やるべき物事を先延ばしにしてしまう理由とは?先延ばししないためにできることとは?
「仕事を終わらせる」「メールの返信をする」など、面倒なタスクを後回しにして完了を先延ばしにした経験がある人は多いはず。「なぜ人はやるべきことを先延ばしにしてしまうのか」「先延ばしにしないためにできることはあるのか」について、ダラム大学の心理学教授であるFuschia Sirois氏が解説しています。
Why do we procrastinate? | Live Science
https://www.livescience.com/human-behavior/why-do-we-procrastinate
Sirois氏は、「基本的に先延ばしは、あるタスクを回避するために行われます。多くの場合、タスクそのものではなく、そのタスクに付随する感情が先延ばしに結び付きます」と述べています。また、Sirois氏は「大学でエッセイを書く課題が出された際に、間違えたらどうなるかという恐怖心や自己不信の感情を抱いた場合、最初の一行の執筆に取り組むことができなくなり、先延ばしを行う可能性が高くなります」と具体例を提示しました。
一方でSirois氏は「先延ばしとは、不必要かつ自発的な遅延の特定の形態であり、他のタスクを優先する必要があることや、予期せぬ緊急事態によって引き起こされるものではありません」と指摘。また「先延ばしにしがちな人は、そのタスクが自分や他人にとって重要かつ価値があることや、先延ばしにすることで自分や他人に害を及ぼす可能性があるとわかっているにもかかわらず、先延ばしにしてしまうことが多いのです」と述べました。
大学生を対象としたこれまでの研究で、自制心に関連する脳の領域である左背外側前頭前皮質の灰白質の量が多い学生は、他の学生に比べてタスクの先延ばしをしない傾向が確認されています。また、左背外側前頭前皮質と前頭葉の間の神経接続が多ければ多いほど、ネガティブな感情のコントロールに優れ、先延ばしで得られる短期的な利益よりも長期的な利益に目を向け、早くタスクに取り組む可能性が高いことが報告されています。
また、先延ばしにしがちな人では、脅威を検出する脳の扁桃体が大きくなる傾向があるとのこと。このような人物は、「メールの言い回しの仕方」などで強い不快感を感じ、その不快感を避けたいという衝動が、タスクを完了しなかった際に予想される結果よりも優先される可能性があることが明らかになっています。
さらに、先延ばしの傾向は遺伝性形質である可能性が示唆されていることについてSirois氏は「先延ばしの傾向に遺伝的な裏付けがある可能性はありますが、だからといって、それがあなたの性格であることを意味するわけではありません」と述べています。
Sirois氏は、先延ばしの傾向を形成する上で、遺伝的要因だけでなく環境的要因も重要と指摘しています。Sirois氏によると、普段は先延ばしをしないような人でも、家族の死など、長期間にわたって脳のリソースを使用するような状況に陥ると、先延ばしをすることがあるとのこと。
確かに先延ばしをすることで、手っ取り早く何かに対処することが可能ですが、先延ばしをしている人物はそのタスクによってストレスが積み重なり、その結果精神衛生を損なうだけでなく、学業などの成績が悪化し、最終的に経済的困窮につながるような悪循環に陥る可能性があるとされています。
Sirois氏はタスクを先延ばしにしない方法として「目の前のタスクに圧倒されそうになったら一歩引いて、そのタスクがどんな感情を引き起こしたのか、なぜそのタスクを避けたいのかを自分で評価する」ことを勧めています。具体的な方法として、大学のエッセイや仕事上の課題の場合、その課題の不明な点を明確にしたり、小さな課題に分割したりすることが重要とのこと。
また、そのタスクに関して意味を見いだすことや、タスクをやり遂げた自分に対してご褒美をあげることも先延ばしを避けることに役立つ可能性をSirois氏は示唆しています。
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