サイエンス

腰痛を改善するたったひとつの簡単な運動は「散歩」、ウォーキングで腰痛再発リスクは半分に


腰痛対策のために、人間工学に基づいて設計された高価なオフィスチェアを買ったり、足しげく整形外科に通ったりしている人は少なくないはず。一度発症するとしつこく再発する腰痛の改善には、「ウォーキング」が適していることが新しい研究で判明しました。

Effectiveness and cost-effectiveness of an individualised, progressive walking and education intervention for the prevention of low back pain recurrence in Australia (WalkBack): a randomised controlled trial - The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(24)00755-4/fulltext

Walking to combat back pain: world-first study shows dramatic improvement | The Lighthouse
https://lighthouse.mq.edu.au/article/june-2024/walking-away-from-pain-world-first-study-shows-dramatic-improvement-in-lower-back-trouble

One Simple Exercise Is an Overlooked Solution to Lower Back Pain : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/one-simple-exercise-is-an-overlooked-solution-to-lower-back-pain

座りっぱなしが多い現代人の生活習慣により、2050年までに世界で8億人以上の人々が腰痛を抱えて暮らすことになるといわれているほか、腰痛の70%が1年以内に再発するとのデータもあります。


過去の研究では、運動により腰痛の再発が予防できることがわかっていましたが、こうした研究における運動の多くは高価な器具や専門的な指導を必要とするエクササイズばかりでした。

簡単にできて体にも負担がかかりにくい運動が腰痛対策になるのかを検証するため、オーストラリア・マッコーリー大学の理学療法士であるマーク・ハンコック氏らの研究チームは、腰痛になったことがある人にウォーキングをしてもらう実験を行いました。


実験に参加したのは、過去6カ月以内に病気やけがなどを原因としない腰痛を経験した18歳以上の成人701人で、参加者の平均年齢は54歳、701人中565人が女性でした。また、運動の効果を正確に分析するため、実験の前からよく運動をしている人や、すでに腰痛用の運動プログラムを受けている人は参加者に含められませんでした。

研究チームはまず、参加者を半分ずつ2つのグループにわけ、片方には実験群としてウォーキングプログラムと教育プログラムを受けさせました。参加者がどのくらいウォーキングしたかは、本人の年齢や体重、既往歴などを考慮して理学療法士が提案したため一様ではありませんが、6カ月目までに最低でも週5回30分間歩くようにするといった内容でした。また、実際にどのくらい歩いたかを記録する歩数計や日記帳も支給されました。

一方、もう片方の対照群には特段の介入が行われませんでしたが、思い思いの方法で生活に腰痛予防を採り入れたり、一般的な腰痛治療を受けたりすることはできました。これは、消費者代表として実験に参加した専門家と研究チームが協議して、その方が実用的なデータが得られると判断したからだとのこと。

3年間の実験の結果、ウォーキングをするよう指導されていた人はそうでない人より腰痛が再発しにくいことが確かめられました。具体的には、腰痛が初めて再発するまでの期間が対照群では平均112日だったのに対し、実験群では208日と、再発リスクがほぼ半減していました。

「昔は10段階中6~7ぐらいの痛みの腰痛に襲われていましたが、今では10段階中3ぐらいになり、痛みが続く時間も24時間未満になりました」と話すのは、参加者のひとりであるロリー・フェイガン氏です。


元ラグビー選手のフェイガン氏は、20代のころの故障が原因でひどい腰痛に悩まされるようになり、年1~2回は何日も動けなくなるほどだったとのこと。しかし、週に3~4回ウォーキングをするようになってから痛みの強さと持続時間の両方が劇的に改善したそうです。

フェイガン氏は「腰痛になると、ほとんどの人は本能的に動かないようにします。一歩踏み出すだけでも激痛が走るからです。私も以前は安静にしていましたが、今ではそれは最悪のことだと学びました。このプログラムで私が学んだ最も重要なことのひとつは、痛みを恐れるなということです。運動で長期的に痛みを軽減させることができるので、腰痛が再発したら、その時々にできることを続けるべきです」と話しました。

また、ハンコック氏は「ウォーキングが腰痛を予防する正確な理由はわかっていませんが、緩やかに振動する運動、脊椎構造と筋肉への負荷と強化、リラクゼーションとストレス解消、そしてエンドルフィン放出による気分の改善が組み合わさっているのでしょう。また、ウォーキングには心臓血管の健康、骨密度の改善、健康的な体重の維持、メンタルヘルスの改善など、腰痛以外にも多くの健康上の利点があることもわかっています」と述べました。


ハンコック氏らは、腰痛予防にウォーキングを始めたい人へのヒントを次のようにまとめています。

◆歩く時間を徐々に増やすこと
はじめは週に1~2回、10分程度の短いウォーキングから開始し、徐々に時間と回数を増やしていくこと。そうすることでウォーキングが習慣化しやすくなり、負傷リスクも抑えられます。

◆軽い痛みを恐れない
何かを始めた時に多少の痛みを感じるのは普通のことなので、少し痛くなったからといって諦めてはなりません。ウォーキングを続けるうちに腰の作りや周囲の筋肉が強化され、腰痛が再発する再発の可能性が低くなります。

◆仲間を作る
ウォーキングを継続するために、理学療法士や医師に協力を仰ぐのもいいですが、友人や家族、あるいは愛犬など、一緒に散歩をしてくれる仲間を作るのも効果的です。

◆記録をつける
スマートウォッチやスマートフォンアプリ、壁掛け表やノートなどを活用してウォーキングの記録をつけると、成果を確認したり、目標を明確にしたりしやすくなります。

◆再発してもやめない
定期的にウォーキングをしても腰痛がぶり返すことがありますが、再発しても運動を続けるのが重要です。必要に応じて歩く量を減らすことはできますが、やめるべきではありません。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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