日中に過度の眠気を感じたり活動する意欲がなかったりする人は認知症予備軍である可能性
アメリカのアルベルト・アインシュタイン医学校の研究者らが行った新しい研究により、日中に過度の眠気を感じたり活動する意欲がなかったりする人は、認知症の前段階とされている運動性認知リスク症候群(MCR)の発症率が高いことが判明しました。
Association of Sleep Disturbances With Prevalent and Incident Motoric Cognitive Risk Syndrome in Community-Residing Older Adults | Neurology
https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000210054
American Academy of Neurology: Neurology Resources | AAN
https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/5211
Extra Sleepiness During The Day Could Be a Signal of Pre-Dementia : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/extra-sleepiness-during-the-day-could-be-a-signal-of-pre-dementia
MCRは歩行速度の低下と軽度の認知障害を症状とする症候群であり、認知症の前段階であるといわれています。研究チームは、日中の眠気や活動の意欲とMCRの関連性を調べるため、認知症ではない65歳以上の被験者445人を募集して研究を行いました。
被験者の平均年齢は76歳であり、研究の開始時に睡眠に関するアンケートに回答しました。アンケートでは「夜中に目が覚めるかどうか」「寝ようとしても30分以内に寝られないことがあるか」「暑すぎて、あるいは寒すぎて睡眠に困る頻度」「睡眠を補助する薬を服用しているかどうか」といった質問が行われました。また、日中の眠気を評価するために運転中・食事中・その他社会活動に従事している時に起きているのが困難になったかどうかを尋ねたほか、何かを行う意欲についても調査されました。
被験者の運動機能はトレッドミルの歩行速度で評価され、研究開始から年に1回の間隔でテストが実施されました。被験者の平均追跡期間は3年間であり、被験者のうち177人が「睡眠が悪い人」に、268人が「睡眠がいい人」に分類されたとのことです。
分析の結果、日中に過度の眠気があり物事への意欲が薄い被験者は35.5%がMCRを発症しましたが、そうでない被験者がMCRを発症する割合はわずか6.7%でした。年齢やうつ病、その他の健康状態といった要因を調整しても、日中に過度の眠気があり物事への意欲が薄い被験者は、MCRを発症するリスクが3倍以上だったと報告されています。
以下のグラフは、実線が「Good sleepers(睡眠がいい人)」、破線が「Poor sleepers(睡眠が悪い人)」であり、縦軸がMCRを発症していない人の割合、横軸が研究開始時点からの日数を示しています。明らかに睡眠がいい人の方がMCRの発症率が低いことがわかります。なお、右側になるにつれてグラフの変動が大きくなっているのは、日数が経過するほど追跡されていた被験者数が少なくなることが原因です。
論文の筆頭著者であるアルベルト・アインシュタイン医学校のヴィクトワール・リロイ博士は、「私たちの調査結果は、睡眠問題のスクリーニングの必要性を強調しています。人々が睡眠問題について助けを求めれば、後年の認知機能低下を防ぐことができる可能性があります」と述べました。
その一方で、睡眠の問題と認知機能低下の関係、そしてMCRが認知症の発症に果たす役割を調べるには、さらなる研究が必要とのことです。
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