サイエンス

年2回投与のHIV予防薬「レナカパビル」が第III相臨床試験でHIV予防で100%の有効性を示す


世界第2位の大手製薬会社であるギリアド・サイエンシズが開発するレナカパビルは、HIV感染症の予防薬です。このレナカパビルが第III相臨床試験において、HIV予防で100%の有効性を示すことに成功したとギリアド・サイエンシズが報告しています。

Gilead’s Twice-Yearly Lenacapavir Demonstrated 100% Efficacy and Superiority to Daily Truvada® for HIV Prevention
https://www.gilead.com/news-and-press/press-room/press-releases/2024/6/gileads-twiceyearly-lenacapavir-demonstrated-100-efficacy-and-superiority-to-daily-truvada-for-hiv-prevention


Watch out, GSK. Gilead’s twice-yearly PrEP drug shows 100% efficacy for HIV prevention | Fierce Pharma
https://www.fiercepharma.com/pharma/watch-out-gsk-gileads-twice-yearly-prep-drug-shows-100-efficacy-hiv-prevention

ギリアド・サイエンシズが開発するレナカパビルは、年2回投与のHIV予防薬で、経口投与と皮下投与の両方に対応しています。そんなレナカパビルが、シスジェンダーの女性に対するHIV予防において100%の有効性を実証しました。レナカパビルは1日1回の経口投与が必要なHIV予防薬である「Truvada(ツルバダ)」に対して、優位性や背景発現率といった主要な有効性評価項目で優れた結果を達成しています。この結果を受け、独立データモニタリング委員会は、ギリアド・サイエンシズが試験の盲検段階を中断し、すべての被験者に非盲検でレナカパビルを提供することを推奨しました。

ギリアド・サイエンシズの最高医学責任者であり医学博士でもあるメルダッド・パーシー氏は、「レナカパビルがHIV感染ゼロで100%の有効性を示したことで、HIV予防に役立つ重要な新ツールとしての可能性を実証しました。現在進行中の治験プログラムからさらなる結果が得られることを期待しており、世界中のすべての人々のためにHIV流行を終わらせるという目標に向かって進み続けることを楽しみにしています」と語りました。

ギリアド・サイエンシズは第III相臨床試験において、南アフリカの25か所とウガンダの3か所で、16~25歳のシスジェンダーの女性および少女5300人超を対象に曝露前予防内服(PrEP)として「年2回レナカパビル」「1日1回デスコビ」「1日1回ツルバタ」を投与することで、レナカパビルの安全性および有効性を評価しました。被験者にはレナカパビル・デスコビ・ツルバタがそれぞれ2:2:1の割合で投与されています。


レナカパビルを投与された女性は2134人で、このうちHIVに感染したのは0人でした。これに対して、ツルバタを投与された女性(1068人)のうちHIVに感染したのは16人、デスコビを投与された女性(2136人)のうちHIVに感染したのは39人です。年2回の投与で済むレナカパビルが、1日1回投与が必要となるツルバタよりも優れた結果を示しています。また、レナカパビルの忍容性はおおむね良好で、重大あるいは新しい安全性上の懸念は確認されませんでした。

南アフリカにあるケープタウン大学のデズモンドツツHIVセンターで所長を務める国際エイズ協会の元会長リンダ・ゲイル・ベッカー博士は、「PrEPとして年2回投与のレナカパビルが承認されれば、世界中でPrEPの恩恵を受ける多くの人々、特にシスジェンダーの女性の生活に適合する、HIV予防の重要な新しい選択肢となる可能性があります。従来のHIV予防オプションは処方どおりに服用すれば非常に効果的であることがわかっているものの、PrEP用の年2回投与のレナカパビルは、経口PrEPピルを服用または保管する際に一部の人々が直面する可能性のある偏見や差別に対処するのに役立つ可能性があります。また、年2回の投与スケジュールを考えると、PrEPの遵守と継続を高めるのに役立つ可能性があります」と語っています。

今後、ギリアド・サイエンシズはアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ペルー、南アフリカ、タイ、アメリカで男性と性交渉のあるシスジェンダーの男性、トランスジェンダーの男性、トランスジェンダーの女性、出生時に男性と割り当てられたパートナーと性交渉のあるノンバイナリーの個人を対象に、レナカパビルの効果を評価する予定です。


今回のデータと今後のデータを組み合わせ、ギリアド・サイエンシズはアメリカの規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA)からレナカパビルの承認を得る計画です。

バイオ医薬品企業であるGSKの推計によると、PrEP市場は2031年までに記事作成時点での2倍以上の規模に拡大し、約40~50億ポンド(約8000億~1兆円)に達すると予測されています。このうち長期作用型の注射剤が市場価値の約80%を占めているため、「レナカパビルはPrEP市場でかなりのシェアを獲得できる好位置にいる可能性が高い」と、投資銀行のWilliam Blair&Companyでアナリストを務めるサリム・サイード氏は語りました。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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