サイエンス

インカ帝国の王国は「鳥のふん」によって支えられていたという研究結果

by ~riley

ペルーの南海岸に位置したチンチャは西暦1000年から1400年にかけて繁栄した大規模な文明王国で、15世紀頃にインカ帝国に併合されました。オンラインジャーナルのPLOS ONEに掲載された研究論文で、海鳥の糞(ふん)であるグアノがチンチャ文明の社会政治的および経済的な拡大を支える極めて重要な資源であったことが明らかになりました。

Seabirds shaped the expansion of pre-Inca society in Peru | PLOS One
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0341263

How bird poo fuelled the rise of Peru’s powerful Chincha Kingdom
https://theconversation.com/how-bird-poo-fuelled-the-rise-of-perus-powerful-chincha-kingdom-275316

シドニー大学、スミソニアン研究所、テキサスA&M大学などの研究チームは、チンチャの遺跡から出土した35個のトウモロコシの穂軸と11羽の海鳥の遺骸を対象に、炭素、窒素、硫黄を用いた多重同位体分析を実施しました。

この分析の結果、トウモロコシから検出された窒素同位体比の平均値が極めて高い値を示しており、遅くとも西暦1250年頃には先住民コミュニティがグアノを肥料として作物の生産性を高めていたと研究チームは論じています。


グアノは牛などの陸生動物の糞尿と比較して窒素やリンを圧倒的に多く含む強力な有機肥料であり、乾燥した気候によって海に流出することなく数メートルの高さまで堆積していました。今回の化学的分析は、考古学的なトウモロコシにおいて、海鳥のグアノ利用を証明するこれまでで最も強力なデータとなっているとのこと。


チンチャの人口はおよそ10万人ほどで、漁師や農民、商人といった専門化されたコミュニティで構成されていました。漁師は沖合約25キロメートルにあるチンチャ諸島からグアノを収集して農民に提供し、農民がそれを用いてトウモロコシの収穫量を増やし、商人がそのグアノや作物を海岸沿いやアンデス高地へと交易する独自の経済ネットワークが構築されていたとのこと。

研究チームは、チンチャの住民は「海鳥が海で魚を食べてその糞がトウモロコシを育て、トウモロコシが人間を養う」という生態学的サイクルを深く理解していたと述べています。この世界観は当時の織物や陶器、建築用彫刻などに描かれているそうで、たとえば以下の儀式に使われたとされる木のへらには海鳥や魚、芽吹くトウモロコシが彫られています。


さらに、ペルーにあるピスコ(Pisco)という地名は当時の言葉で「鳥」を、ルナワナが「グアノの人々」と訳されるなど、現代の地名にもグアノ経済圏の名残があると指摘しました。

研究チームは「本研究はインカ以前の世界におけるグアノ施肥の地理的範囲を拡大し、チンチャ王国の台頭におけるその役割を予測した研究結果を強く裏付けるものとなりました」と述べていますが、このグアノをベースとしたエコシステムがいつから存在しているのかについてはまだ解明すべき謎が多く残されているとしています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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