理論上最大サイズのPDFファイルはドイツより大きくなるというのは本当なのか？

インターネット上に散乱するネットミームのひとつに「ページ寸法を最大にしたPDFファイルはドイツの国土面積を上回る」というものがあります。これが果たして本当なのか、ソフトウェア開発者のアレックス・ウルチャン氏が解説しました。

Making a PDF that’s larger than Germany – alexwlchan
https://alexwlchan.net/2024/big-pdf/

問題のミームが以下。理論上最大サイズのPDFファイルは381キロメートル四方の大きさになり、ドイツの大きさを上回ると主張されています。ところが、この主張には何の裏付けも説明もなく、なぜ381キロメートルが上限なのかはわかりません。

by NordNordWest

一部の人は「PDFファイルリーダーの上限に由来する」と指摘していて、Adobe Acrobatの仕様を取り上げて「Adobe Acrobatは、取り扱える最大寸法に1500万インチ×1500万インチまたは225兆平方インチ(381キロメートル×381キロメートルまたは14万5161平方キロメートル)という制限を課しているため、このような数字が出る」と説明しているとのこと。実際にPDF 1.6の仕様書にも同じことが書いてあるそうです。

最大サイズのPDFファイルがドイツを上回るらしいということはわかりましたが、果たして「381キロメートル四方」が本当に最大なのか、ウルチャン氏は試してみることにしました。

まずPDFファイルの内部構造を学んでPDFを直接編集する方法を理解したウルチャン氏は、ページのサイズを決定しているのが「Page」オブジェクトであることを把握します。

例えばPageオブジェクト内で「/MediaBox [0 0 300 300]」と指定されている場合、寸法は300×300の正方形となります。デフォルトの単位サイズは1/72なので、1ページは300×72＝4.17インチ(10.59cm)です。この「MediaBox」の数値を変更すると、ページをさらに大きくすることができます。

ところが、MediaBoxの数値をAdobe Acrobatが許容する最大値である1万4400×1万4400まで上げると、ページが200.00×200.00インチになったと表示され、この制限を超えようとすると警告が出るとのこと。200インチといえばわずか5メートルに過ぎず、381キロメートルにはほど遠い数値です。

ウルチャン氏いわく、これはデフォルトの単位である1/72インチを使っているからで、UserUnitの値を変更することで単位を大きくし、制限を突破することができるそうです。ただ、ウルチャン氏がUserUnitの最大値である75000まで上げたところ、Adobe Acrobatはページのサイズが150億インチ×150億インチ(381キロメートル×381キロメートル)になったと表示し、これ以上の寸法のものを作っても「150億インチ」の表示を変えなくなってしまったとのこと。

そこでウルチャン氏は、MediaBoxに上限のないmacOSアプリ「Preview.app」を使用。寸法をはちゃめちゃに大きくしてみたところ、ページサイズが352億7777万7777.78cm×10.59cmになったファイルを作成できたそうです。この幅は地球と月の間の距離とほぼ同じです。

この数値はまだまだ大きくでき、約37兆光年四方(1光年は約9.5兆キロメートル)のPDFも作れたそうです。このファイルは(PDFファイル)このリンクからアクセスできますが、ウルチャン氏は「印刷はしないでください」と注意しました。

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