サイエンス

薬を胃の中で1カ月も放出し続ける避妊薬が開発される、その画期的な仕組みとは?

Nadianb

経口避妊薬の問題点は、毎日・同じ時間に・規則的に薬を飲まないと十分な効果が得られないという点で、薬の服用を忘れたことで予期せぬ妊娠を招いた事態も発生しています。そこで新たに研究者が、一度飲むと胃の中にとどまり続けて1カ月にわたって効果を発揮するという、画期的な避妊薬を開発しました。

A once-a-month oral contraceptive | Science Translational Medicine
https://stm.sciencemag.org/content/11/521/eaay2602

Monthly birth control pill could replace daily doses | MIT News
http://news.mit.edu/2019/monthly-birth-control-pill-1204


経口避妊薬は避妊方法の中でも一般的なものの1つですが、確かな効果を得るには、毎日決まった時間に服用する必要があります。避妊薬を摂取しない日があったり時間が大幅にずれたりしてしまうと、避妊成功率が下がるといわれており、実際に経口避妊薬を飲んでいる人のうち9%が毎年妊娠していると推定されています。

経口避妊薬の飲み忘れによる妊娠を防ぐため、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が開発しているのは、「月に一度服用するだけでいい経口避妊薬」です。新しい避妊薬はゼラチンでコーティングされたカプセルの中に3週間分の薬効成分が入っており、女性に飲み込まれたカプセルは胃の中にとどまり、徐々に薬剤を放出するとのこと。この研究は記事作成時点で動物実験の段階であり、メスの豚を使った実験では、毎日摂取するタイプの経口避妊薬と同程度の効果がみられたそうです。


通常の経口避妊薬は胃の中に入ると、胃酸によって溶かされながら、幽門から出て十二指腸へ運ばれていきます。このため胃の中に長期にわたってとどまることができず、薬を毎日摂取する必要が出てくるわけです。

そこでチームは6本のアームを持った、星型のデバイスにより、薬を胃の中にとどめる仕組みを開発しました。


星型のデバイスはカプセル内にアームが折り畳まれていますが、一度胃の中に入ると胃酸によってコーティングが溶け、アームを広げるようになります。アームが広がった状態のデバイスは幽門の直径である2cmよりも大きい全長5.4cmほどになるので、胃の中から出ることができず、長期にわたってとどまり薬効を発揮し続けるわけです。デバイスは閉塞を起こすほどに大きなサイズではなく、薬が各アームから溶解してしまうと、アームは崩壊し幽門を通過できるようになるとのこと。

以下の図が、星型デバイスのプロセスを表すもの。


もともと、このシステムは同チームによってマラリアやHIVの薬用に開発されていたもので、避妊薬に対するアプローチとして使用されたのは初めてとのこと。また、1カ月という長期にわたって効果が示されたのも、今回が初のことだと研究者は発表しています。

研究に際して、論文著者であるロバート・ランガー氏ら研究チームは合計6頭のメス豚で2種類の錠剤を実験しました。チームは、月一度の避妊薬により女性ホルモンの一種である黄体ホルモンを豚がどれほど放出しているかを調べ、その後、毎日摂取するタイプの避妊薬を服用する5匹のメス豚と、値を比較しました。この結果、月一度の経口避妊薬を服用した豚は、21日目でも毎日避妊薬を服用する豚と黄体ホルモンのレベルが同等であることが示されました。加えて、X線写真により、星型デバイスが1カ月で分解されることも確認されましたが、この際にホルモンレベルが急激に降下することはなかったとのこと。

今回の研究には参加していないネブラスカ大学医療センターのキンバリー・スカルシ准教授は、「避妊薬へのアクセスが不十分であることは、妊産婦や新生児の不要な死という世界的な健康問題を引き起こしています。月一度の経口避妊薬は薬の服用問題を大きく改善し、女性の健康と家族計画の決定をより細かくコントロールするための非侵襲的な避妊オプションを提供します」とコメントしました。

なお、研究者によって設立されたLyndra Therapeuticsは臨床試験を行うために1300万ドル(約14億円)の助成金をビル&メリンダ・ゲイツ財団から受け取っており、薬が一般に広まるまでにはまだ時間がかかりますが、今後3~5年以内には人間での検査が可能になるとみられています。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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