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大規模言語モデルを駆使して数理科学問題の新しい解決策を数学者よりも巧みに出力するAIシステム「FunSearch」をGoogle DeepMindが発表


GoogleのAI開発部門であるGoogle DeepMindが、大規模言語モデル(LLM)を利用して数理科学の未解決の問題を解決したり、新しい知見をもたらしたりすることができるAIシステム「FunSearch」を発表しました。Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOは「FunSearchのブレークスルーに興奮しています」と語っています。

FunSearch: Making new discoveries in mathematical sciences using Large Language Models - Google DeepMind
https://deepmind.google/discover/blog/funsearch-making-new-discoveries-in-mathematical-sciences-using-large-language-models/


DeepMind AI outdoes human mathematicians on unsolved problem
https://www.nature.com/articles/d41586-023-04043-w

Mathematical discoveries from program search with large language models | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06924-6

DeepMind AI with built-in fact-checker makes mathematical discoveries | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2407897-deepmind-ai-with-built-in-fact-checker-makes-mathematical-discoveries/

AI scientists make ‘exciting’ discovery using chatbots to solve maths problems | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2023/dec/14/ai-scientists-make-exciting-discovery-using-chatbots-to-solve-maths-problems

ChatGPTやBardといったチャットAIのベースとなるテクノロジーのLLMは、膨大な量のテキストやその他のデータから、コンピューターコードを含む言語パターンを学習する強力なニューラルネットワークです。2022年にChatGPTが登場して以来、LLMを利用したさまざまなはさまざまなAIツールが登場するようになっています。


そんなLLMを利用してGoogle DeepMindが開発したのが、「FunSearch」です。FunSearchという名称は「searching in the function space(関数空間での検索)」の略で、コンピュータープログラム形式で問題の解決策を作成することができるAIツールとして構築されました。

FunSearchはプログラムのパフォーマンスの高さによって自動的にプログラムをランク付けする「評価器」と組み合わされており、FunSearchは貧弱なプログラムを新しい知識を発見できるより強力なプログラムに進化させることができると表現されています。

ハサビスCEOは自身のXアカウントで、「今日Natureで発表された最新のブレークスルーに興奮しています。FunSearch(『関数』空間での『検索』)は、数学とコンピューターサイエンスにおける未解決の問題で検証可能な新しい発見を実行できる最初のシステムです。我々はこれをより効率的に問題を見つけるために利用しました。古典的な『ビンパッキング問題』の解決策となります」と語っています。


Google DeepMindの研究チームはFunSearchに2つのパズルを入力しました。ひとつは長年解決不可能な数学問題とされてきた「Cap set」で、FunSearchは数学者が考え出した回答を超える優れた解決策を複数出力することに成功しています。

FunSearchに入力したもうひとつの数学問題が、さまざまなサイズのアイテムをビンに詰め込む最適な方法を探す「ビンパッキング問題」です。FunSearchはビンパッキング問題でも、これまで人間が編み出してきたアルゴリズムよりも優れたアプローチを発見することに成功しています。

同研究に関与していないケンブリッジ大学の数学教授であるティム・ガワーズ氏は、「過去2、3年間で人間の数学者がAIと協力して未解決の問題に取り組む興味深い事例が複数報告されてきました。この研究は研究者とAIのコラボレーションのこれまでとは異なる非常に興味深いアプローチを提供する可能性があり、数学者が賢く予想外の構造を効率的に発見できるようにするものです。さらに良いことに、FunSearchの出力するアルゴリズムは人間によってに解釈可能です」と、FunSearchを称賛しました。


Google DeepMindの研究チームはFunSearchが処理できる科学的問題の範囲を調査しています。主な制限要因はより直接的な影響はコンピュータープログラマーにおよぶ可能性があります。過去50年間、人間がより専門化したアルゴリズムを作成することで、コーディングは大幅に改善されました。Google DeepMindで科学者向けAI責任者を務めるプッシュミート・コーリ氏は、「FunSearchは人々がコンピューターサイエンスやアルゴリズムの発見に取り組む方法に変革をもたらすでしょう。LLMが引き継ぐのではなく、アルゴリズムで可能なことの限界を押し上げるのを確実に支援するのです」と、FunSearchの今後の活躍に期待を寄せています。

ウィスコンシン大学マディソン校の数学教授であり、FunSearchの開発にも携わったジョーダン・エレンバーグ氏は、「FunSearchは解決策を生成するのではなく、解決策を見つけるプログラムを生成します。特定の問題を解決しても、他の関連する問題を解決する方法については何の洞察も得られない場合があります。しかし、FunSearchが出力する『解決策を見つけるプログラム』は人間が読んで解釈できるものであり、できればそれによって次の問題、さらにその次の問題に対するアイデアを生み出すことができます」とFunSearchについて語っています。

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in ソフトウェア, Posted by logu_ii

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