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ミッキーマウスと「蒸気船ウィリー」がパブリックドメイン化したことにより、ミッキーマウスの取り締まりが混乱している可能性


初めてミッキーマウスが登場した公開作品として知られる「蒸気船ウィリー」は、繰り返しの著作権保護期間延長を経て、2024年1月1日にパブリックドメインとなりました。そのため、「蒸気船ウィリー」に登場する範囲ではミッキーマウスを自由に使用することができますが、依然としてその他のミッキーマウス作品は著作権で保護されていることもあり、「パブリックドメインのミッキーマウスを使用しているのに、著作権侵害で削除された」というようなケースが多数報告されています。

Disney 'Cracks Down' on Mickey Mouse 'Steamboat Silly' Pirates * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/disney-cracks-down-on-mickey-mouse-steamboat-silly-pirates-240128/


YouTube demonetizes public domain 'Steamboat Willie' video after copyright claim | Mashable
https://mashable.com/article/youtube-demontizes-public-domain-steamboat-willie-disney-copyright-claim

1970年にアメリカで初めて成立した著作権法は、当初保護期間を「14年間」と定めていましたが、この期間は延長を繰り返して「95年」まで長くなりました。保護期間が延長を繰り返したのはミッキーマウスが原因と言われており、1998年の著作権延長法は「ミッキーマウス延命法」などと呼ばれています。しかし、1928年に公開された「蒸気船ウィリー」および作中に初登場したキャラクターであるミッキーマウスは、95年が経過した2024年1月1日時点でついにパブリックドメイン化され、自由に複製、共有、改変できるようになりました。

ミッキーは2024年にパブリックドメイン化、約1世紀にわたるディズニーと著作権との「三角関係」の歴史とは? - GIGAZINE

by Kansir

2024年が始まってすぐに、ミッキーマウスおよび「蒸気船ウィリー」を使用したムービーやゲームなどが次々に公開されました。Nightmare Forge Gamesというゲームパブリッシャーは年明け直後にミッキーマウスがメインの敵となる1人称視点のホラーゲーム「Infestation:Origins(発表当初は『Infestation 88』)」をSteamでリリースしています。また、ミッキーマウスの覆面をかぶった殺人鬼が登場するホラー映画「Mickey’s Mouse Trap」の予告編も公開されるなど、パブリックドメインになったミッキーマウスを利用したコンテンツが各種登場しました。

MICKEY'S MOUSE TRAP FILM TEASER TRAILER (2024) - FIRST EVER MICKEY MOUSE HORROR FILM!!!! - YouTube


ミッキーマウスをパブリックドメインとして自由に利用する上で、注意点がいくつかあります。まず、ミッキーマウスがパブリックドメインになったのはあくまで「蒸気船ウィリー」の範囲のみであり、その後の作品でミッキーマウスのトレードマークとして追加されていった目や鼻の特徴、白い手袋などは使用できません。同様に、ミッキーマウスを自由に改変することはできますが、1940年の「ファンタジア」で登場した魔法使いミッキーのように、後に登場したデザインに似せた姿は著作権で保護されたままとなっています。


さらに、パブリックドメインになった範囲で使用していても、著作権侵害の申し立てを受けたケースも報告されています。声優でYouTuberのブロック・ベイカー氏は、自身のYouTubeチャンネルに「蒸気船ウィリー」全編にコメディーのナレーションと効果音を独自に追加したムービーを投稿しました。ベイカー氏によると、アップロードした直後にYouTubeから収益停止や、一部の地域で視聴できなくなる措置を受けたとのこと。

Public domain, you say? https://t.co/6bP62VmHge pic.twitter.com/KLtuuCPYnB

— Brock Baker (@BrockBaker)


ベイカー氏のムービーが著作権ポリシーに抵触した原因として、YouTubeのコンテンツIDが影響していると考えられます。YouTubeでは、アップロードされた動画にコンテンツIDを付与し、新しくアップロードされた動画が既存のコンテンツIDと一致していた場合に、著作権侵害の申し立てを行う仕組みになっています。そのため、パブリックドメインであることに対応しておらず、コンテンツIDの一致で蒸気船ウィリーの映像を含むムービーを違反と判断した可能性があります。なお、ベイカー氏はYouTubeの措置に異議申し立てをした結果、翌日には著作権侵害の申し立てが撤回されたとのこと。

また、アメリカの掲示板型ソーシャルニュースサイトのRedditでも、同様のケースが報告されています。これに対してRedditユーザーは、「パブリックドメイン化してすぐにYouTubeがシステムを対応させたとは思えないので、以前の対応を継続している」という推測の他、「『蒸気船ウィリー』がパブリックドメインになったのはアメリカの話で、他のほとんどの国では国際法の短期ルールが適用されて、著作権保護が切れてない可能性があります。そのため、一部の国では視聴できなくなります」と指摘する意見もありました。

さらに、このケースではムービーのタイトルに「ミッキーマウス」「ミニーマウス」と入れていることから、「『蒸気船ウィリー』に出てくるのは、まだ名前がないキャラクターです。『ミッキーマウス』という名前を使うことが著作権に引っかかっている可能性があります」という意見もあります。


その他の事例として、著作権や海賊版に関するニュースを発信するメディアのTorrentFreakによると、「蒸気船ウィリー」ではなく、「蒸気船シリー」の著作権侵害として申し立てが行われている可能性があるとのこと。「蒸気船シリー」はアニメシリーズ「ミッキーマウスのワンダフルワールド」のスペシャル短編として作られた特別編で、ミッキーマウスやミニーマウスたちが「蒸気船ウィリー」を視聴していたら、「蒸気船ウィリー」時代のモノクロミッキーが飛び出してくるというストーリー。「蒸気船シリー」では作中で「蒸気船ウィリー」を上映しているため、これによりコンテンツIDなどの自動コンテンツ認識システムが混乱している可能性が考えられています。

Steamboat Silly | Official Trailer | Disney+ - YouTube


「蒸気船ウィリー」のパブリックドメイン化に際して、ディズニーは「私たちは、ミッキーマウスのより現代的なバージョンや著作権の対象となっている作品における権利を引き続き保護し、ミッキーやその他の象徴的なキャラクターの無許可使用によって引き起こされる消費者の混乱を防ぐために取り組んでいきます」とコメントしています。

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in 動画, Posted by log1e_dh

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