転んでケガをした高齢者は1年以内に認知症を発症するリスクが高いことが判明
転倒は高齢者にとって最も身近なケガの原因であり、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が行った調査では、2018年には65歳以上の高齢者のうち27.5%が「過去1年間のうちに転倒した」と報告したことがわかっています。外傷を負った240万人以上の高齢者を追跡した新たな研究では、転倒で負傷した高齢者は1年以内に認知症を発症するリスクが高いことが判明しました。
Risk of Dementia Diagnosis After Injurious Falls in Older Adults | Geriatrics | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2824208
BWH Press Release - Brigham and Women's Hospital
https://www.brighamandwomens.org/about-bwh/newsroom/press-releases-detail?id=4814
Shockingly Common Injury Linked With an Increased Risk of Dementia : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/shockingly-common-injury-linked-with-an-increased-risk-of-dementia
認知機能が低下した兆候のひとつとして「運動機能の衰え」が存在するため、転倒によるケガは高齢者の認知症の発症リスクと関連している可能性があります。しかし、これまでのところ転倒予防のガイドラインにおいて、認知機能の健康状態については詳しく考慮されていません。
そこでアメリカのブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究チームは、2014年から2015年にかけてケガのために公的医療保険制度のメディケアを利用した65歳以上の高齢者245万3655人分のデータと、ケガから1年間の追跡データを分析しました。
すでに認知症だと診断されていた患者を除外した後、研究チームは「転倒によってケガを負った高齢者」と「転倒以外の要因でケガを負った高齢者」に患者を分類し、ケガから1年以内に認知症だと診断された割合を比較しました。
分析の結果、患者の約半数が転倒によってケガを負っていたことが判明しました。そして、転倒によってケガを負った高齢者はそうでない高齢者と比較して、ケガから1年以内に認知症を発症する可能性が20%以上も高いことがわかりました。
以下の図は縦軸が累積の認知症診断数、横軸がケガをしてからの日数を表しており、黒い実線が転倒でケガをした高齢者、オレンジ色の破線が転倒以外の要因でケガをした高齢者を示しています。
論文の共著者であり、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院で外科の助教を務めるモリー・ジャーマン博士は、「転倒と認知症の関係性は双方向のようです。認知機能の低下は転倒の可能性を高める可能性がありますが、その転倒によるトラウマも認知症の進行を加速させ、将来的に認知症だと診断される可能性を高める可能性があります」とコメントしています。
今回の研究結果はあくまで転倒と認知症の関連性を示したものであり、直接的な因果関係を証明したわけではありません。それでもジャーマン氏は、「転倒はさらなる認知スクリーニングが必要な人々を特定するのに役立つ、前兆のイベントとして機能する可能性があります」と述べ、転倒した高齢者に対する早期介入の重要性を強調しました。
・関連記事
日中に過度の眠気を感じたり活動する意欲がなかったりする人は認知症予備軍である可能性 - GIGAZINE
認知症の予測にはうつ病ではなく「無気力」が役立つとの指摘 - GIGAZINE
認知症は「12年前」に予測できるとの研究結果が発表される、ヒントは視覚情報の処理速度 - GIGAZINE
認知症と診断された人の約13%が実際は「治療可能な肝臓の病気」かもしれないという研究結果 - GIGAZINE
アルツハイマー病対策に「筋トレ」が有効かもしれないという研究結果 - GIGAZINE
20~30代が将来「認知症」にならないためにやるべき6つのこと - GIGAZINE
「一握りのナッツ」を毎日食べている人は認知症のリスクが低いとの研究結果 - GIGAZINE
よくネットを使う高齢者は認知症のリスクが圧倒的に低いという研究結果 - GIGAZINE
収入や学歴が低い人は若年性認知症を発症するリスクが3倍も高い - GIGAZINE
・関連コンテンツ