締め切りに遅れた仕事や作品はたとえ内容が同じでも締め切りに間に合ったものより低評価を受けることが判明
学校の宿題や仕事の提出物など、日常でこなすタスクには締め切りが付き物ですが、さまざまな理由で締め切りを破ってしまった経験がある人も多いはず。トロント大学とスタンフォード大学の研究者らが行った研究では、たとえ提出された作品や仕事の質が同等でも、「締め切りに遅れた」というだけで見る人の評価が低くなってしまうことが判明しました。
On time or on thin ice: How deadline violations negatively affect perceived work quality and worker evaluations - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0749597824000578
Researchers find missing deadline has a more negative impact than you might think — for you and your work | University of Toronto Scarborough News
https://utsc.utoronto.ca/news-events/breaking-research/researchers-find-missing-deadline-has-more-negative-impact-you-might-think-you
Experiments Reveal What Happens When You Hand in Work Late : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/experiments-reveal-what-happens-when-you-hand-in-work-late
トロント大学のマーケティング・心理学教授であるサム・マーリオ氏らの研究チームは、作品や提出物が締め切りに間に合ったのかどうかが内容の評価に与える影響を調べる実験を行いました。マーリオ氏は、「私たちが見つけた研究はすべて、締め切りが労働者の心や行動にどのような影響を与えるのかを調べたものでした。私たちが知りたかったのは、締め切りが他人の心や行動にどのような影響を及ぼすのかという点です」と述べています。
研究チームはさまざまなシナリオで合計18件の実験を行い、参加した被験者は合計6982人に達しました。被験者には企業の管理職や幹部、人事担当者など誰かを評価する仕事をしている人が含まれ、広告のチラシや芸術作品、ビジネスの提案書、製品の売り込み資料、写真、ニュースの記事などさまざまなものが評価対象に選ばれました。実験では被験者に対し、その作品や提出物が「締め切りに対していつ頃提出されたのか」という情報も与えられたとのことです。
実験の結果、締め切りに間に合った作品と比較すると、締め切りに遅れた作品はたとえ内容がまったく同じであっても、一貫して「質が低い」と評価されることがわかりました。マーリオ氏は、「アートコンテストの応募作品、学校の提出物、ビジネスの企画書など誰もがまったく同じものを見ましたが、それがいつ届いたのかという知識を作品の評価に役立てずにはいられませんでした」と述べています。
以下のグラフは、縦軸が作品や提出物を評価したスコアを示しており、横軸が締め切りに対してどのタイミングで提出されたのかを示しています。「1 Day Early(締め切り日より1日早い)」「Morning of(締め切り日の朝)」といった締め切りに間に合った場合と比較して、「1 Hour Later(締め切りの1時間後)」以降はガクッと評価が下がっていることがわかります。
今回の研究では、締め切り前に提出したものであれば、締め切りの数日前だろうが締め切り直前だろうが評価に有意な差が出ないことも確かめられました。そして、締め切りに遅れた場合はたとえ締め切りの1日後だろうが1週間後だろうが、評価は同じように否定的なものになったとのこと。
締め切りに遅れた場合の評価が下がる傾向は、従業員が事前に「締め切りには間に合わない」と伝えていた場合でも当てはまりました。また、これまではずっと締め切りを守ってきた従業員であっても、締め切りに1回遅れただけで被験者からの評価は下がってしまいました。
従業員が締め切りに遅れた場合、被験者は従業員の誠実さが低いと考え、将来その従業員にタスクを依頼する可能性が低くなると回答しました。研究チームはこの結果から、締め切りに遅れると従業員は自分の価値を証明し、昇進する機会が制限されてしまう可能性があると指摘しています。
実験のうち1つは中国の高校で行われており、生徒たちは「アートコンテストに提出された芸術作品」を評価しました。この際、生徒らには「芸術作品そのもの以外の情報は無視するように」と伝えられましたが、それでも締め切りに遅れた作品は低い評価を受けました。この実験は、締め切りに遅れたことの影響が言語・年齢・文化を超えていることを示しているほか、締め切りを設定したのが関係ない人でも同様の影響があることを示唆しています。
締め切りに遅れた悪影響をある程度軽減できたのは、締め切りに遅れた正当な理由がある場合でした。たとえば「裁判の陪審員に選ばれたので出廷しなくてはならなかった」といった、本人の意思でコントロールできない理由があった場合、被験者は締め切りに遅れたことを否定的に見ませんでした。また、「その締め切りや作品自体が重要なものではない」と伝えられていた場合、評価への悪影響はそれほど大きくならなかったとのこと。
マーリオ氏は、「締め切りに関するコミュニケーションは非常に重要です。もしそれが厳しい締め切りである場合、マネージャーは従業員に知らせるべきです。締め切りに間に合わなかった理由が自分ではどうしようもなかった場合、従業員は上司に知らせるべきです」と述べました。
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