サム・アルトマンCEOの退任を主導したOpenAIの元主任サイエンティストのイルヤ・サツキヴァーは2017年からアルトマン氏に不信感を抱いていたことが明らかに
テスラやSpaceX、X(旧Twitter)などを保有するイーロン・マスク氏は2024年2月に、チャットAI「ChatGPT」などを開発するOpenAIに対し「OpenAIは世界最大のテクノロジー企業であるMicrosoftの事実上のクローズドソースな子会社に変わってしまった」と主張し訴訟を起こしています。裁判ではマスク氏とOpenAIのサム・アルトマンCEO、元OpenAIの主任サイエンティストであるイルヤ・サツキヴァー氏らとのメールでのやり取りが公開されています。
gov.uscourts.cand.433688.32.0_1.pdf
(PDFファイル)https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.cand.433688/gov.uscourts.cand.433688.32.0_1.pdf
New OpenAI emails reveal a long history of mistrust
https://www.transformernews.ai/p/openai-emails-altman-trust
Internal emails: Elon Musk wanted to keep OpenAI from becoming 'Microsoft's marketing bitch' – GeekWire
https://www.geekwire.com/2024/internal-emails-elon-musk-wanted-to-keep-openai-from-becoming-microsofts-marketing-bitch/
OpenAI Email Archives (from Musk v. Altman) — LessWrong
https://www.lesswrong.com/posts/5jjk4CDnj9tA7ugxr/openai-email-archives-from-musk-v-altman
マスク氏は現地時間2024年2月29日に、サンフランシスコの高等裁判所でOpenAIを提訴しています。訴状の中でマスク氏は、当初OpenAIはオープンソースでAGI(汎用人工知能)を開発する非営利組織として創設されたものの、Microsoftの事実上のクローズドソースな子会社に変容したことを批判しています。また、OpenAIの大規模言語モデル「GPT-4」について「オープンソースのソフトウェアではなく、主にMicrosoftの専有的な商業的利益に貢献するためのクローズドソースのソフトウェアに成り下がっています」と指摘し、アルトマン氏らが財務上の利益のためにOpenAIやその資産を利用すること、あるいはMicrosoftやその他の団体の利益のためにOpenAIを利用することを禁止する命令を出すよう求めました。
イーロン・マスクがChatGPTの開発元OpenAIを訴える、「Microsoftの事実上の子会社」と主張 - GIGAZINE
2024年11月にマスク氏は、裁判所に対して訴状の修正版を提出。その中には2015年からのアルトマン氏らとの電子メールでのやり取りが含まれていました。
公開されたメールの中でマスク氏は、2016年にOpenAIはMicrosoftとのパートナーシップについて会合を実施した際に、「Microsoftから提案された条件には吐き気を覚えました。Microsoftの事実上の子会社と思われないようにするには、せめて5000万ドル(約77億円)以上の金額を支払うべきです」と批判しています。
また、2017年にはサツキヴァー氏とOpenAIの共同創設者であるグレッグ・ブロックマン氏がアルトマン氏に対し「アルトマン氏の判断を信頼できない」「あなたの真の目的はAGIの開発ですか?AGIの開発はあなたの政治的目標とどのように結び付いていますか?」と指摘しています。当時のOpenAIは誰が代表として運営を担うか、非営利団体から営利団体への転換を行うかで議論が行われていました。なお、マスク氏は非営利団体としてのOpenAIを望んでいた一方、アルトマン氏は営利団体への転換の意向を示していました。
さらに、マスク氏に対してもサツキヴァー氏らは「あなたは最終的なAGIをコントロールしたくないと述べていますが、私たちは、OpenAIがAGIの開発に向けて進歩する中で、あなたが会社の絶対的な支配権を維持することを危惧しています」と批判しました。
このメールを受けてマスク氏は「もうたくさんです。独立して別の事業を始めるか、非営利団体としてOpenAIを続けるかのどちらかを選択してください。あなた方がOpenAIにとどまることを固く約束できるまで、私はOpenAIに資金を提供するつもりはありません。議論はここまでです」と返信しています。
このメールが公開されたマスク氏の反応が以下。
— Elon Musk (@elonmusk) November 15, 2024
その後、マスク氏と親しい関係にあったシヴォン・ジリス氏が「イルヤ氏とブロックマン氏は『OpenAIの非営利構造を継続したい』と伝えており、アルトマン氏は彼らとの話し合いの末、考え直すために10日間休職することを決定しました。OpenAIから離れることで、彼らがどれほど信頼できるのか、彼らとどれだけ共に働きたいかを実感できるでしょう」とマスク氏に伝えています。
サツキヴァー氏はその後、アルトマン氏との対立の結果、2023年11月にアルトマン氏の退任および退社を主導したことが報じられています。
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