サイエンス

木星の衛星エウロパの表面は太陽光が届かない暗闇で光っている可能性があるとNASAが報告

by NASA's Marshall Space Flight Center

木星の衛星であるエウロパは氷からなる地殻の内部に水の海が存在すると考えられており、地球外生命が存在する可能性も指摘されています。そんなエウロパの表面が、「暗闇の中で光っている」可能性があるとの研究結果を、アメリカ航空宇宙局(NASA)が発表しました。

Laboratory predictions for the night-side surface ice glow of Europa | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-020-01248-1

Europa Glows: Radiation Does a Bright Number on Jupiter's Moon | NASA
https://www.nasa.gov/feature/jpl/europa-glows-radiation-does-a-bright-number-on-jupiters-moon


Jupiter's moon Europa may glow in the dark - CNN
https://edition.cnn.com/2020/11/09/world/jupiter-moon-europa-glow-in-the-dark-scn/index.html

NASAは生命の存在が期待されるエウロパの詳細な探査を計画しており、2023年~2025年ごろにはエウロパ・クリッパーという探査機を打ち上げる予定です。そこで、無人探査機などを開発・運用するジェット推進研究所の研究チームは、エウロパ表面が放射線を浴びた際の影響について研究したとのこと。

木星は大量の放射線を出していることが知られており、衛星のエウロパにも大量の放射線が降り注いでいます。研究チームは「氷の下にある有機物が放射線の照射に対し、どのように反応するのか」を調べるため、エウロパ表面の氷の組成を再現し、実際に放射線を照射する実験を行いました。


過去の観察結果から、エウロパ表面の氷は水や硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムなど、地球上でも一般的に見られる塩化物で構成されているとみられています。研究チームが独自の機器を使い、エウロパの表面を再現した氷に放射線を照射したところ、有機物以前に氷そのものが放射線の照射によって光る様子が確認されたそうです。

放射線が氷に照射されることで発光したのは、準安定状態にある電子が放射線の照射により光エネルギーを吸収し、基底状態に戻る際に発光する光刺激ルミネセンスと呼ばれる現象が原因です。この現象自体は以前から知られており、放射線量を計測する線量計にも同様の仕組みが用いられているとのこと。

月が暗い夜空で輝くのは太陽の光を反射しているからですが、エウロパの発光メカニズムは月と全く違うため、太陽光が届かない側で光っていると研究チームは指摘。論文の筆頭著者であるMurthy Gudipati氏は、「もしエウロパが放射線にさらされていなかったら、私たちの月のように太陽の陰になる部分は暗かったでしょう。しかし木星からの放射能を受けているため、エウロパは太陽の光が届かない暗闇の中でも光ります」と述べました。

by Kevin Gill

今回の結果は研究チームにとって予想外だったそうで、論文の共著者であるFred Bateman氏は、「塩化ナトリウム食塩水が非常に弱く光っているのを見た時、私たちは研究の方向を変えました」とコメントしています。

エウロパの氷が発する光は肉眼だと緑がかって見えるそうですが、氷に含まれる塩化物の組成が変化すると光の色も変わるため、場合によっては青色や白色にも見えるとのこと。研究チームのBryana Henderson氏は、「私たちがこのようなものを見ることになるとは、想像もしていませんでした。新しい氷の組成を試した時、輝きは異なって見えました。私たちはしばらくそれを見つめて、『これは新しいですよね?これは間違いなく違う光ですよね?』と言いました。そこで分光計を向けてみたところ、それぞれの氷で光のスペクトルが違いました」と述べています。

研究チームはこの結果から、アウロパ・クリッパーなどによるエウロパの探査で分光計を用いることにより、光のスペクトルから氷の組成を明らかにできる可能性があると主張。Gudipati氏は、「エウロパの夜側における輝きが、エウロパの表面組成に関する追加の情報を提供すると予測できます。この組成の変化により、エウロパが生命に適した条件を備えているかどうかの手がかりが得られます」とコメントしました。

by Kevin Gill

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
木星の衛星エウロパで高さ約200kmの「水」の噴出を再び観測したとNASAが発表 - GIGAZINE

地球外生命存在の可能性調査に向けてNASAの「エウロパ探査計画」にゴーサイン - GIGAZINE

地球外生命体の存在が期待できる太陽系内の天体4選 - GIGAZINE

放射線治療中の患者は目からビームが出ている - GIGAZINE

「宇宙太陽光発電」や放射線の種子への影響調査などの任務を受けて軌道試験機X-37B打ち上げ - GIGAZINE

宇宙最大の爆発現象「ガンマ線バースト」が何なのかをムービーで解説 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.