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執筆作業を「先延ばし」にすることは悪いことではないというアドバイス


いいアイデアが浮かばなかったり、デスクに向かうエネルギーが足りなかったりして、執筆作業を先延ばしにした経験のある人は多いはず。先延ばしは悪いクセだと自分を責めてしまうこともありますが、執筆を先延ばしにすることは悪いことばかりではなく大きな利点を生む場合もあると、心理療法士で作家のアンナ・ホーゲランド氏が語っています。

Anna Hogeland on the Rewards of Procrastination ‹ Literary Hub
https://lithub.com/anna-hogeland-on-the-rewards-of-procrastination/


やらなくてはいけないタスクがあるときについSNSをチェックしたり他のことをしたりすることで「先延ばし」にしてしまう習慣は、単に「怠慢」「性格」で片付けられるものではなく、認知心理学では近年よく研究される心理的なテーマです。オープンアクセスの医学誌であるJAMA Network Openに掲載された論文では、「先延ばしクセ」がある人は、先延ばし傾向が低い人と比べて、肩や腕の痛み、睡眠の質の低下、孤独感、経済的困窮を報告する割合が高かったと報告されているように、先延ばしはそのタスクだけではなく精神的・肉体的なダメージが伴う可能性も考えられています。

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一方で、ビジネスコンサルティング企業のLead Above Noiseを創業したレイチェル・クック氏は、「先延ばしがむしろ利益になる事例もある」と主張しています。クック氏はペンシルベニア大学ウォートン校心理学部のアダム・グラント教授が行った実験結果を引用し、「創造性を必要とする仕事の場合は、先延ばしが有効に働く可能性がある」として、予定よりも進捗が早くなりがちという人に対して「ちょっと先延ばしにしてみる」ことを勧めています。

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クック氏の指摘する「先延ばしの利点」は主にビジネスシーンのものですが、ホーゲランド氏は小説の執筆中においても、先延ばしによる大きな利点があると述べています。

ホーゲランド氏は2023年の夏に小説を執筆中でしたが、育児を初めとした家事のタスクが多かったり、あるいはそれらが片付いていてもインスピレーションを求めて友人と散歩をしたりインスタグラムでアーティストの投稿を見たりしながら、まったく執筆を進めず先延ばしにしていた時期があったそうです。しかし、ホーゲランド氏が次に作業デスクに向かったとき、女性が昔の友人と話しているシーンを、アーティストの投稿で見た美術館を舞台として、自然に書き進めることができたとのこと。

ホーゲランド氏は作家を志していた頃、さまざまな作家による「完了するまで一度に一つのことに集中して取り組むべき」「携帯電話の電源を切りましょう。チャットもメールもSNSもダメ」「毎日書くこと。そして、書きたいと思うかどうかにかかわらず、書かなければなりません」「まず着手し、そして常に書くべき」といったアドバイスに従って執筆にチャレンジしました。ホーゲランド氏はこれらのアドバイスは全て正しいとしつつも自分には合わなかったと述べ、「問題はルールそのものではなく、私が信頼するものを見誤ったことでした。これらのルールはそれぞれの作家にとって効果的なプロセスであり、真の意味で独創的な価値のあるものとは、何よりも自分自身の直感への忠誠です」と語っています。


「1日に決められた時間、決められた文章量を、納得いかない文章だとしても出力する」というようなアプローチは、少なくともホーゲランド氏にとってはプレッシャーとしてパフォーマンスを低下させるものでした。そのため、好きなときにできる限りデスクに向かい、他のことがしたくなった場合には他の場所へ向かう、というスタイルにしたそうです。結果として、デスクに向かった時は「先延ばし中」の経験がインスピレーションとしてあふれ、それまで以上に想像力豊かなライティングができたとホーゲランド氏は話しています。

ホーゲランド氏は「インスピレーションのために執筆を先延ばしにする」場合と、「執筆が嫌で回避する場合」とでは決定的な違いがあると述べています。インスピレーションを求めて執筆から離れる場合、自身の中には欲望やエネルギー、興味やリビドーが満ちています。一方、ただ執筆を回避したい時には、特に目的地を決めずただ他の場所にいたいだけという精神状態にあります。

しかし、この「回避」の状態が必ずしも悪いというわけではなく、無理にデスクへ向かっても大きなストレスを伴うことになるため、「これは私が書くべきテキストなのか?」ということを問い直し、自分のやりたいこと、やらなければいけないことを見つめ直す大変な作業が重要になるとホーゲランド氏は自身の経験から語っています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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