれると期待しています。残念ながら、TikTok禁止は不正確で欠陥のある仮説的な情報に基づいて考案され、押し進められ、アメリカ国民に対する完全な検閲につながりました。TikTok禁止が阻止されない限り、2025年1月19日にはアメリカおよび世界中の1億7000万人以上のアメリカ国民の声が封じられることになります」と述べました。
TikTok Statement on Court Decision:
— TikTok Policy (@TikTokPolicy) December 6, 2024
"The Supreme Court has an established historical record of protecting Americans' right to free speech, and we expect they will do just that on this important constitutional issue. Unfortunately, the TikTok ban was conceived and pushed through…
一方、2025年1月20日に就任予定のドナルド・トランプ次期大統領は、選挙戦でも積極的にTikTokを活用するなど、TikTokに好意的な姿勢を取ってきました。また、「TikTokがなければFacebookはより大きくなります」「私はFacebookの規模を2倍にしようとは思っていません。もしTikTokを禁止すれば、他のSNS、特にFacebookが大きな利益を得るでしょう。特に選挙に関しては、Facebookは私たちの国にとって非常に悪い存在だと思います」と述べ、Facebookの競争相手が必要だとする立場も表明しています。そのため、第2次トランプ政権下ではTikTok禁止が撤回される可能性があるのではないかと期待されています。
しかし、経済紙のBloombergはトランプ氏の見解には一貫性がなく、国家安全保障機関や有力な共和党議員らを抑えてTikTokに反対するのは困難ではないかと指摘。また、11月27日にはFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOと会食しており、両者の関係は修復に向かっていると報じられるなど、Facebookに対する強硬的な姿勢も軟化しているとのことです。
TikTok Ban: Trump May Change His Mind Again - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2024-12-06/trump-might-change-his-mind-about-tiktok-ban-again
Bloombergは、「トランプ氏が票を必要としなくなった今、TikTokの存在はトランプ氏にとってほとんどプラスになりません」と述べ、トランプ氏がTikTok禁止法を撤回する可能性は低いという見方を示しました。
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