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NASAのエウロパ探査機が最終テストを突破、2024年10月10日に打ち上げへ


木星の衛星「エウロパ」は氷の下に液体の海が広がっていることが確実視されており、地球外生命の存在が最も期待されている天体のひとつです。そんなエウロパの探査機であるエウロパ・クリッパーが、2024年10月10日の打ち上げに向けたテストの最終段階をクリアしたことが発表されました。

NASA’s Europa Clipper Continues Path to Launch – NASA's Europa Clipper Mission
https://blogs.nasa.gov/europaclipper/2024/09/09/nasas-europa-clipper-continues-path-to-launch/

NASA's Europa Clipper probe to icy Jupiter moon takes big step toward its Oct. 10 launch | Space
https://www.space.com/nasa-europa-clipper-jupiter-probe-closer-to-october-2024-launch

NASAのエウロパ・クリッパー計画の公式X(旧Twitter)アカウントは2024年9月10日に、「本日、我々のミッションは『重要決定点E(Key Decision Point E:KDP-E)』として知られる、NASAの標準的な計画の節目を迎えました。これにより、10月10日(木)に開始される打ち上げ期間に向けて前進することが承認されました」と発表しました。


KDP-Eとは、コンセプトの策定と技術開発を行う「フェーズA」からミッションを完了する「フェーズF」まであるNASAのプロジェクトライフサイクルのうち、実際にプロジェクトのオペレーションを行う「フェーズE」を始動させる決定点のことです。

このKDP-Eのクリアにより、2015年に計画が本格的に開始し、2022年6月に探査機本体が完成していたエウロパ・クリッパーのミッションが打ち上げに向けた最終準備に進むことになります。

伝えられるところによると、エウロパ・クリッパーの電気の流れを制御するトランジスタが従来の想定よりも低い放射線量で故障することが2024年5月に判明していたとのこと。木星の磁場の影響により、エウロパは太陽が届かない暗闇の中でも光って見えるほど強い放射線を受けているため、これは重要な問題です。

しかし、その後約4カ月にわたって休みなくテストと分析を行った結果、チームは探査機のトランジスタには4年間のミッションを遂行するだけの耐久性があると判断しました。

ミッションの計画では、エウロパ・クリッパーは木星の周回軌道に乗らず、重力を利用したフライバイを約50回行ってエウロパへの接近と離脱を繰り返しながら観測を行います。これにより、探査機が放射線のホットスポットにいる時間が短期間に抑えられるため、危険地帯を離れている間にトランジスタが回復するのに十分な時間が稼げる見通しです。

by NASA/JPL-Caltech

エウロパ・クリッパーのプロジェクト・マネージャーであるジョーダン・エバンス氏は、9月10日の会見で「我々は、エウロパ・クリッパーは木星を周回する際に放射線環境にさらされるものの、フライバイに入るとトランジスタが修復され、部分的に回復するのに十分な時間、放射線環境から抜け出すことになるとの結論に至りました」と話しました。

2024年10月10日にSpaceXの大型ロケット「Falcon Heavy」で打ち上げられるエウロパ・クリッパーは、2030年に木星系に到着し、氷の表面やその下の海の調査をする予定です。その主な目的は、エウロパに生命が息づいているかを確かめることにあります。

エウロパ・クリッパー計画の科学者であるカート・ニーバー氏は、「これは壮大なミッションです。数十億年前に生命がいたかもしれない世界ではなく、今まさに生命がいるかもしれない世界を探索するチャンスなのです」と語りました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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