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Appleがデジタル市場法を受けてEUでのサイドローディングとApp Store外決済を認めるも厳しい条件や新しい手数料が追加される


Appleが、EUのデジタル市場法(DMA)によるゲートキーパー指名を受け、EU圏でApp Store外でのiOSアプリ配布とApp Store外決済を認めると公式に発表しました。

Apple announces changes to iOS, Safari, and the App Store in the European Union - Apple
https://www.apple.com/newsroom/2024/01/apple-announces-changes-to-ios-safari-and-the-app-store-in-the-european-union/


Update on apps distributed in the European Union - Support - Apple Developer
https://developer.apple.com/support/dma-and-apps-in-the-eu/


Apple is bringing sideloading and alternate app stores to the iPhone - The Verge
https://www.theverge.com/2024/1/25/24050200/apple-third-party-app-stores-allowed-iphone-ios-europe-digital-markets-act

Apple announces support for third-party iPhone app stores in the EU, coming with iOS 17.4 - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2024/01/25/third-party-iphone-app-stores-ios-17-4/

デジタル市場法は、AppleやGoogle、Metaなどの大手IT企業を厳しく規制する目的で2022年11月に発行し、2023年5月に施行された法律です。このデジタル市場法では、コアプラットフォームサービスを提供する企業を「ゲートキーパー」として定めており、Googleの親会社であるAlphabet、Apple、Amazon、ByteDance、Meta、Microsoftの6社がゲートキーパーに指名されました。

Amazon・Apple・Google・Microsoftなど大手テクノロジー企業7社がEUのデジタル市場法における「ゲートキーパー」であることを認める - GIGAZINE


ゲートキーパーは、2024年3月6日までにDMAに順守しなければならず、これに背くと世界全体における全体売上高の最大10%の罰金が科されます。Appleと同じくゲートキーパーに指名されたMetaは、FacebookとInstagramのアカウント連携解除を可能にしています。

MetaがFacebookとInstagramのアカウント連携解除を可能に、デジタル市場法順守のため - GIGAZINE


Appleは、iOSアプリの配布場所をApp Storeに限定しており、App Store以外でiOSアプリを配布するサイドローディングについてはセキュリティリスクを理由に認めていませんでした。しかし、この制限は「自由な市場競争を阻害する」として、デジタル市場法に抵触すると指摘されていました。

Appleは「本日、デジタル市場法に準拠するため、EU加盟27カ国の開発者のアプリに影響を与えるiOS・Safari・App Storeのルールを変更しました。この変更には、600を超える新しいAPIや拡張されたアプリ分析、代替ブラウザエンジンの機能、アプリの決済処理とiOSアプリの配布が含まれます」と発表しました。


アプリのサイドローディングはEU圏内のユーザーが対象で、iOS 17.4以降から可能になります。開発者はdeveloper.apple.comを通じて同意した後、外部アプリストアでの配布が可能になるオプションにアクセスできるようになるとのこと。

Appleは、アプリのサイドローディングはセキュリティリスクが高く、違法なコンテンツや犯罪の温床になりやすいと主張しており、サイドローディング由来のアプリではアプリ内購入の制限や家庭内での購入共有、ユニバーサル購入などの機能がサポートされないと述べています。また、払い戻しやサブスクリプションのキャンセル、ユーザーデータのプライバシーなどについてもAppleはサポートできず、開発者とアプリに全責任があるとしています。


アプリ開発者が外部のアプリストアでiOSアプリを配布するには、外部アプリストアの開発者に連絡し、配布に必要なセキュリティトークンを受け取る必要があります。iOSアプリの売上やダウンロード数、レビューを管理できる「App Store Connect」も変更され、アプリの配布先にApp Store以外のアプリストアを追加することができるようになるとのこと。App Store Connectの詳細については2024年2月に公開される予定です。

外部アプリストアの開発者はApp Storeと同様に、iOSデバイスにソフトウェアをインストールしてサポートしたり、アプリのカタログ全体のデータにアクセスしたり、ユーザーの購入やサブスクリプションを管理したりすることが可能。ただし、配布されるアプリがiOS上で動作するためには、Appleから公証(Notarization)を受ける必要があります。そのため、外部アプリストアで配布されたアプリも最終的にはAppleのシステムで管理されることになります。

外部アプリストアは誰でも開設できるものではなく、Appleから承認されて資格を得なければなりません。外部アプリストアの資格をAppleから得るためには、以下の条件を満たす必要です。

・EU圏内に本拠地を構える組織としてApple Developer Programに登録されている、あるいはEU圏内に本拠地を構える子会社の法人を有している。
・「アプリの発見と配布」を主な目的とするアプリを構築する。
・配布するアプリについて、コンテンツやビジネスモデルに関連するものを含む条件を提供および公開することに同意し、それらの条件を満たすアプリを受け入れる。
・透明性のあるデータ収集ポリシーを公開し、ユーザーがデータの収集方法と使用方法を制御できるようにする。
・デジタルサービス法や一般データ保護規則(GDPR)など、EUの法律に従う。
・外部アプリストアのアプリのリストを削除せよという政府およびその他の要求に対処する責任を負う。
・外部アプリストアにおける詐欺アプリ、マルウェア、違法なアプリの継続的な監視と検出に取り組む。
・外部アプリストアでアプリを配布する前に、知的財産権侵害がないかを審査する仕組みを実装する。
・外部アプリストアあるいは外部アプリストアアプリに関する知的財産紛争処理プロセスをAppleに提示する。
・開発者とユーザーへのサポートを保証するための適切な財務手段を示すため、基礎信用力格付けA以上の金融機関で100万ユーロ(約1億6000万円)のスタンドバイクレジットをAppleに提示する。


上記の条件の最後にある「100万ユーロのスタンドバイクレジット」について、Appleと3年以上にわたる法廷闘争を繰り広げたEpic Gamesのティム・スウィーニーCEOは、「Appleと自由に競争するためには100万ユーロ以上の資産を持たなければならないというのは不平等で、後進のチャンスを潰したAppleは恥ずべきだ」と強く批判しています。

Epic was founded with a few thousands dollars in funds - that I earned through mowing lawns. Apple was sinilar; later their first outside investor put in $250,000. Shame on Apple for shutting the doors to future computing opportunity for a new generation of innovators.

— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic)


さらに、デジタル市場法では、App Storeを介さない決済手段をサポートすることが義務付けられます。そのため、AppleはEU圏内に限り、App Store以外の決済システムを使ったアプリ内購入を可能にすると発表しています。

今回の変更では「Apple税」、すなわち外部決済手段の売上には手数料がかかりません。ただし、開発者はアプリの年間インストール数ごとに0.50ユーロ(約80円)を支払う「コアテクノロジー料」を支払う必要があるとAppleは定めています。このコアテクノロジー料は最初の100万インストール分は無料で、超過した分にかかるとのこと。つまり、年間100万インストールを超えないアプリの場合は、コアテクノロジー料はかかりません。

Appleはこのコアテクノロジー料金の目的について、「開発者ツール、技術、プログラムサービスへの継続的な投資によって外部アプリ開発者に提供する価値を反映するため」と説明しています。ただし、この手数料は非営利団体・認定教育機関・政府機関であれば免除されるとのこと。

そして、App Storeの決済手段を使用したアプリの売上にかかる手数料は、通常であれば30%ですが、EU圏内のアプリ開発者については17%となりました。さらに年間収益100万ドル(約1億4800万円)を下回る小規模事業者の場合は、手数料が10%にまで下がるとのこと。

なお、EU圏内のアプリ開発者向けに、銀行アプリやウォレットアプリに非接触型決済取引を可能にするAPIをiOS 17.4で導入するとAppleは発表しています。これにより、サードパーティーのバンキングアプリやウォレットアプリからNFC端末を使った支払い取引を行えるようになるそうです。

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in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1i_yk

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