Raspberry PiのCEOが「7年間は営業担当が0人だった」「ロンドン市場に上場した理由」「ロシアでのラズパイ軍事利用への対応」などの裏話を語る
シングルボードコンピューターを開発するRaspberry Piは2024年6月に株式上場を果たし、2024年上半期には1億4400万ドル(約216億円)の売上を記録しました。そんなRaspberry Piのエベン・アプトンCEOがFinancial Timesのインタビューに応じ、興味深いエピソードを語っています。
Investor relations - Raspberry Pi
https://investors.raspberrypi.com/
‘We didn’t have a sales person’: Raspberry Pi CEO on building a tech start-up
https://www.ft.com/content/2c250887-d0c3-4348-bc11-cfd1898b8fd0
Raspberry Piはシングルボードコンピューターやマイコンなどの開発および販売を行う企業で、2024年には小型マイコン「Raspberry Pi Pico 2」や無線機能付きマイコン「Raspberry Pi Pico 2 W」、産業用途および組み込み用途向けコンピューター「Raspberry Pi Compute Module 5」、AIチップモジュール「Raspberry Pi AI HAT+」など数多くの製品を発売しました。また、2023年10月に発売したシングルボードコンピューター「Raspberry Pi 5」は小型ながらブラウジング程度のPC作業ならサクサク実行可能な処理性能を備えており、記事作成時点でも品切れが続く人気ボードとなっています。GIGAZINEでもRaspberry Pi 5は細かくレビュー済みで、以下のリンク先にRaspberry Pi 5関連のレビュー記事をまとめています。
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Raspberry Piシリーズは当初は慈善団体のRaspberry Pi財団によって開発および販売が実施されていましたが、2013年には開発と販売を担う子会社「Raspberry Pi (Trading) Ltd」が設立されました。その後、子会社は社名を「Raspberry Pi Holdings plc」に改め、2024年6月11日にロンドン証券取引所への上場を果たしました。ロンドン証券取引所では2016年のArmの上場廃止以降、目立ったテクノロジー企業の少なさが指摘されていたため、Raspberry Piはニューヨーク市場への上場も検討したそうですが、アメリカでの商談旅行中に出会った投資家から「イギリスとアメリカのファンドマネジャーによる評価に目立った差はない」と聞かされたことからロンドンでの上場を決意したそうです。ただし、アプトンCEOはロンドン市場への上場は愛国心からではなく純粋にビジネス上の利益を追求した結果だと述べています。
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Raspberry Piは2024年上半期に前年同期比61%増の1億4400万ドル(約216億円)の売上を記録し、利益は前年同期比47%増の3420万ドル(約51億3000万円)となりました。順調な成長を示しているRaspberry Piですが、初期のRaspberry Piを販売していたころは需要を満たすだけの製品を生産する資金が不足していたとのこと。このため、Raspberry Piは自社の設計を他社に販売するロイヤルティモデルによって経営を維持していました。
また、アプトンCEOによると設立から7年間は営業担当が1人もいなかったとのこと。Raspberry Piの記事作成時点の従業員数は134人で、そのうち25人前後が営業担当として働いているそうです。
Raspberry Piはケンブリッジ大学のプロジェクトを源流としており、記事作成時点でもケンブリッジ周辺に拠点を置いています。Raspberry Piの製品のほとんどは南ウェールズに位置するソニーの工場で生産されており、Raspberry Piの本社から車で4時間で工場まで移動可能です。このため、生産状況の確認や品質確認が容易となっています。Raspberry Piでは中国の深センの工場を利用する計画も存在していましたが、製造管理の問題から計画は断念したそうです。
Raspberry PiはハードウェアだけでなくOSやドライバなどのソフトウェアも開発しています。ハードウェアとソフトウェアの開発チームは同じフロアで作業しており、互いにコミュニケーションを取りながら開発を進めています。アプトンCEOは「シリコンバレーにサテライトオフィスを設置する必要はないでしょう」と語り、物理的に近い位置で作業することの重要性を説いています。
なお、Raspberry Piは「Raspberry Piがロシアで軍事利用されている」という問題への対処に取り組んでいるそうで、「ハードウェアから再販業者を特定できる仕組み」の導入を進めているとのことです。
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