Amazonに有利なロビー活動を行うロビイストが欧州議会で出入り禁止に
特定の主張を持つ団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行われる私的な活動は「ロビー活動」と呼ばれ、これらを行う人物や団体は「ロビイスト」と呼ばれています。2024年2月27日、欧州議会によってAmazonのロビイストに敷地内への立ち入りを許可する「ロビー活動バッジ」が撤回されました。
Victory: Amazon lobbyists to be banned from European Parliament - UNI Europa
https://www.uni-europa.org/news/victory-amazon-lobbyists-banned-from-european-parliament/
Amazon lobbyists to be barred from European parliament
https://www.ft.com/content/11d20273-71e8-433d-bcac-c66d919a203a
Amazonの欧州議会におけるロビー活動を禁止する一連の動きは、Amazonが自社の倉庫での過酷な労働環境に関する、欧州議会の公聴会への出席を繰り返し拒否していることを受けて行われました。実際にAmazonの倉庫では、従業員に対する厳しい監視が行われたり、従業員が仕事中に重症を負う確率が同業者の2倍であることが指摘されたりと、その労働環境が問題視されています。
Amazon倉庫従業員が「だまされて劣悪な環境で働かされた」と告発 - GIGAZINE
そのため、Amazonに対して労働者保護団体などは長年にわたり、倉庫で働く従業員の賃金や労働条件に関する問題や、労働組合結成のアプローチなどに関して精査や批判などを行っています。
Corporate Europe ObservatoryやUNI Europa、ETUCなど30以上の労働組合と市民社会団体が欧州議会からのAmazonのロビイストの排除を求めた(PDFファイル)共同書簡を、欧州議会のロベルタ・メツォラ議長に対して送付しています。
これらを受けて欧州議会の議員は、欧州議会に対しヨーロッパの各種機関からAmazonのロビイストを排除するよう求め、2024年2月に承認されました。
そして2024年2月27日をもって欧州議会はAmazonのロビー活動バッジを撤回。この結果、Amazonは欧州議会におけるロビー活動が事実上禁止されました。欧州議会においてロビー活動が禁止されたのは、2017年の農薬会社・モンサントに続いて2例目です。
欧州議会のヨーロッパ地区事務局長を務めるオリバー・ロエティヒ氏は「欧州議会はAmazonに対して明確なレッドラインを引きました。Amazonによる反民主的な行動は、それが労働組合であろうと、議会であろうと容認されません。今回のロビー活動の禁止は、ヨーロッパ全域のAmazonの労働者と、その労働組合にとって、良好な労働条件を求めるための闘いにおける重要な勝利です」と述べています。
欧州議会においてAmazonは積極的なロビー活動を行っており、約14人のロビイストが2024年1月だけで欧州議会議員と計9回の会合を行っています。また、欧州議会の透明性登録簿によると、Amazonは2022年に欧州議会でのロビー活動に対し約300万ユーロ(約4億9000万円)を費やしたことが明らかになっています。
海外メディアのFinancial Timesは「ヨーロッパやアメリカの議員は、大手テクノロジー企業や生成AIなどの急速に発展するテクノロジーに対する規制について強い関心を向けています。企業は、議会でのロビー活動を自分たちに有利な規制を形成するための中心的なチャネルとして利用することがよくあります」と報告しました。
Amazonの従業員でヨーロッパ労使評議会のメンバーであるジャンパオロ・メローニ氏は「Amazonは私たち労働者の民主的制度を軽視しています。今回の欧州議会による決定は、Amazonが民主主義制度を無視し続けることはできないことを示しています。そして、労働組合に自由に加入し、より良い労働条件と賃金を求めて交渉する権利など、私たちの民主的権利が今後も認められ続けることを願っています」と語りました。
Amazonは今回の決定を受けて「この決定に非常に失望しています。私たちは政策立案者とこれからも建設的に関与していきたいため、今回の決定を真剣に受け止めています」と述べています。
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