家族で一緒に食事をすることは子どもだけでなく親にもメリットがある
これまでの研究から、家族で一緒に食事をとることが肥満の防止や心血管代謝のリスク低下、成績の向上、メンタルヘルスの改善といったメリットを子どもにもたらすと知られています。ハーバード大学医学部心理学科で准教授を務めるAnne Fishel氏が、家族が一緒に食事をとることのメリットは子どもだけではなく、親にも及んでいると解説しています。
Family meals are good for the grown-ups, too, not just the kids
https://theconversation.com/family-meals-are-good-for-the-grown-ups-too-not-just-the-kids-158739
1人で食事をするよりも複数人で食事をした方が健康にいいことは広く知られており、2012年に発表された研究によると、たとえ子どもを持っていない夫婦でも一緒に食事をとる頻度が高いほど果物や野菜を多く食べ、ファストフードの摂取量も減少することが示されています。また、消防士を対象にした研究では、一緒に食事をしながら交流するチームはパフォーマンスが高いとの結果も報告されています。
これに加え、子どもと一緒に食事をとる親には追加のメリットがあるとFishel氏は指摘しています。2018年の研究では、子どもと一緒に食事をとる回数が多い親は果物や野菜の摂取量が多いことがわかりました。この理由としては、子どもに栄養のある料理を食べさせようとしたことで、親の食事も健康的なものになっている可能性が考えられるとのこと。
また、頻繁に子どもと一緒に食事をとる親は自尊心が高く、抑うつ症状およびストレスのレベルが低いこともわかりました。この傾向は父親だけでなく、料理において多くの手間と時間をかけがちな母親でも同様に見られたほか、テイクアウトや調理済みの食品でもメンタルヘルスにメリットがあることが確認されたそうです。
乳幼児の親を対象にした研究では、家族で一緒に食事をとることに重きを置く夫婦は、そうでない夫婦よりもパートナーとの関係に満足していることが判明しています。このことからFishel氏は、子育ての初期段階において「家族で一緒に食事をとる時間」などを確立することで夫婦仲を維持できる可能性があると指摘し、「家族と一緒の夕食は、大人がゆっくりと他の人と話す上で最も信頼できる時間です。ビデオ通話やメール、To Doリストから離れて、顔と顔を合わせてつながりましょう」とコメントしました。
さらにFishel氏は、家族で一緒に食事をとることには世代を超えた影響もあると指摘。思春期の頃に家族と一緒に食事をとる習慣を持っていた子どもは、自分が成長して親になった際に家族と共に食事をとる可能性が高くなるため、健康や精神によい習慣が世代を超えて受け継がれる傾向があるそうです。
ただし、全ての家庭が一様に食事を一緒にとる習慣を有しているわけではなく、家族そろっての食事はより学歴や世帯収入が高い家庭で一般的です。アメリカで「家族で一緒に食事をとる頻度」を調査した研究では、低所得世帯が家族一緒に食事をとる頻度は1999年から2010年にかけて47%から39%に減少した一方、高所得世帯では57%から61%に増えたことがわかっています。このギャップは、低所得の仕事につく親はスケジュールをコントロールしにくく、時には複数の仕事をこなす必要に迫られていることが理由だとみられています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは人々の生活を大きく変えましたが、その中には「家族で食事をとる頻度が増えた」という変化もあります。パンデミックが落ち着いたらお気に入りのレストランに行きたいと考えている人も多いはずですが、家族そろっての食事が与えるメリットも大きいため、今後も家族で一緒に食事をとる習慣を継続することをFishel氏は推奨しています。
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