iPhone 15 Pro搭載のA17 ProとiPhone 15搭載のA16 Bionicでスペックやパフォーマンスはどう違うのか?
2023年9月に発売されたiPhone 15シリーズでは、iPhone 15とiPhone 15 Plusには2022年発売のiPhone 14 Pro/14 Pro Maxに搭載されていたのと同じSoCのA16 Bionicが、上位モデルのiPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxには新しく登場したSoCのA17 Proが搭載されています。このA17 ProとA16 Bionicではどの程度パフォーマンスが違ってくるのかを、Apple関連メディアの9to5Macがまとめました。
A17 Pro vs A16 - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2024/02/19/a17-pro-vs-a16-bionic-comparison/
Appleによると、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxに搭載されているA17 Proは「業界初の3nm(ナノメートル)のチップ」です。なお、トランジスタ数はA16 Bionicが「160億」であったのに対して、A17 Proは「190億」に増えました。
◆CPU
A17 ProのCPUコア数はA16 Bionicと同数(6コア)ですが、プロセスルールの進化や設計の改善により、より高速かつ高性能なCPUに進化しています。
ベンチマークプラットフォームであるGeekbenchでA17 ProとA16 Bionic、A15 BionicのCPUベンチマークを比較すると以下の通り。シングルコアのパフォ―マンスはA17 ProがA16 Bionicよりも約16%高速で、マルチコアのパフォーマンスは13%高速になっています。なお、シングルコアスコアだけでいけばA17 ProはM1チップのパフォーマンスを凌駕しています。
A17 Pro | A16 Bionic | A15 Bionic | |
---|---|---|---|
シングルコアスコア | 2914 | 2519 | 2183 |
マルチコアスコア | 7199 | 6367 | 5144 |
上記の結果はGIGAZINEで入手したiPhone 15 Pro MaxやiPhone 14 Pro Maxでベンチマークテストを実行した際の結果とほぼ同等です。
iPhone 15 Pro Maxフォト&ベンチマークレビュー、A17 Proチップ採用&ついにUSB-Cを搭載したiPhone最上位機種の底力とは? - GIGAZINE
CPUの電力効率についてAppleは詳細を明らかにしていませんが、AppleはA17 Proについて「最も効率的なモバイルCPU」であり、A17 Proの高効率コアは競合製品よりもワット当たりのパフォーマンスが3倍優れているとアピールしています。
◆GPU
GPUのコア数はA16 Bionicが「5コア」であったのに対して、A17 Proは「6コア」に増えました。AppleはA17 ProのGPUについて、「A16 Bionicよりもピーク時のグラフィックパフォーンマンスが最大20%高速」と言及しています。メッシュシェーディングなどの機能により、長時間のゲームプレイなどでもより効率的に動作する模様。
A17 ProのGPUに関する大きな変更点のひとつが、ハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングへの対応です。AppleはA17 Proではより高いフレームレートでよりスムーズなグラフィックが提供可能となり、A16 Bionicでのソフトウェアベースのレイトレーシングに比べて、4倍の速さでレイトレーシングを実行できるとアピールしています。
AppleはカプコンなどのゲームメーカーがA17 ProのGPUを活用したハイエンドなゲームアプリをリリースするとアピールしており、iOSアプリ版の「BIOHAZARD VILLAGE」や「BIOHAZARD RE:4」がリリースされています。
なお、GeekBench 6を用いたGPUベンチマークでは、iPhone 15 Pro Max(A17 Pro:左)のスコアが「27275」、iPhone 14 Pro Max(A16 Bionic:右)のスコアが「22870」で、スコアは約19%増という結果でした。
◆Neural Engine
機械学習関連の処理に特化したNeural Engineはどちらも「16コア」ですが、1秒当たりに処理できるオペレーション数は17兆から35兆に増えており、つまりは処理速度が約2倍に進化しているということになります。
◆メモリ
メモリ(RAM)はA16 Bionicが「6GB」であったのに対して、A17 Proは「8GB」に進化しています。メモリが増えたことでアプリの起動や切り替えがこれまでよりも高速かつスムーズになっているはずです。Androidデバイスでは8GB以上のメモリを搭載しているものも少なくありませんが、AppleはiPhoneのハードウェアとソフトウェアを合わせて開発しているため、Androidよりも少ないメモリでより優れたパフォーマンスを実現していると9to5Macは指摘しました。
◆USB 3
A17 Proのもうひとつの大きな特徴が、新たにUSB 3の最大10Gbpsの転送速度をサポートするためにUSBコントローラーが搭載された点にあります。つまり、iPhone 15 ProおよびiPhone 15 Pro MaxはUSB-Cポートを利用することで最大10Gbpsでの高速データ転送が可能ですが、A16 Bionicを搭載しているiPhone 15およびiPhone 15 PlusはUSB-Cポートを使っても480Mbpsでのデータ転送しかできません。これはiPhone 14以前のiPhoneでLightningポートを用いたデータ転送を行う場合の最大データ転送速度と同等です。
ただし、A15 Bionicを搭載したiPad miniはUSB-Cポートを利用することで最大5Gbpsでのデータ転送が可能となっており、これはA16 Bionicを搭載したiPhone 15よりもはるかに高速です。
なお、実際にiPhone 15 Pro MaxのUSB-Cポートを使った爆速データ転送を体験してみた記事も公開しています。
ついにUSB-Cコネクタを搭載したiPhone 15 Pro Maxのデータ転送はLightningと比べてどれだけ速くなったのか?付属ケーブルと高速転送対応ケーブルも比較してみた - GIGAZINE
◆メディアエンジン
A17 Proでは、ProResコーデックとディスプレイエンジンにAV1デコーダが追加されています。これによりiPhone 15 Proでのビデオストリーミングエクスペリエンスが向上するとAppleはアピールしています。
上記の比較について、9to5Macは「一見すると、A17 ProのA16 Bionicからの改善点はそれほど大きくないように思えるかもしれません。しかし、複数の改善点を組み合わせることでグラフィックスおよびNeural Engineのパフォーマンスは大幅に向上し、A17 Proは世界で最も強力かつ効率的なスマートフォン向けチップとなります」「ただし、ほとんどのユーザーが世界で最も強力なスマートフォン向けチップを必要とするかは別問題です。ただし、最高のものを求める人にとってA17 Proが最適であることは明らかです」とまとめました。
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