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作品の本質を掘り起こすための4つのポイント


物語やノンフィクションを執筆する際には、面白い設定やストーリーを思いついて記述することだけではなく、その作品の面白さをよく理解して読者にプレゼンする意識も重要です。自分の作品の主題に着目し、作品の本質を掘り起こす方法について、作家で出版社の上級編集者も務めるステファニー・ダンカン・スミス氏が解説しています。

Stephanie Duncan Smith on Excavating Your Work’s Aboutness ‹ Literary Hub
https://lithub.com/stephanie-duncan-smith-on-excavating-your-works-aboutness/


スミス氏はキャリアの中で、メディアに商品を売り込む広報担当者、逆に売り込みを審査する雑誌編集者、作家と本のコンセプトを練る編集者を経験し、いずれの場合でも「真の狙い」をうまく機能させる方法を常に探ってきたそうです。とりわけ作家に対する編集者としては、「あなたが(作品の中で)すべき最も大胆な発言は何ですか?」という質問を投げかけて、表面に現れていない真の作品の魅力を引き出すことを好んでいたとのこと。

しかし、スミス氏は自身が作家として本を執筆しようと思ったとき、構想の中にある真の狙いを掘り出す作業の実践が難しいことに、改めて気づいたと語っています。というのも、作品の真の狙いとは作家自身も忘れていたり隠していたりすることがありますが、作品のアイデアのきっかけや源流になったもののはずなため、作家が確実に理解しているものです。しかし、執筆している際には「知っていることを書くのは茶番で、未知のことについて書くほうがはるかに面白い」という感覚があるため、ただ作品に込めた真の狙いを意識し続けることが重要ではない可能性にスミス氏は気づきました。

そこで、「作品の本質とは、出発点ではなく、熱心な発見のプロセスを通じてのみ到達される発見であるべきです」とスミス氏は述べました。そのうえで、自分の作品から本質を改めて見出だすためのガイドラインを4つのポイントに分けて解説しています。


◆1:明確なことよりも、疑問から創作を始める
1960年代から2000年ごろまで活躍した作家・エッセイストのジョーン・ディディオン氏は「私は自分が何を考えているのかを知るためにだけ書きます」という言葉を残しています。スミス氏も「知っていることを書くのは茶番」と述べたように、何らかの確信をもとに書いた文章は、退屈な読み物になりがちだとスミス氏は指摘。スミス氏によると、読者として私たちが最も共感するのは、単調で自明な報告ではなく、「作家の発見のプロセスに同行し、作家が境界を越える瞬間を体験するために招待されたとき」であるそうです。

具体的には、「この作品のここはどうなっているのか?」「この世界における○○はどのような扱いを受けるか?」など、疑問から書き始めた場合、書いていくうちに自分でも驚きの発見をすることができます。そして、その驚きは読者にも伝わります。そのため、執筆に行き詰ったときは好奇心に任せて、何が出てくるかわからない方向に掘り進めることが重要です。スミス氏は「結局のところ、発見のプロセスとそれに対する驚きを示すこと以上に、最終的な作品を活気づけるものはありません」と語っています。

◆2:行き詰まったらアナログに頼り、アイデアを空間的に方向付ける
アイデアメモの作成からプロット制作、実際の執筆まで、PCやスマートフォンなどを使用して書く人は多いはず。それでも、行き詰ったときは資料を印刷したり、原稿を印刷して気になるところをマークしたり、手書きで執筆してみたりと、アナログなプロセスを試してみるといいとのこと。スミス氏によると、執筆夢中になっていると脳の働きが偏っていきますが、アナログに手を動かすことで、右脳と左脳の両方が完全に働き、思考のつながりが生まれてくるという研究があるそうです。

また、ホワイトボードにアイデアマップを書き留めたり、付箋にテーマを書いてペタペタ貼りながら入れ替えたりする作業は、デジタル上の箇条書きでは見られなかった新しい組み合わせの発見につながることもあります。そのほか、ブラジル生まれの詩人であるアナンダ・リマ氏は自分の作品が不十分だったり不出来だったりしないか不安になってしまうとき、原稿の1ページを半分に折り、一部を切り抜いたり貼り付けたりして「ペーパークラフト」することをオススメしています。リマ氏によると、クラフト作業には集中力が必要で常に抱えていた不安を一時的にでも消し去ってくれたり、自分の作品が愛をこめて作った形のあるものだと再認識できたりする効果があるとのこと。

自分の作品に不安を感じたときの打開策は「ペーパークラフト」であるというアドバイス - GIGAZINE


◆3:作品の主題とその説明的要素を区別する作業を行う
とある明確なテーマについて執筆する場合でも、必ずしもそのテーマについて細かく説明する必要があるわけではありません。スミス氏は著書「Even After Everything」の中で自身が妊娠、流産、そして新しく親になった経験を書いていますが、それぞれは例として取り上げたのみで、作品のテーマは「愛に伴うリスク」となっています。スミス氏は作品のテーマを「個別性のプリズム」と表現しており、プリズムから光が外に漏れ出るように、直接語らずとも物語や論理の展開から読者に伝わっていくものだとしています。作品のテーマと、テーマを伝えるための要素を区別して語ることで、読者が重要な要素に手を伸ばす作業を手助けするように語り掛けることが重要です。

◆4:「それ」や「これ」などの指示語には適切な名前を付ける
スミス氏は編集者としての経験から、作家が「It(それ)」「This(これ)」で始まる主語を抽象化した文章を書くことが多いと指摘。疑問から創作を始めて探索していく方が読者の共感を生みやすいとスミス氏が考えていたように、執筆のプロセスでは探索しながら書くこともあるため、主語となる名詞を抽象化したまま進めることがあります。しかし、読者の共感を呼ぶ文章は、「読者が感じたことはあっても、言語で特定したことのない真実、経験、現実」が明文化されたときに生まれます。主題名詞に正確さを持たせることで、文章レベルでは文章のボリュームが増し、記憶に残り、引用されるようになります。構造レベルでは、作品の主題を表現できるようになります。そのためには、執筆時には抽象化していた主語を、改訂のプロセスで具体化していく必要があります。

スミス氏は4つのポイントを総合して、「自分の本の内容を決めるのに苦労しているなら、緊張に耳を傾けてください。そうすれば、緊張が教えてくれます。目指すべき中心があることを信じて、無知の迷路を歩いていけば、それまでの道のりはあなたをそこに導いてくれるのです」と語りました。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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