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攻撃ヘリコプターは死んだのか?


2024年2月に、「ロシア軍は開戦前に就役していた戦車の台数に相当する3000両の戦車を損失した」と報じられるなど、ウクライナ侵攻ではロシア軍の戦車被害が注目されることがよくありますが、実は攻撃ヘリコプターも相当数が撃墜されているといわれています。一部で強まっている「攻撃ヘリコプターは死んだ説」について、航空機関連のニュースを扱うブログのHush-Kitが検証しました。

Is the attack helicopter dead? | Hush-Kit
https://hushkit.net/2024/10/07/is-the-attack-helicopter-dead/

◆攻撃ヘリコプターが直面している問題
Hush-Kitによると、ロシアの攻撃ヘリコプターは制空権、つまり味方の航空戦力が優勢な状態が確保されていないウクライナ領内の広い範囲で活動しており、高性能な携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)を装備した歩兵が散在しているという問題にも直面しているとのこと。

ヘリコプターがこうした脅威を事前に察知することは困難であり、また遮へい物のない地形が広がっていることもあって、攻撃ヘリコプターが戦場を往来する際のリスクが大幅に高まっています。


加えて、ヘリコプターの防御および対抗装備が明らかに非効率的なことが、事態に拍車をかけているとHush-Kitは指摘しています。

その一方で、ウクライナ侵攻では双方が武装ドローンを使って兵士を対象とした対人作戦を展開しており、これによってMANPADSが活用される機会が減少したり、歩兵のリスクが増大したりしているのも事実です。


◆攻撃ヘリコプターをとりまく現状と今後の展開
ウクライナでは、攻撃ヘリコプターはよく装甲部隊、つまり戦車を含む戦闘車両を中心とした部隊への攻撃のために運用されているとのこと。

侵攻の初期段階では、ウクライナの北隣に位置するベラルーシからウクライナの首都・キーウに向かって南下するロシア軍の攻撃に装甲部隊が投入されましたが、補給部隊とともに運河化(canalize)、つまり特定の経路に誘導されたことで地雷と大砲による大きな損害を受けました。

その後、ロシアの装甲部隊は主にウクライナの南部と東部からの攻撃を続けていますが、双方ともに効果的な対空ミサイルシステムを保有しているため、どちらも完全な制空権を確保しきれていません。

まず、ロシア側はロシア領内から行われる中~長距離でのスタンドオフ兵器、つまり巡航ミサイルや弾道ミサイルなどを用いた攻撃を行っており、これに対抗する余地はほとんどないと考えられるとのこと。ミサイル防衛システムにより被害を軽減できる可能性はありますが、「戦術的というより戦略的なものとなった紛争の終結を早めることはないでしょう」とHush-Kitは述べています。

他方、ウクライナ側には西側諸国の地対空ミサイルシステムが相当数提供されているほか、装甲部隊に対する作戦には高機動ロケット砲システム(HIMARS)陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)などの精密兵器が用いられています。ただし、このようなシステムには弾薬が必要なため、運用の継続にはEUやNATO諸国からの支援が不可欠となっており、例えば2024年11月のアメリカ大統領選挙でウクライナへの支援に消極的なドナルド・トランプ氏の再選が決まるなどのリスクがあります。


また、武装ドローンは対人作戦だけでなく装甲車両への攻撃にも使われており、両軍ともに大きな成功を収めています。その一方で、ウクライナのヘリコプターによるロシアの装甲車両への攻撃、あるいはロシアのヘリコプターによるウクライナないし西側諸国の装甲車両への攻撃が行われたことを示す写真などはあまり出回っていないとのこと。

つまり、ウクライナでは両軍ともに制空権が取れていないため、攻撃ヘリコプターは対空攻撃を受けやすい状態にあり、かつ主な攻撃目標である戦車などへの攻撃でもドローンに地位を奪われつつあると指摘されています。

◆将来的なヘリコプターの活路
今回の侵攻で、ロシアは強力な兵器を持つ敵を相手に地形的な遮へいが十分でない状態でリスクの高い作戦を実施しており、これがヘリコプターの損失を広げていると考えられるとのこと。

Hush-Kitは、こうした状況下で攻撃ヘリコプターが装甲部隊への攻撃を成功させるには、「制空権を確保しつつ、MANPADSなどの防空システムを装備した抵抗勢力が占領する地域の上空で作戦を行わないこと」としています。

これは攻撃側の視点であるため、逆に言えば「防御側は自国の領土上空で運用される攻撃ヘリコプターを配備することが依然として効果的である可能性が示唆されています」とHush-Kitは指摘しました。


また、今後は大型のヘリコプターで長距離ドローンシステムを運用したり、複数の中型ヘリコプターで攻撃および偵察用ドローンを展開したりと、ヘリコプターはドローンの母艦としての役割を担う方向にシフトする可能性もあるとのこと。こうした構想は、計画が放棄された将来型攻撃偵察機(FARA)や、2030年の運用開始が予定されている将来型長距離強襲機(FLRAA)として、アメリカの軍事プログラムの中で言及されています。

ほかにも、無人機を制御するネットワーク機能を持つヘリコプターのLeonardo AW249など、遠隔操縦機(RPV)との連携を意識した新型機の登場も、注目に値するとのことです。

◆暫定的な結論
こうした点から、Hush-Kitは「注意深く運用する限り、有利な地形で活動する既存の攻撃ヘリコプターは依然として有効です。特に『ネットワーク対応戦争』の拡充は長距離、できれば非直接照準(non-line-of-sight)の目標に対処する能力とともに、今後不可欠になってくると思われます」と結論づけました。

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in 乗り物, Posted by log1l_ks

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