親子関係の質で大人になってからの幸福度を予測できることが判明
子育て期間中の親と子の関係については多数の研究が行われていて、「子育てにユーモアを持ち込むことが子どもと良好な関係を築く上で役に立つ可能性がある」などの報告もあります。親子関係はなるべく良好でありたいものですが、こうした親子関係は、子どもが小さい間だけでなく、子どもが大きくなってからも幅広く影響を残し続けることがわかりました。
Parent-child relationship quality predicts higher subjective well-being in adulthood across a diverse group of countries | Communications Psychology
https://www.nature.com/articles/s44271-024-00161-x
Quality of parent-child relationships predicts adulthood well-being, 21-country finds
https://medicalxpress.com/news/2024-12-quality-parent-child-relationships-adulthood.html
子どもの成長にとって「親」の存在は欠かせないものです。ただ、子育てが子どもの心理的健康と密接に関連していることが多数の研究で証明されているにもかかわらず、子育ての長期的な影響や国ごとの違いについての議論は十分に確立されていないのが現状だそうです。
そこで、アメリカ・ブルッキングス研究所所属の心理学者であるジョナサン・ロスウェル氏らは、まずアメリカ全土で調査を行い、子育ての状況や親子関係の質、青少年のメンタルヘルスに関連した大規模な調査を実施。人種や民族的背景の異なる若者から回答を集めた結果、子育ての状況や親子関係の質、青少年のメンタルヘルスの3つに非常に強い関連性があることが確かめられたとのこと。
次にロスウェル氏らは21カ国と1地域に住む20万2898人のデータを調べ上げ、小さい頃の親子関係で、子どもが成人してからの幸福度を予測できるかどうかを検証しました。この調査では、宗教的・民族的多様性を最大化するため、アメリカや日本、香港、トルコ、ケニアなど地域が広がるように対象がピックアップされています。
データには、「成長する過程で母親と父親のどちらから愛されていると感じましたか?」といった質問や、「それぞれの親との関係は非常に良い・やや良い・悪い・非常に悪いのどれでしたか?」という質問、「家庭で自分が部外者のように感じたことはありますか?」という質問など、親子関係の質を問うようなアンケートの回答が含まれていました。
また、「困難があっても、常に未来に希望を持ち続けていますか」「人生を振り返り、感謝していることをすべて列挙するとしたら、長いリストになると思いますか?」といった質問への回答を調査することで、ロスウェル氏らは成人してからの幸福度を探りました。
その結果、小さい頃の親子関係の質は、親の経済状況、子の現在の教育水準、子の世帯収入、性別など他の要素を差し置いて、成人後の幸福度と最も密接に関わっていることが判明しました。
さらに、調査対象者の年齢が他の国よりも若かった1カ国を除き、すべての国で上記の関連性が認められたそうです。このことから、ロスウェル氏らは「親子関係と生涯にわたる幸福度の間には普遍的なつながりがあり、どこで育ったかに関係なく、すべての人に当てはまることを示唆しています」と指摘しました。
具体的な割合としては、回答者の81%が「成人前に父親に愛されていると感じた」と報告し、89%が「成人前に母親に愛されていると感じた」と報告しています。また、「父親との関係が非常に悪い」と答えた人は全体の4%、「母親との関係が非常に悪い」と答えた人は2%、「父親との関係が非常に良い」と答えた人は58%、「母親との関係が非常に良い」と答えた人は65%でした。
親子関係の質は国によって大きく異なるそうです。例えば、インドネシアでは、「成人前に父親に愛されていると感じた」と答えた人は全体の96%もいて、ナイジェリア(95%)やエジプト(93%)でも総じて高い値でしたが、日本では66%に過ぎませんでした。母親の場合も同様で、インドネシア、ナイジェリア、エジプトはそれぞれ97%以上でしたが、日本は74%でした。日本と同じく、香港でも低い値が確認されました。
全体的に、親子関係が幸福度に及ぼす影響は高所得の国々の方が顕著であるように見えたとのことで、ロスウェル氏らは「おそらく、裕福な国に住むほとんどの人々は、食料、家、治安など、生活をする上で必要になるあれこれを心配する必要がないからでしょう」と言及しました。これに加え、宗教的な思想が強い親は子どもとの関係が良好である傾向が強いという結果も確認されているとのことです。
ロスウェル氏は「最も質の高い関係を築き、長期的なメンタルヘルスの向上につながる子育ての方法についてさらに研究するため、新しい調査を実施する予定です。また、子育てが子の性格や倫理観の発達にどのような影響を与えるかを調べ、遺伝的な影響と子育ての影響をさらに明確にしたいと考えています」と述べました。
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