乗り物

ガソリン車を激安でEVに変身させる「コンバージョンEV」が勢いを伸ばしている

by Andrés BO for Rest of World

「EVに関心があるけどテスラの新車のような高級車には手が出ない」という人は多いはず。そんな需要に応えるソリューションとして、ガソリン車を改造してEVに転換するサービスがラテンアメリカで人気を集めていると、海外メディアのRest of Worldが報じています。

How to turn gas cars into electric vehicles in Latin America - Rest of World
https://restofworld.org/2024/electric-vehicle-conversions-uruguay/

2010年にウルグアイの第40代大統領に就任したホセ・ムヒカ氏は、ウルグアイを環境に優しい国にするという理念をアピールするため、地元の改造会社であるオートリブレ・オーガニゼーション(Organización Autolibre)によってガソリン車からEVに改造された小型トラックで就任式に登場しました。

ムヒカ氏が乗った鮮やかな青色の車がメディアに大きく取り上げられると、経済的にEVを手に入れたいと願っていたウルグアイ国内外のEV愛好家が、この技術に関心を寄せるようになりました。

by Palácio do Planalto

それ以来、オートリブレ・オーガニゼーションはラテンアメリカ諸国14カ国を飛び回ったり、オンライン講座を開いたりして、現地の技術者にコンバージョンEVのノウハウを提供し、これまでに何千台もの従来型自動車をEVにするのを支援してきたとのこと。

オートリブレ・オーガニゼーションの創設者兼CEOであるガブリエル・ゴンザレス・バリオス氏は「オートリブレシステムの販売業者たちは、この産業を現地で発展させるのに必要なエコシステムを生み出す技術者のトレーニングを、私たちに依頼し続けてくれます」と話しました。


ゴンザレス・バリオス氏が改造会社を興すきっかけとなったのは、2006年にアル・ゴア氏が制作した気候変動ドキュメンタリー「不都合な真実」です。

当時、ガソリン車専用製品の販売業者だったゴンザレス・バリオス氏は、まず社用車をガソリン車からゼロエミッションのEVに改造しました。この改造が成功し、費用も安く抑えられたことに手応えを感じたゴンザレス・バリオス氏は、本格的にコンバージョンEVの事業に乗り出しました。

当初、アメリカ製のEVキットを使っていたゴンザレス・バリオス氏ですが、コストがかさむため記事作成時点では中国の電力システム企業であるシュカイ・エンパワー・エレクトリックと提携しているとのこと。


ラテンアメリカ持続可能モビリティ協会は2020年に、少なくとも145台の改造車両が正式に登録されていると報告しました。また、ゴンザレス・バリオス氏が共同設立したラテンアメリカ改造協会には、EV改造キットの販売業者や改造を専門とするワークショップなど30を超える事業者が加盟しています。

コンバージョンEVは決して目新しい技術ではなく、日本オーストラリアなどの国では改造に関するガイドラインも制定されています。

ゴンザレス・バリオス氏は、改造の最大の利点は価格の安さだと話しました。ラテンアメリカで売られている新車のEVの大半は、一般人には手の届かない価格で、例えば人気車種のひとつであるルノー・クウィッドのEVモデルは約1万8100ドル(約260万円)します。これに対し、オートリブレシステムで既存のガソリン車やディーゼル車をEVに改造するには、6000ドル(約85万円)とおよそ3分の1のコストしかかかりません。


しかし、改造にはリスクも伴います。ペルー電気自動車推進企業家協会のアドルフォ・ロハス会長は、「中国のオンラインマーケットプレイスのAlibabaやペルーのMercadoLibreで入手できる改造キットの多くは最低限の安全性と品質さえ保証されていません」と話しました。

南米諸国における改造車の法的な扱いはまちまちで、チリでは2021年に中古乗用車の改造を全面的に禁止する法案が可決されました。チリ電気自動車協会のロドリゴ・サルセド会長はRest of Worldに「改造は以前から行われていましたが、車の安全レベルの維持は無視されていました」と述べています。

また、改造車に法的な規制がないコロンビアでも、厳格な規制を求める声が上がっているとのこと。コロンビアの首都・ボゴタの自動車販売店に勤めるアンドレス・ガルシア氏の会社は、認定技術者にしか改造キットを販売しないことにしているほか、当局や専門機関と会合を重ねて規制法の制定を求めるロビー活動を行っています。


ガルシア氏の会社で1981年式のBMWをEVに改造したジャイロ・ノボア氏は、同氏の愛車のような古い車は部品が高価で入手しにくいため、コンバージョンEVは合理的な選択肢だと指摘します。

ノボア氏はRest of Worldに「コロンビアを走る1万台以上のEVの大半は新車ですが、コンバージョンEVのオーナーはそんな車をうらやましがったりはしません。テスラのような高級車は別ですが」と話しました。

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in 乗り物, Posted by log1l_ks

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