レバノンが飛行機内へのポケベル&トランシーバーの持ち込みを禁止、ヒズボラ構成員を狙った爆発事件が原因か
レバノンの民間航空総局が、ベイルートにあるラフィク・ハリリ国際空港を出発する航空機において、「預け荷物」と「機内持ち込みの手荷物」の両方でポケベルおよびトランシーバーを禁止すると通知しました。該当する端末は空港での荷物検査時に没収されることとなります。
Lebanon bans pagers and walkie-talkies on flights
https://www.ynetnews.com/article/h1qaq00kp0
レバノンでは現地時間の2024年9月18日15時30分頃、ポケベルが爆発して少なくとも8人が死亡、2700人以上が負傷しました。負傷者の多くはレバノンのシーア派イスラム主義の武装組織であるヒズボラの構成員であるとみられています。
ポケベルの同時爆発で8人が死亡し2700人以上が負傷する事件が発生 - GIGAZINE
by Hades2k
レバノンで爆発したポケベルの写真はSNS上でも広く拡散されており、爆発した破片に含まれている文字から、これは台湾のゴールド・アポロ製のポケベルであることが特定されていました。報道によると、レバノンでは少なくとも3000個ものポケベルが爆発したと推計されています。
The world has suddenly become a dangerous place. After attacks using #pagers, now you can be targeted through your mobile phone as well. Heads of state around the world have suddenly become vulnerable. Following the recent pager attacks in #Lebanon, global intelligence agencies… pic.twitter.com/V7Vzc7F2B9
— Ghulam Abbas Shah (@ghulamabbasshah) September 17, 2024
ゴールド・アポロの創業者である徐清光氏は、ロイターのインタビューに対し爆発攻撃とは無関係であると回答しました。徐氏は、爆発したポケベルがハンガリーのBACコンサルティングという企業に供与したライセンスで製造されたものであると語っており、ゴールド・アポロは約3年前からBACコンサルティングと取引していたことも明かしています。ただ、BACコンサルティングはハンガリーの企業であるにも関わらず、中東経由で送金されていたという奇妙な取引だったと徐氏は述べています。
CEO of Gold Apollo, Hsu Ching-Kuang denied manufacturing the explosive pager. When asked abt AR-924, he said “it is produced & sold by BAC…we only provide brand trademark authorisation & have no involvement in design or manufacturing of this product.” See my exchange w him. pic.twitter.com/eb6k65oyKl
— Tingting Liu 劉亭廷 (@tingtingliuTVBS) September 18, 2024
ロイターはBACコンサルティングの本拠地を調査していますが、建物内にいた人物は同社について「この住所に登録されているものの、ここには存在しない」と回答したそうです。BACコンサルティングのウェブサイトも9月18日時点でつながらなくなっています。
なお、ハンガリー政府の報道官であるZoltan Kovacs氏は、X(旧Twitter)で「当局は問題の会社(BACコンサルティング)は貿易仲介業者であり、ハンガリー国内に製造拠点や運営拠点を持っていないことを確認しています。申告された住所に登録された管理者は1名のみで、問題のデバイスがハンガリーに存在したことはありません」と語りました。
‼️ 🇭🇺 The Hungarian government’s position on the "pager issue": authorities have confirmed that the company in question is a trading intermediary, with no manufacturing or operational site in Hungary. It has one manager registered at its declared address, and the referenced…
— Zoltan Kovacs (@zoltanspox) September 18, 2024
BACコンサルティングのCEOであるクリスティアナ・バルソニー・アルシディアコノ氏はSky Newsに対して「我々はポケベルを作っていません。我々はあくまで仲介業者であり、あなた方の認識は間違っていると思います」と回答しています。
The New York TimesはこのBACコンサルティングを「イスラエルがハンガリーに設立したダミー会社」であると報じています。報道によると、BACコンサルティングは当初からヒズボラを標的としており、2022年夏頃からレバノンに製品の輸出を始めており、2024年2月にヒズボラの指導者であるナスララ師がイスラエルによるサイバー攻撃に備えて携帯電話の使用を控えるように決めてから、輸出量を増やしていたそうです。
ポケベルが爆発した翌日にはトランシーバーの爆発も発生し、14人以上が死亡、450人以上が負傷する事態となりました。爆発したトランシーバーには、日本の無線機メーカーであるICOM製のIC-V82無線機も含まれていると報じられています。
ヒズボラ構成員を狙ったとみられるトランシーバーの爆発で14人が死亡、イスラエルによる攻撃か - GIGAZINE
この報道に対して、ICOMは「IC-V82は、当社が2004年から2014年10月にかけて中東を含む海外向けに生産・出荷していたハンディ型無線機です。約10年前に終売しており、それ以降本社からの出荷は行なっておりません。すでに本体を動作させるためのバッテリーの生産も終売しているほか、偽造品防止のためのホログラムシールが貼付されておらず、当社から出荷した製品かどうかは確認できません」という声明を出しています。
一部報道について(第二報) | ニュースリリース | アイコム
https://www.icom.co.jp/news/8108/
なお、イランの政治学者であるセイエド・モハンマド・マランディー氏が「サプライチェーンで供給される西側諸国、台湾、韓国、日本製のバッテリー内蔵製品は信頼してはいけない。あなた方やその家族、周囲の人に武器となる可能性がある。これらの国の製品を買ってはいけない」と語ったという情報もあります。
🇮🇷#イラン の政治学者であるセイエド・モハンマド・マランディー氏「サプライチェーンで供給される西側諸国、台湾、韓国、日本製のバッテリー内蔵製品は信頼してはいけない。あなた方やその家族、周囲の人に武器となる可能性がある。これらの国の製品を買ってはいけない」#LebanonExplosion pic.twitter.com/AHyfvoJQmQ
— ParsToday Japanese (@ParstodayJ) September 18, 2024
なお、現地でも爆発したデバイスの調査が行われていますが、ほとんどが爆発で破壊されているため調査は難航しているそうです。
こういった動きを受け、レバノンの民間航空総局は爆発する可能性があるポケベルやトランシーバーの機内への持ち込みを禁止としたわけです。
なお、レバノンのフィラス・アル・アビアド保健相は現地時間の2024年9月19日(木)に爆発による死者の数が32人に達したと報告しています。
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