ゲームキャラ1万3000人を調べた結果「男性キャラは女性キャラの2倍セリフが多い」ことが判明
スコットランドのグラスゴー大学とイギリスのカーディフ大学の研究者らは、ゲーム上における対話に関する史上最大規模の調査を実施しました。1万3000人以上のゲームキャラクターを集計した結果、「ゲームでは、男性が女性の2倍話している」ということが示されています。
Gender bias in video game dialogue
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.221095#d1e902
Largest study of video games reveals male characters say twice as much as female characters
https://phys.org/news/2023-05-largest-video-games-reveals-male.html
イギリス王立協会オープンサイエンス誌に掲載された論文では、ゲーム上の対話・発言におけるジェンダー的偏りが調査されました。論文によると、映画やテレビ、本などにおける同様の調査は過去に十分行われていますが、ビデオゲームに関するデータは不足していたため、「ビデオゲーム対話コーパス」を作成してオープンソース化することにしたとのこと。
調査の方法として、まず調査対象となるゲームのジャンルを、「対話を主要な要素とするRPG」に限定。そして、世界中で少なくとも100万本以上売れているゲームをリスト化しました。その後、リリースした日時、対象ユーザー、ティーン向けかアダルト向けかという基準などを、サンプリングフレームに従ってバランス良く偏らないように集めています。
選択されたゲームについて、ソースコードから直接的なデータを得たり、有志が作成した記録を参考にしたりしてテキストを収集。収集したデータに、スクリプトと手動編集を合わせることで、どれがどのキャラクターの発言かを特定して集計・分析が行われました。
合計40万40609行、567万9321単語のセリフを分析した結果、女性キャラクターによる発言はこのうち35.16%で、男性キャラクターの発言は64.84%と、男性キャラクターが約2倍の量を話していることがわかりました。女性の会話がゲーム内の50%を超えるゲームは、調査に含まれたリストの中ではわずか6%のみ。会話量の偏りはそもそも登場キャラクターに起因する可能性が高く、男性キャラクターの数が70.63%、女性キャラクターの数が29.37%となっています。なお、性別が明確ではないキャラクターについては、今回の集計からは外れています。
また、同じ研究では、「登場人物が誰に話しかけるか」についても不均衡があると判明しました。女性キャラクターは、セリフの絶対数やゲーム内の女性キャラクター数が少ないことを考慮しても、女性キャラクター同士で話すことが少なくなっています。さらに、女性キャラクターは謝ったり迷ったり礼儀正しかったりと対話の内容にも偏りがあると示されています。女性キャラクターの発言数は、ゲームが新しくなるほど徐々に増加している傾向にありますが、同じペースで増えた場合、男性と女性で均等になるには10年以上かかるとのこと。
グラスゴー大学人文科学部哲学研究員のステファニー・レニック氏は、研究の結果を受けて「全体的に男性の会話の割合が高いと予想していましたが、女性の会話の割合が多いゲームがいかに少ないか、結果を見て驚きました。ゲームプレイヤーに対して行った調査でも、多くのプレイヤーが『男性の会話が多い』と予想しましたが、やはり女性の会話が多いゲームの数を過大評価していました」と語っています。
カーディフ大学のコミュニケーション・哲学学部講師のショーン・G・ロバーツ氏は「ゲーマーの約半数は女性ですが、彼女たちは多くの差別や排除を経験していることになります。プレイヤーや開発者は、より多様な表現を求めています。そのため、より包括的なゲームを作成するために、私たちが発見した不均衡への対処を、開発者が検討してくれることを願っています」と述べています。
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