任天堂から訴えられたNintendo Switchエミュレーター「Yuzu」のソースコードを活用した後継プロジェクト「Suyu」が始動、任天堂からの訴訟を回避するための施策も準備中
任天堂は人気の高いNintendo Switchエミュレーター「Yuzu」を著作権侵害で訴え、開発者に対してYuzuの公開終了および損害賠償の支払いに合意させました。そんなYuzuのソースコードから構築された、Yuzuの後継を自称する「Suyu」というNintendo Switchエミュレーターが登場しています。
Here’s how the makers of the “Suyu” Switch emulator plan to avoid getting sued | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2024/03/heres-how-the-makers-of-the-suyu-switch-emulator-plan-to-avoid-getting-sued/
Suyuは自称「世界で最も人気のあるオープンソースのNintendo SwitchエミュレーターYuzuの後継プロジェクト」で、Yuzuが任天堂からの損害賠償の支払いに合意し、公開を終了した翌日である2024年3月5日にスタートしたプロジェクトです。
suyu-emu / suyu · GitLab
https://gitlab.com/suyu-emu/suyu
Suyuは移植性を念頭に置いてC++で書かれており、Windows・Linux・Android用のビルドを積極的にメンテナンスすることを計画しているそうです。Suyuの開発者は「我々はいかなる形式の著作権侵害も支持または容認しません。Suyuを使用するには、実際のNintendo Switchのキーと合法的に入手したゲームが必要です。我々はこのプロジェクトから金銭や利益を得るつもりはありません」と説明しています。
SuyuプロジェクトのコントリビューターでありDiscordコミュニティでモデレーターも務めているというシャーピー氏は、「Suyuは現在、法的にはグレーゾーンに位置しており、我々はそこから抜け出すべく努力しています」と海外メディアのArs Technicaに対して語りました。
シャーピー氏によると、Suyuは「Nintendo Switchエミュレーションへの情熱」と「Yuzuチームによる長年の素晴らしい開発が無駄になるところを見たくない」という願いから生まれたプロジェクトで、Yuzuに降りかかった著作権侵害訴訟という結末を回避するべく、慎重に設計されたアプローチが採用されているそうです。
Suyuの開発チームは「法律経験のある人」に相談し、「いかなる収益化も避けることに決定した」とのこと。GitLab上のプロジェクトページにも「このプロジェクトから金銭や利益を得るつもりはありません」と明記されており、これは任天堂がYuzuに対して起こした著作権侵害訴訟でYuzuの収益性を指摘したことへの対策であることは明らかとArs Technicaは指摘しています。
また、SuyuではYuzuが提供したような「著作権で保護されたゲームをプレイする方法の段階的なガイド」を提供することはないそうで、この理由は「この種のガイドは自身の著作権侵害を認め、他者によるエミュレーターを用いた著作権侵害を容認するようなものだから」だそうです。このガイドの存在も任天堂による著作権侵害訴訟の主な焦点となっていました。
SuyuのDiscordコミュニティ上に記載されている1つ目のルールは「著作権侵害は禁止」で、これにはゲームのダウンロードに関するあらゆる話、システムファイル、ROM、暗号化キー、シェーダーキャッシュの要求、リークされたゲームに関する議論などが含まれるそうです。なお、「著作権侵害」という単語が出るだけでも、Discordコミュニティ上で警告を受けることになるとのこと。
シャーピー氏によると、SuyuはYuzuのソースコードをベースにしているものの、「YuzuやTropic Haze(Yuzuの開発元)への参照をすべて削除する作業」が進められているそうです。技術的なレベルでは、法的責任を回避するために特定のデジタル著作権管理(DRM)回避コードを変更しているとのこと。
さらに、エミュレーター実行時に使用するゲーム固有の暗号化キーについて、「任天堂の訴訟の主要な部分のひとつは、Yuzuによるtitle.keys(暗号化キー)の生成でした。これは我々が最初に削除したコンポーネントのひとつです。Suyuではユーザーが独自のtitle.keysとprod.keys、ファームウェアをNintendo Switch本体から入手する必要があります」とシャーピー氏は語りました。ただし、「暗号化キーがユーザーの所有するNintendo Switchから正当にダンプされたことを検証する方法は存在しません」とも語っています。
すでにGitLab上にSuyuのプロジェクトページが立てられていますが、記事作成時点ではエミュレーターをダウンロードすることはできません。ダウンロードボタンをクリックしても、「Suyuはまだ準備ができていません」というメッセージが表示されます。
シャーピー氏はSuyuについて、「Discordサーバーの規模と成長は、我々が望んでいたよりもはるかに高まっています。我々は少なくともこのプロジェクトを存続させるために何をする必要があるかを理解できるまで、目立たないようにしたいと考えていました。しかし、現状の開発段階ですでに想像をはるかに超える知名度を獲得してしまっています。それでも、これだけ人気を集めることができたことでプロジェクトを確実に成功させるために必要な経験豊富な開発者を集めるための適した機会を得ることができたと考えています」と語りました。
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