子ども時代の食生活は成人後も影響を及ぼす、食事の栄養バランス改善が必要と研究者が主張

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体が成長する子どもの時期には栄養バランスのいい食事が重要だということは多くの人が理解していますが、たとえ先進国であっても子どもが十分な栄養バランスの食事をとっていないケースは多いとのこと。「子ども時代の食生活は成長期だけでなく成人後にも影響を及ぼすため、大人や学校が積極的に栄養バランスの改善に乗り出すべき」と、イギリス・ティーズサイド大学の理工学部研究員のケリー・ローズ氏が主張しています。

Why are school lunches still so unhealthy?
https://theconversation.com/why-are-school-lunches-still-so-unhealthy-120811

先進国を中心に高校生以下の子どもたちの間でも肥満になる傾向が強まっており、イギリスは肥満の多い国トップ20にランクインしています。小学校入学前と比較して小学生卒業時には肥満の子どもの数が2倍になり、中学校でもさらに肥満の子どもは増えているとのこと。


ローズ氏はこの原因として、イギリスの子どもたちが栄養素の少ない加工食品中心の不健康な食事をとっているからだと指摘。イギリスの女児は健康のために重要な(PDFファイル)ビタミンA、葉酸、鉄分といった栄養素が足りておらず、ほかの若者も発達に必要な栄養素が足りていないそうです。さらにイギリスでは10代の若者のうちわずか4%しか、1日に摂取するべきと推奨されている量の食物繊維をとっていないことが調査で示されており、食物繊維が心臓病や2型糖尿病などのリスクを軽減することを考えると、この傾向は大きな健康上の問題となります。また、10代の若者は他の年齢層と比較して砂糖を含んだ食品や甘い飲み物を多く摂取しており、朝食には砂糖たっぷりのシリアルを好んでいるとローズ氏は述べています。

イギリスにおいて肥満の子どもが増えている背景には、「家庭が裕福でないために必要な栄養素を満たすために重要な果物、野菜、魚、その他の健康食品を購入できない」という調査結果も出ています。栄養バランスの足りない食事は子どもに身体的な悪影響を及ぼすだけでなく、学校で本来のパフォーマンスが発揮できないために、精神状態が悪化してしまうという研究結果も示されています。

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こうした子どもたちの栄養不足は、子どもたち自身の選択による部分もあるとのこと。中学生くらいの子どもたちになると、「健康志向の食事を選択すること」はあまりクールなものとみなされず、みんなが甘い食べ物やジュースを選択していると自分も同じような食べ物を選択しがちです。

また、多くの学生たちは食堂に並んでランチを受け取る時間をもったいなく感じたり、教師が食堂にいることで居心地の悪さを覚えたりして、昼食を抜いてしまうこともあるとローズ氏は指摘。お腹が空いた分をお菓子などの健康に悪い食品で補うという悪循環が生まれています。

この問題の背景として、イギリスの中学校では「食育」の重要性を訴えるキャンペーンが失敗したことが挙げられます。イギリスの有名シェフであるジェイミー・オリヴァー氏は、イギリスの公立学校における学校給食を改善する活動を展開していましたが、10年にわたる活動の後も、いまだに高脂肪・糖分過多の給食を提供する学校は非常に多いとのこと。学校給食の栄養バランスを改善する活動は失敗したと、オリヴァー氏自身も認めています

過去にはイギリスの給食が「あまりにもひどすぎる」として話題にあがったこともあります。

9歳少女が撮影したひどい給食写真が広がり給食メニューが改善へ - GIGAZINE


しかし、子ども時代の食生活は成人後にも受け継がれることが判明しており、10代のうちから健康的な食習慣を身に付けることは非常に重要です。そこで、10代の若者たちに食事の選択を任せるのではなく、大人や学校が主導して子どもたちに健康的な食事を与えるべきだとローズ氏は主張しています。

学校と生徒がよりよい食堂の環境を作るために話し合い、食堂のメニューを健康的なものにすることも考えられる活動の一つです。また、食品広告のあり方や食品開発についても、子どもの成長や栄養バランスという観点を取り入れる必要があります。さらにローズ氏は学校だけでなく家庭でも、親が子どもたちの健康的な食事をサポートすることができると訴え、お腹を空かせて帰ってきた子どもにスナック菓子を与えるのではなく、カットした果物を与えるなどの行動が重要だと述べました。

by silviarita

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in メモ,   , Posted by log1h_ik

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