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EV販売台数でテスラを上回った中国のEVメーカー「BYD」は従来の自動車メーカーにとって大きな脅威になっている


中国の大手電気自動車メーカーであるBYDは、2023年第4四半期(10~12月)のEV販売台数でテスラを上回るなど大きな躍進を遂げています。中国国外にも着々と進出しているBYDが従来の自動車メーカーにとって大きな脅威になっていると、電気・情報工学分野のメディアであるIEEE Spectrumが報じています。

BYD’s EV Dream May Be Legacy Automakers’ Nightmare - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/byd-ev-china-supercar


BYDは2024年2月に、高級車ブランドの仰望から1287馬力のスーパーカー「U9」を発売しました。U9の最高速度は時速309kmに達し、時速100kmまでわずか2.4秒未満で加速するとBYDは主張しており、価格は168万元(約3500万円)で2024年夏頃納車予定となっています。

また、U9には優れたサスペンションシステムも搭載されており、4つの車輪のうち1つがなくても3輪走行できるほどの安定性を誇るほか、車体を揺らしたりジャンプしたりすることも可能です。実際にU9がサスペンションを利用して「踊る」様子は、以下の動画で確認できます。

BYD DiSus System | Yangwang Dancing U9 - YouTube


BYDは高級車だけでなく低価格帯の車種も製造しており、2023年2月に登場したプラグインハイブリッド車の「秦(Qin) Plus DM-i」は発売時の価格が9万9800元(約207万円)と非常に安く、発売から5日間で受注台数が2万5000台を超えました。さらに、2024年2月にBYDが発表した秦 Plus DM-iの新バージョンでは、希望小売価格がなんと7万9800元(約166万円)まで下げられました。

多くの電気自動車メーカーは、搭載するバッテリーにコバルトニッケルなどのレアメタルを使う三元系リチウムイオン電池(NCMバッテリー)を使用しています。ところが、コバルトは産出国の中央アフリカでの児童労働が問題視されているほか、高価なため製造コストもかかるという課題があります。

一方でBYDは、コバルトやニッケルを使わないリン酸鉄リチウムイオン電池(LFPバッテリー)という異なる種類のバッテリーを使用しています。LFPバッテリーはレアメタルを使わないためコストも安く倫理的な課題も少ないほか、バッテリー寿命を低下させることなく100%まで充電でき、バッテリー温度の上昇による熱暴走も起こしにくいという利点もあります。デメリットとしては、エネルギー密度がNCMバッテリーよりも小さいため航続距離は短くなるという点があります。

近年はテスラやヒュンダイなどの主要メーカーもLFPバッテリーに注目しており、テスラは大型EVトラックや低価格帯の車種でLFPバッテリーの搭載を拡大しています。しかし、LFPバッテリーの市場およびサプライチェーンは、BYDや寧徳時代新能源科技(CATL)などの中国企業によって支配されているとのこと。CATLは2023年8月に、1回のフル充電で700km超の走行距離を実現できる世界初のLFPバッテリーを発表しました。

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BYDをはじめとする中国企業の野心はLFPバッテリーのみにとどまらず、リチウムすら使わないナトリウムイオン電池の製造にも乗り出しています。BYDは2023年、子会社がナトリウムイオン電池工場の建設契約を総額14億ドル(約2100億円)で締結したほか、江淮汽車(JAC Group’s Yiwei)は2024年1月にナトリウムイオン電池を搭載したEVの納入を開始しています。

アメリカではドナルド・トランプ政権時代に中国製自動車へ25%の関税を課すことが決定され、これが足かせとなってBYDはアメリカ市場に進出していません。しかし、BYDはすでにオーストラリアやヨーロッパ市場で足場を築きつつあり、いずれアメリカに進出するのも時間の問題だろうとアナリストや自動車メーカーは考えているとのこと。IEEE Spectrumは、テスラやGMなどの自動車メーカーがBYDと競争を迫られる日も遠くないとする見解を示しました。

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in 乗り物,   動画, Posted by log1h_ik

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