「Operaは変わり果てたのでもう使うな」と有識者が語る
ノルウェー発のウェブブラウザのOperaは、「Opera最強伝説」で知られるなど、ニッチながら根強い人気に支持されているブラウザです。テクノロジージャーナリストのコービン・ダベンポート氏が、「素晴らしいウェブブラウザだったが見る影もなくなった」としてOperaや派生ブラウザのOpera GXを使うのをやめることを宣言し、その理由をブログを説明しました。
Stop using Opera Browser and Opera GX
https://www.spacebar.news/stop-using-opera-browser/
◆これまでのOperaの足取り
Operaは1995年にリリースされたウェブブラウザで、当初は有料ソフトウェアだったということもあり、当時主流だったInternet ExplorerやNetscape Navigatorに比べてユーザーは少なく、全盛期でさえニッチなブラウザだったとダベンポート氏は振り返っています。
その後、Operaは2000年にリリースされたOpera 5.0で広告が表示される代わりに無料で使えるブラウザとなり、2005年には広告を削除してGoogleからの収入に頼るビジネスモデルに移行しました。
このような経緯をたどりながらも、Operaが熱心なユーザーに支えられていたのは、質の高い製品だったからです。ダベンポート氏は、2005年にリリースされたモバイル向けのOpera Miniを「2000年代最高のブラウザの1つ」と評しているほか、OperaがニンテンドーDSやWii用のブラウザの開発を主導した点も高く評価しています。
その後、Operaは2013年に独自エンジンであるPrestoの開発をやめて、Google Chromeなどと同じChromium系のブラウザへと移行しました。
OperaがWebKit+V8エンジンに移行することを発表、18年の歴史に幕 - GIGAZINE
そんなOperaの転機となったのが、2016年に中国企業に買収されたことです。Operaブランドの開発は中国企業傘下のOpera Limitedという企業に引き継がれ、オリジナルのOperaを手がけていたOpera SoftwareはOtello Corporationに改称し、Opera Limitedとは無関係な広告会社となりました。
◆Operaの問題点1:不正ローンアプリ問題とプライバシー
その後もOperaはノルウェーで開発が続けられていますが、2020年に金融調査会社のHindenburg Researchから「Operaの開発会社が不正に超高金利の短期ローンを組ませるアプリを配信している」と告発されてしまいました。この問題については以下の記事で情報をまとめています。
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問題のレポートによると、Operaがケニアなどで展開していたローンアプリのOKashやOKashは、ユーザーに電話連絡先へのアクセス許可を求めて電話番号を収集していたとのこと。そして、ユーザーが支払いを滞らせると、そのユーザーの連絡先に脅迫メッセージが送られました。
Hindenburg Researchは空売りによる株価の下落から利益を得る会社であるため、告発はある程度割り引いて受け止める必要があります。また、非難されたのはあくまでローンアプリであるため、ブラウザとは直接関係がありません。
しかし、ダベンポート氏は「ブラウザはパスワードやクレジットカード情報などの個人情報を扱います。ローンアプリで不適切な情報の取り扱いがあった以上、そのような企業に個人情報を委ねるわけにはいきません」と述べました。
◆Operaの問題点2:目先の流行を追う姿勢への転換
前述の通り、Operaは2013年にChromiumベースのブラウザとなったため、同様のブラウザとの違いはインターフェイス関連の機能にとどまります。また、Operaには大企業の後ろ盾もないので、広告付きのニュースフィードといった収益目的の機能の搭載にはやむを得ない側面があると、ダベンポート氏は考えています。
しかし、この点を踏まえても、Operaのトレンド路線は目に余るとのこと。Operaが目先の流行に飛びついた例の1つが、2017年にリリースされたOpera Neonです。
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Opera Neonは数カ月間更新されていましたが、その後ひっそりと打ち切られました。しかし、記事作成時点でも公開されたままであるため、重大なセキュリティリスクがあります。実際にダベンポート氏がMac向けのOpera Neonをダウンロードしたところ、最後のビルドの日付は2017年3月28日だったそうです。
Operaが次に目を付けたのは、Web3と仮想通貨です。Operaは2018年、イーサリアムの分散型アプリケーション(Dapp)をサポートすると同時に、デスクトップ版とAndroid版に仮想通貨ウォレットを追加しました。
さらに、OperaはICSTという仮想通貨スタートアップに3000万ドル(約44億円)を投資しましたが、その4日後にICSTのCEOが金融犯罪で逮捕されたことが、前述のHindenburg Researchによって指摘されています。
それでも、Operaはブロックチェーン技術への傾倒を続け、2022年にはNFTに特化したブラウザ「Opera Crypto Browser」をリリースしました。
Operaが暗号ブラウザ「Opera Crypto Browser」のベータ版を発表、NFTなどの購入がより簡単に - GIGAZINE
Operaのブロックチェーンへの熱中は、NFT市場の死とともに幕を下ろすことになります。Operaの公式ブログは2023年5月以降、仮想通貨に関する新機能を発表しておらず、Opera Crypto Browserのダウンロードページも2023年12月までにひっそりと削除されました。
また、Operaは2023年6月に主力ブラウザの名称を「Opera One」に変更し、独自の生成AI「Aria」を統合しましたが、これについてもダベンポート氏は「AIの誇大広告に便乗して利益を得ようとする大抵の製品と同じく、中身はOpenAIのGPTに過ぎません」と冷ややかに反応しています。
◆Operaの問題点3:Opera GX
Opera GXは、Operaが2019年にリリースしたゲーミング特化ブラウザで、Operaによると2023年7月時点でデスクトップ版は1820万人、モバイル版は340万人のユーザーを擁しているとのこと。通常のブラウザとは異なる点として、Twitchとの統合やゲーム関連のニュースを提供する「GXコーナー」があるほか、ゲームのリソースを奪わないようにCPUやRAMの使用量を制限する機能もゲーマーから好評を博しています。
Opera GXはまた、フォロワー数100万人を誇るOpera GXのX(旧Twitter)アカウントからゲームイベントやインターネットミームを発信したり、公認のVTuberであるGX Auraのキャラクターグッズを販売したりと、積極的なマーケティングを行っています。
Thank you for today's stream! I go eep now... ???? pic.twitter.com/vENBKDPKVh
— GX Aura ???????? NEW COVER OUT NOW!! (@GXAuraOfficial) January 25, 2024
Opera GX自体は特段の問題を起こしていませんが、Opera GXにはGX AuraのTwitchでの初配信をGXコーナーに埋め込んで視聴者数を水増しした疑惑があるほか、ブラウザを起動する際にコメディアンのエリック・アンドレ氏が叫び声を上げる広告ムービーが表示されるのがユーザーから不興を買っているとのことです。
Opera GXが起動する際の様子は以下から見ることができます。
random opera gx screaming dude(eric andre) - YouTube
◆結論
こうした点からダベンポート氏は、「Operaのものは使わない方がいいです。同社は流行を追い求め、減る一方のユーザーからできる限り多くのお金を引き出しています。なにせ、最近最も成功した事業は発展途上国の貧しい人からお金をむしり取ることと、SNSでミームを発信してゲーマーにリーチすることだという始末です。それに、Operaにあって競合ブラウザにない機能はもうほとんどありません」と述べました。
なお、ダベンポート氏によるとOperaだけでなくBraveも使わない方がいいそうです。
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