サイエンス

冷えてくると体の節々が痛くなるのは「気のせい」との研究結果、ではなぜそのように感じられるのか?


雨の日や気温がいつもより下がった日に、家族や身の回りのお年寄りが「ひざが痛む」と口にしたのを聞いたことがある人は少なくないはず。しかし、研究者が実際に天候と腰痛や膝痛の関係を調べたところ、実はほとんど無関係だったということが報告されました。

Come rain or shine: Is weather a risk factor for musculoskeletal pain? A systematic review with meta-analysis of case-crossover studies - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0049017224000337

No, your aches and pains don’t get worse in the cold. So why do we think they do?
https://theconversation.com/no-your-aches-and-pains-dont-get-worse-in-the-cold-so-why-do-we-think-they-do-235117


◆天気と痛みは無関係
オーストラリアのシドニー大学で筋骨格の健康について研究しているマヌエラ・L・フェレイラ氏らは今回の研究で、腰痛、関節リウマチ、痛風、変形性関節症(OA)などの筋骨格系疾患の症状と、気温、降水量、気圧、相対湿度などの気象条件について調べた論文を精査するメタアナリシスを実施しました。

分析に用いられた11本の論文には、合計1万5315人の患者から収集された2万8010件のデータが含まれていたとのこと。


これらのデータから、関節や筋肉の痛みと気象条件の関係を調べたところ、気温、湿度、気圧、降雨量の変化が膝や股関節、腰の痛みといった症状のリスクを高めることはなく、新しく関節炎の治療を求める人の数も増やさないことがわかりました。

つまり、天候と関節や筋肉の痛みとの間に直接的な関係はなく、天候が関節炎を引き起こすこともなかったことになります。


なお、分析されたデータには10度を下回る低温の記録がほとんど含まれていないため、極端な気温との関係は明らかになっていない点には注意が必要です。

唯一の例外は痛風でしたが、寒い日ではなくむしろ暑くて乾燥した日に痛風の症状が悪化する傾向があることがわかりました。

痛風が痛みを引き起こすのは、血液中の尿酸の濃度が上昇して関節内で結晶化するのが原因で、腰痛や関節炎とはメカニズムが異なります。

このため、暑さや乾燥によって脱水症状が引き起こされることで、血中の尿酸濃度が上昇し、これが痛風の悪化を招くのではないかとフェレイラ氏らの研究チームは指摘しています。


◆なぜ冷えると関節が痛くなるといわれるのか?
天候と関節痛が無関係だとの研究結果が出ましたが、多くの人が天気と痛みの間に関係があると確信しているのは事実で、調査によると膝や股関節、手のOA患者の3人に2人は、寒さが症状の引き金になると訴えているとのこと。

これについてフェレイラ氏は、天気が人の生活に関する他の要因に影響与えることで、個人が抱える痛みの認識や行動が間接的に変わっているのではないかと推測しています。

例えば、冬場は運動を控えて家にこもりがちになることがよくありますが、長時間座っていると腰痛が悪化することが研究で判明しています。また、気温の変化で睡眠の質が落ちて、これが腰痛や膝痛の引き金になるケースや、寒い天候による気分の変化が体の痛みとなって表れるケースも考えられるとのことです。

フェレイラ氏は「要するに、天候自体ではなく、冬季の行動の変化が痛みの増加を引き起こしているのです」と結論づけました。

さらに、「冬になると体が痛くなる」と信じることで、実際に痛みがひどくなるように感じられることもあります。思い込みで症状が改善する「プラセボ効果」とは逆に、悪い作用があると信じることで実際に症状が悪化するような現象は「ノセボ効果」と呼ばれています。


◆痛みへの対象法
フェレイラ氏は「もし、冷え込んで来たときに痛みが悪化するように感じた場合は、天候など自分の力ではどうしようもないリスク要因ではなく、自分でコントロールできる要因の改善に集中するのがベストです」とアドバイスしています。

具体的な例は以下の通りです。
・散歩やウォーキングなどでもっと体を動かす。もしくは理学療法士やトレーナーと一緒に、もしくは自宅などで安全かつ気軽にできる運動について医師に相談する。
・太り気味で関節に負担がかかっている場合は減量する。
・寒さで筋肉がこわばっているように感じる場合は体を温める。寝室が寒い場合は温かくして睡眠の質を上げる。
・健康的な食生活を維持して過度の喫煙や飲酒は控える。

こうした生活習慣の改善を行うことで、関節や筋骨格の症状をより適切に管理できることが、さまざまな研究で確かめられています。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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