Google DeepMindが「AIは人間と同じように社会学習でスキルを獲得できる」ことを実証したと主張
Google DeepMindの研究チームが、AIも人間同様の知識伝達手段によってスキルを獲得できるとする研究結果を発表しました。
Learning few-shot imitation as cultural transmission | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-023-42875-2
「状況に応じて適切に行動し目的を達成する」ための知識について、人間はテレビで見た新しいレシピを再現したり、ツアー旅行でガイドに付いていったり、同僚からコピー機の使い方を教えてもらったりするなどの行動を通して、他の人間から効率的に知識を得ることができます。
こうした人間の知識伝達の仕組みをAIに取り込むことで、AIが知識を獲得するために膨大な事例のデータを読み込み、大量の時間とコンピューティング能力を使用する必要がなくなる可能性があります。また、人間とAIがより有益なやりとりを行う上でも、AIが人間の知識伝達方法を知っておくことは有益です。
DeepMindの研究チームは、知識伝達手段の一つとしてAIに「動きを模倣」する能力を与え、「適切な順番でゴールに入る」というゲームを行わせました。「エキスパートが最後まで同伴する」「エキスパートが途中まで同伴する」「エキスパートがいない」という3つの状況を作ることで、AIがエキスパートから適切にプレイ方法を学べるかを検証しました。
研究チームによると、従来の強化学習ベースのAIが全くスコアを向上できなかったのに対し、新たに模倣能力を与えたAIはエキスパートの動きを見て学ぶことでスコアを向上できたとのこと。下図左側はトレーニングにおいてどの程度知識の伝達が発生したのかという指標で、右側はトレーニング中のスコアの推移です。図の赤色範囲では、トレーニング開始後しばらくの間はAIが移動や探索の方法を学んでおり知識伝達やスコアの向上が起きないことが読み取れますが、エキスパートの動きに従うことを学ぶと青色範囲で示されているように急速にスコアが向上します。
黄色の段階では知識伝達の度合いが1に近くなっており、ただ動きに従うだけでなく、エキスパートが途中で退出しても問題なくゲームをプレイできるようになっていることが読み取れるとのこと。その後トレーニングを続けると紫色で表示されている範囲の通り、知識伝達の度合いは低下している一方でスコアが向上しており、エキスパートの知識を吸収し終えて自力でスコアを伸ばしていることが分かります。
研究チームはわずかな模倣を通してAIに知識を伝達する方法を開発できたとした上で、「知識伝達能力は汎用人工知能の開発においてアルゴリズムの役割を果たせる」と汎用人工知能開発への意欲を述べました。
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