アメリカの半導体輸出規制を受けて中国企業が高性能GPUの組み立てをマレーシア企業に委託、一方で日本の半導体企業は先進的でない半導体製造装置の輸出で影響を相殺
アメリカは半導体関連製品の中国への輸出を厳しく制限しています。中国は規制を回避しつつ高性能チップの生産を行うことを目指しており、複数の中国企業がマレーシア企業に高性能チップの組み立てを委託していることや、日本の半導体企業の製品が中国企業に採用される事例が増えていることが報じられています。
Exclusive: Chinese firms look to Malaysia for assembly of high-end chips, sources say | Reuters
https://www.reuters.com/technology/chinese-firms-look-malaysia-assembly-high-end-chips-sources-say-2023-12-17/
Tokyo Electron says China is snapping up its less advanced chip tools amid export controls
https://www.ft.com/content/186d3704-e54a-4e6a-9d0b-4fc0bf967d5f
アメリカは中国によるAI開発を軍事上の脅威と認識しており、AIの開発に使われる可能性のある高性能チップや半導体製造装置などの中国への輸出を厳しく制限しています。アメリカは2022年9月に中国への半導体輸出にライセンス制を導入し、輸出可能な製品を制限。さらに、2023年10月には輸出可能な半導体の性能上限を新たに設定し、中国への輸出規制を継続する姿勢を明確にしていました。
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アメリカによる輸出規制は完成済みのチップだけでなく半導体製造装置などにも及んでいます。ロイターの報道によると、中国の半導体企業がGPU生産工程の一部をマレーシア企業に委託するべく議論を進めていることが確認されたとのこと。議論の関係者は「中国のチップ設計企業とマレーシアの半導体企業は良好な関係にある。マレーシアは物価が安く経験豊富な労働力と洗練された設備を有していると認識されている。このため中国企業はマレーシア企業を有望な選択肢とみなしている」と指摘しています。
また、マレーシアに拠点を置く半導体企業「Unisem」のジョン・チア会長は具体的な企業名は避けつつ「中国の多くのチップ設計企業が輸出規制やサプライチェーンの問題を受けており、中国国外での新たな供給源の確保を目指してマレーシアに来ている」と述べ、中国企業との取引が活発化していることを認めています。
なお、日本もアメリカと協調して中国への輸出規制を進めており、日本の半導体企業も最先端半導体製造装置などを中国に輸出できない状況となっています。このため、東京エレクトロンは「最先端ではない半導体製造装置」の輸出を拡大しているとのこと。東京エレクトロンのIR室長を務める高木純子氏は「もちろん輸出規制による影響はあったが、影響は予想よりもはるかに小さかった」と述べて輸出規制の影響を最小限に抑えられたことを強調しています。
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