サイエンス

NASAの火星探査機パーサヴィアランスが「生命の痕跡」を示唆する岩石を発見


NASAが2024年7月25日、無人火星探査機のパーサヴィアランスが火星の岩石を分析したところ、「古代の火星に存在していた生命」が残したものかもしれない痕跡を発見したと報告しました。パーサヴィアランスが収集した岩石は将来的に地球へ送り届けられ、より詳細な分析が実施される予定です。

NASA’s Perseverance Rover Scientists Find Intriguing Mars Rock
https://www.jpl.nasa.gov/news/nasas-perseverance-rover-scientists-find-intriguing-mars-rock


NASA Mars rover finds 'first compelling detection' of potential fossilized life on the Red Planet | Live Science
https://www.livescience.com/space/mars/nasa-mars-rover-finds-first-compelling-detection-of-potential-fossilized-life-on-the-red-planet

NASA's Perseverance Mars rover finds possible signs of ancient Red Planet life | Space
https://www.space.com/nasa-perseverance-mars-rover-rock-ancient-life

2021年2月に火星へ着陸したパーサヴィアランスは、火星の岩石サンプルを採集するだけでなく分析するための科学機器も搭載しており、かつて存在した水や生命の痕跡が残っているのではないかと期待されるクレーター「ジェゼロ」を中心に調査を行っています。

パーサヴィアランスは2024年7月21日、はるか昔はジェゼロに流れ込む幅約400mの川だった「Neretva Vallis(ネレトヴァ渓谷)」という地点を探索していました。そこでパーサヴィアランスは、「Chevaya Falls(チェヤバの滝)」と名付けられた矢印形の岩を見つけ、穴を開けてサンプルを採集しました。


採集された岩石サンプルには、かつて水が流れていたことを示唆する鉱脈が走っているほか、パーサヴィアランスに搭載された科学機器「SHERLOC(有機物と化学物質のラマンと発光による居住可能な環境のスキャン)」による分析では有機化合物も検出されました。さらに、微生物による化学反応の結果として地球上で観測されるものと似た痕跡も見つかったとのことです。

YouTubeには、NASAのパーサヴィアランス科学探査チームのモーガン・ケーブル氏が、今回の発見について説明する動画も投稿されています。

Signs of Ancient Life on Mars? Here’s What We See in This Intriguing Rock #Shorts - YouTube


ケーブル氏の右上に見えているのが、今回岩石サンプルを採取したチェヤバの滝と呼ばれる岩石です。岩石自体の大きさは1m×0.6mほどのサイズだとのこと。


採取したサンプルを拡大するとこんな感じ。


両側に見える白い筋は硫酸カルシウムの鉱脈であり、かつて岩の表面を水が流れていたことを示す証拠だとケーブル氏は語ります。


鉱脈に挟まれたエリアからは、SHERLOCによる分析で有機化合物が検出されました。


さらに特徴的なのが、真ん中のエリアに見えるヒョウ柄のような斑点です。パーサヴィアランスに搭載された「PIXL(X線岩石化学用惑星計器)」の分析では、この斑点には鉄とリン酸が含まれていることがわかりました。これは、微生物がエネルギー源として利用したかもしれない化学反応を示唆するものであり、地球上では微生物主導の化学反応の結果としてみられるとのことです。


これまで火星では、「水の流れを示唆する鉱脈」「有機化合物」「微生物のエネルギー源となる化学反応」の3つが一緒に見つかったことはなかったとケーブル氏は述べています。


岩石で見つかった有機化合物が古代の生命であり斑点がその痕跡だったかのか、それとも非生物学的プロセスによってこれらが生成されたのかはまだ不明です。パーサヴィアランスは将来のサンプルリターンを計画しており、今回採取された岩石も地球に送り届けられるコレクションに追加されています。


カリフォルニア工科大学の科学者でありパーサヴィアランスのミッションに携わっているケン・ファーリー氏は、「チェヤバの滝はパーサヴィアランスが調査した中で最も不可解で複雑、そして潜在的に重要な岩石です。『有機物』『微生物がエネルギー源として利用したかもしれない化学反応を示す特徴的でカラフルな斑点』『生命に必要な水がかつて岩石を通過していたことを示す明確な証拠』が、初めて説得力のある形で検出されました。その一方で、この岩石がどのように形成されたのか、また近くの岩石がどれほどチェヤバの滝を加熱し、これらの特徴に寄与したのかを正確に特定することはできていません」とコメント。真実を解明するには、サンプルを地球に持ち帰ってより強力な機器で調査する必要があると主張しました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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