自分の創作物がAI学習に使用されたかどうかを確認できるようになる「AIの透明性と責任に関する法案」がアメリカで提出される
自分の作品がAIの学習に許可なく使用されたかどうかを簡単に確認できるようにするための法案「人工知能ネットワークの透明性と責任(TRAIN)法」がアメリカで提出されました。この法案が実現すれば、著作権者は学習の記録にアクセスできるようになり、自分の作品が使用されたかどうかを確認できるようになるとのことです。
TRAIN Act Seeks Transparency in AI Use of Copyrighted Works
https://www.billboard.com/pro/senate-train-act-transparency-generative-ai-training-copyrighted-works/
Senator introduces bill to compel more transparency from AI developers
https://www.nbcnews.com/tech/senate-bill-transparency-ai-developers-rcna181724
TRAIN法は、著作権者が「自分の作品がモデルのトレーニングに使用された」という「誠実な信念(good faith belie)」を宣言できれば、著作権者は生成AIモデルのトレーニング記録の開示を請求できると定めるものです。
法案では、AIの開発者が反論するには、著作権者の著作物が使用されたかどうかを特定するのに十分な資料を明らかにするだけでよいとされています。明らかにしない場合、法的には、開発者は著作権で保護された作品を使用していると仮定されます。
TRAIN法を提出した民主党のピーター・ウェルチ上院議員は「仕組みはシンプルです。自分の作品がAIのトレーニングに使用された場合、トレーニングに使用されたかどうかを著作権者が判断する方法が必要です。使用されていたことが明らかになった場合、補償を受けなければなりません」と述べました。
近年、生成AIの爆発的な成長により、AIの技術革新と革新の糧にされた著作権者の対立が浮き彫りになっています。画像、文章、音楽、映像などさまざまな分野のクリエイターが、著作物で生成AIを学習することについての是非を問うています。
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また、生成AIを開発する企業の多くはそのトレーニング方法を開示しておらず、クリエイターたちは自分たちの作品がAIに学習されているかどうかを判断することができないのが現状です。TRAIN法は、こうした「ブラックボックス問題」に直接切り込むものとして期待されています。
一方で、大規模なAIモデルは大量の情報を無作為に集めているものも多く、開発者でさえどのようなデータが収集されているかを正確に把握できないとの指摘もあり、開発者が開示請求に対応できない可能性もあります。
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TRAIN法は、アメリカレコード協会やアメリカ作曲家作詞家出版者協会、アメリカ音楽家連盟などの団体から支持を得ており、クリエイターの権利の尊重を視野に入れつつ、イノベーションのバランスをとる可能性を秘めた点が評価されています。
アメリカレコード協会のミッチ・グレイジャー氏は「ウェルチ上院議員の注意深く調整された法案は、AIに透明性をもたらし、作品が同意なしにトレーニングされた場合に、アーティストと権利者が公平に法廷へ持ち込めることを保証するものです。アメリカレコード協会はウェルチ上院議員のリーダーシップを称賛し、この法案を法制化するよう上院に強く要請します」との声明を出しました。
アメリカ作曲家作詞家出版者協会のエリザベス・マシューズ氏は、「アメリカの活気ある創造的経済の未来は、人間のクリエイターの権利を保護する法律にかかっています。著作権で保護された作品がいつ、どのように生成AIモデルの訓練に使用されるかについて透明性を要求するというTRAIN法は、クリエイターが正しく補償される可能性を切り開くものです。当協会の100万人を超える作詞家、作曲家、音楽出版社を代表して、ウェルチ上院議員のリーダーシップに拍手を送ります」と述べました。
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