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GoogleはAppleの独自検索ツールをつぶすためにEUの「デジタル市場法」の抜け穴を突こうとしていた


アメリカ司法省が、独占禁止法違反でGoogleを訴えた裁判により、同社がiPhoneのデフォルト検索エンジンとしての地位を守るために巨額の資金をAppleに支払っていることがわかりました。Googleはさらに、中小企業を支援する目的で制定されたEUのデジタル市場法を逆手に取って、Appleが開発した独自の検索機能との競争を有利に進めようとしていたことも判明したと、The New York Timesが報じています。

Inside Google’s Plan to Stop Apple From Getting Serious About Search - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/10/26/technology/google-apple-search-spotlight.html

Google’s search deal with Apple Safari is reportedly $18 billion a year - The Verge
https://www.theverge.com/2023/10/26/23933206/google-apple-search-deal-safari-18-billion

名前を明かせる立場にないとして匿名でThe New York Timesに情報を提供した関係者2人の話によると、GoogleはiPhoneのデフォルトの検索エンジンになるために、2021年に180億ドル(約2兆7000億円)をAppleに支払ったとのこと。資産運用会社のアライアンス・バーンスタインは、「GoogleがAppleに支払う金額は年間180億ドルから200億ドル(約3兆円)」と推定しており、この予想が的中していたことが今回の報道で判明した形となります。

Appleは「Google検索を採用する代金」としてGoogleから年間3兆円を受け取っている - GIGAZINE


司法省対Googleの裁判の中で、Googleは「iPhoneユーザーはデフォルトの検索エンジンを簡単に変更できます」と述べてデフォルト検索の優位性を否定しつつ、Googleが選ばれているのはその品質と革新性によるものだと主張しています。

しかし、iPhoneの標準ブラウザ・Safariでデフォルト検索エンジンになるべく多額の支払いをしていたことが示された今回の報道により、Googleが検索ビジネスにおける優位性の維持をいかに重要視しているかが改めて浮き彫りになりました。

また、裁判の中で証言台に立ったMicrosoftのサティア・ナデラCEOは、このAppleとGoogleの契約には別の側面があったことを指摘しています。それは、もしAppleがGoogleとの関係を解消しようとした場合、GoogleはGmailやYouTubeなどの人気アプリを駆使してChromeやGoogleアプリを宣伝し、SafariやAppleがGoogle検索の代わりに採用した検索エンジンからユーザーを奪う戦法をとるだろうと想定されることです。


そのため、GoogleとAppleの取引は双方に利益をもたらすだけではなく、ある種の「平和条約」のようなものなのかもしれないと、IT系ニュースサイトのThe Vergeはコメントしました。

さらに、The New York Timesが入手したGoogleの内部文書により、GoogleはEUのデジタル市場法を利用して、Appleが導入した検索ツールである「Spotlight」に対抗しようとしていたことが明るみに出ました。

Spotlightとは、iPhoneやMac、iPadに搭載されている検索機能のことで、端末内のアプリやファイルのほか、インターネット検索や天気予報を調べることなども可能です。


The New York Timesによると、Googleは2022年の秋に、AppleのSafariへの依存度を減らす方法や、Appleを弱体化させるためにEUの法律をどのように利用するかについて話し合う会議を開いたことが、文書で明らかになったとのこと。Googleの幹部らが会議で何を決定したのかまではわかっていませんが、GoogleはiPhone内のデータにどこまでアクセスするかなど、さまざまな選択肢を検討していました。

この時Googleが目をつけたのが、EUで制定されたデジタル市場法です。デジタル市場法は、大手IT企業に対抗する中小企業の支援を目的としたもので、この法律により「ゲートキーパー」に指定された大手IT企業は自社のプラットフォームを競合他社に開放したり、ユーザーに使用するサービスに関する選択肢を与えたりしなければならなくなります。

Googleはこの法律を利用し、Appleにソフトウェアエコシステムを開放させるようEUの規制当局に働きかけて、SafariやSpotlightからユーザーを奪おうと計画していました。ユーザーがSafari以外を選択するようになれば、Chromeを使うEUのiPhoneユーザーは3倍になるとGoogleは見積もっており、そうなれば検索の広告収入を増やし、Appleに支払う額を減らすことが可能になります。

また、Googleは特にAppleのSpotlightに危機感を抱いており、どうにかして対抗しなければならないと考えていました。2014年に作成された社内プレゼンテーション資料(PDFファイル)には、Spotlightについて「結論:これはまずい」と書かれています。


Appleは2018年に、Google検索の有力幹部だったジョン・ジャナンドレア氏を引き抜き、Spotlight開発チームを増員して検索機能を強化しました。2021年にリリースされたiOS 15での検索機能の改善は、検索市場でのAppleの動向に対する懸念をGoogle社内に引き起こしたと、この件に詳しい人物は述べました。

The New York Timesによると、Spotlightの存在に焦ったGoogleの幹部は2022年に、Spotlightを検索エンジンに指定するようEU当局を説得する方法を考えていたとのこと。Spotlightが検索エンジンと位置づけられれば、デジタル市場法によりAppleは他の検索エンジンへのアクセスをユーザーに提供しなければならなくなるため、GoogleはSpotlightとの競争がやりやすくなります。

ペンシルベニア大学キャリーロースクールでテクノロジー分野の競争について研究しているガス・ハーウィッツ氏は、The New York Timesの取材に対し、「私は企業がより質の高い製品を提供し、消費者がその製品を使いたいと思うようなメリットで競い合うことを望んでいます。競合他社のプラットフォームにアクセスするために、弁護士に金を払ってEUでルール作りをするようなことは、本意ではありません」とコメントしました。

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in ネットサービス, Posted by log1l_ks

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