サイエンス

睡眠が6時間未満だと2型糖尿病のリスクが上昇するとの研究結果、なぜ睡眠不足だと糖尿病になるのか?


2型糖尿病の原因として真っ先に挙げられるのは運動不足や食べ過ぎです。しかし、新しい研究により1日の睡眠が6時間を切ると2型糖尿病のリスクが高くなることがわかりました。日本人の5~6人に1人が糖尿病かその予備軍であることから国民病とも呼ばれる2型糖尿病と、現代人の共通の悩みである睡眠不足の関係について、専門家が解説しました。

Habitual Short Sleep Duration, Diet, and Development of Type 2 Diabetes in Adults | Diabetes and Endocrinology | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2815684

Could not getting enough sleep increase your risk of type 2 diabetes?
https://theconversation.com/could-not-getting-enough-sleep-increase-your-risk-of-type-2-diabetes-225179

◆発端となった研究
2024年3月にアメリカ医師会の医学誌・JAMA Network Openで発表した研究で、スウェーデン・ウプサラ大学のクリスチャン・ベネディクト氏らの研究チームは、UKバイオバンクに登録された成人24万7867人の健康を10年以上にわたって追跡した調査のデータを分析しました。

その結果、バランスの取れた食習慣が全体的な健康問題のリスクを低下させることが確認された一方で、健康的な食事をしていても睡眠時間が1日6時間を切ると2型糖尿病のリスクが増加することも突き止められました。

具体的には、睡眠時間が5~6時間の人は、7~8時間の人と比べて2型糖尿病の発症リスクが16%高く、3~4時間ともなると41%もリスクが上昇していました。


◆なぜ睡眠時間が短いと糖尿病リスクが高まるのか?
オーストラリア糖尿病学会の医療・教育・科学諮問委員会の委員長であるジュリアナ・マーフェット氏によると、睡眠時間の短さが2型糖尿病のリスクを高くする正確なメカニズムはわかっていないとのこと。

しかし、大きく分けて2つの要因が候補として挙げられています。1つ目は、睡眠不足が血糖値を調節する働きを持つホルモンであるインスリンの働きを阻害しているという説です。

睡眠時間が短い人は、血液中の炎症マーカーや、脂質代謝異常の指標である遊離脂肪酸のレベルが高くなることがこれまでの研究で判明しており、これが血糖値を調整するホルモンであるインスリンに対する感受性の低下、つまり「インスリン抵抗性」を生じさせて、2型糖尿病のリスクを高くしている可能性があります。


2つ目は、体内時計の乱れです。睡眠不足の人や、シフト勤務など睡眠パターンが不規則な人は、概日リズムと呼ばれる体の自然なリズムが乱れます。

これによりコルチゾールグルカゴン、成長ホルモンなど、体内で糖の代謝を調節しているさまざまなホルモンの分泌が妨げられると、1日の生活の中で摂取したブドウ糖を処理する体の機能が低下してしまう可能性があるとされています。

◆睡眠不足の影響を最低限に抑えるには?
多くの人にとって、十分な睡眠時間の確保が困難なことはベネディクト氏らも認めており、そのような人でも可能な限り2型糖尿病のリスクを抑えられる方法を模索することが重要だと指摘しています。

実際、今回の研究では日中に高強度のインターバル運動をしていると、睡眠不足による糖尿病リスクの増加をある程度相殺できる可能性があることが示されました。


また、睡眠不足が何かと問題視されがちですが、過去の研究では睡眠時間が8時間を超えるような寝過ぎも、体重の増加などを通じて2型糖尿病リスクを上昇させることが突き止められています。

こうした点から、マーフェット氏らは「糖尿病リスクにおける睡眠時間のスイートスポットは7~8時間のようです。また、睡眠の質や生活習慣の個人差など、他の要因が睡眠時間と糖尿病リスクの関係に影響を与える可能性もあります」と結論づけました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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