サイエンス

NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測史上最も遠い銀河を発見


NASAジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用い、観測史上最も遠い銀河を観測することに成功したと発表しました。

NASA’s James Webb Space Telescope Finds Most Distant Known Galaxy - James Webb Space Telescope
https://blogs.nasa.gov/webb/2024/05/30/nasas-james-webb-space-telescope-finds-most-distant-known-galaxy/


天文学者はNASAが運用する赤外線観測用宇宙望遠鏡のJWSTを利用して、ビッグバン以降の最初の数億年間で誕生したと目される銀河の調査を進めてきました。宇宙初期の銀河は、ガスや星、ブラックホールがどのように変化していったのかに関する重要な洞察を与えてくれると考えられています。

JWSTを用いた宇宙観測プログラムのひとつであるJWST Advanced Deep Extragalactic Survey(JADES:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡先進的深部銀河系探査)では、観測初年度にビッグバン後6億5000万年間に発生したと思しき数百個の銀河が発見されました。また、2023年初頭には赤方偏移14以上の銀河も発見されています。発見された銀河ははるか遠い彼方で観測されたものとは思えないほど明るかったそうです。また、観測された銀河は別の銀河に非常に近かったため、2つはひとつの大きな天体の一部なのではとも考えられていました。

2023年10月から2024年1月にかけて、国際的な天文学者のチームがJADESの一環として、JWSTを用いた銀河の観測を実施。天文学者チームはJWSTのNIRSpec(近赤外線分光器)を使用して、ビッグバンからわずか2億9000万年後に誕生した銀河のスペクトルを観測することに成功しています。


研究チームは2023年10月に、JWSTのNIRSpecを用いて高赤方偏移仮説を示唆する画像を撮影。さらに2024年1月には、NIRSpecを用いて「JADES-GS-z14-0」という銀河を10時間近く観測することに成功しました。銀河のスペクトルを処理したところ、「JADES-GS-z14-0」の赤方偏移が「14.32」になることが判明。これまで検出された銀河の中で最も遠い「JADES-GS-z13-0」の赤方偏移は「13.2」であったため、「JADES-GS-z14-0」はこれまで観測された銀河の中で最も遠いものであることが証明されています。

JWSTのNIRSpecで撮影された「JADES-GS-z14-0」が以下。赤方偏移は「14.32(+0.08/-0.20)」であり、「JADES-GS-z14-0」はビッグバンから2億9000万年後に発生した銀河だと推定されています。


加えて、「JADES-GS-z14-0」は1600光年の大きさがあることや、成長中の超大質量ブラックホール近傍での放射ではなく、ほとんどが若い星からのものであることも証明されました。これだけの星の光があるということは、この銀河は太陽の数億倍の質量があるということを意味します。そのため、研究チームは「自然は3億年足らずの間に、どうやってこれほど明るく、質量が大きく、大きな銀河を作ることに成功したのでしょうか」と記しています。

さらに、「JADES-GS-z14-0」の色が青くないことも明らかになりました。ごく初期の段階であっても、光の一部が塵によって赤くなっている模様。スチュワード天文台とアリゾナ大学の研究者であり、JADESにも参加しているジェイク・ヘルトン氏は、「JADES-GS-z14-0」がJWSTのMIRI(中赤外線装置)を用いてより長い波長でも検出されたと言及しています。


MIRIの観測は、JWSTのNIRSpecでは届かない「赤方偏移した可視光範囲で放射された光の波長」をカバーしています。ヘルトン氏の分析によると、MIRIによって観測された光源の明るさは、他のJWSTの測定値から推定される明るさを上回っており、銀河内に水素と酸素からなる明るい輝線の形で強力な電離ガス放射が存在することを示しているそうです。銀河の誕生初期に酸素が存在していたことは驚きであり、「銀河が観測される前にすでに複数世代の非常に質量の大きい星がその生涯を終えていたことを示唆しています」と研究チームは記しています。

以下のグラフは縦軸が明るさ、横軸が光の波長を表したもの。赤方偏移はライマンブレーク法と呼ばれる、銀河間に存在する水素ガスが天体からの光を散乱吸収してしまう効果を利用した手法を用いて測定されています。


「JADES-GS-z14-0」は理論モデルやコンピューターシミュレーションによって初期宇宙に存在すると予測されているタイプの銀河とは異なるそうです。これまでのところ、調査で高赤方偏移で観測した他の数百の銀河から適切な類似物は見つかっていません。ただし、「JADES-GS-z14-0」を見つけるために探した空の領域は比較的小さかったため、別の研究でも議論されているように、初期宇宙で見られる明るい銀河の予測数は今後大きく変わる可能性があるそうです。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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