メモ

「AI規制派は悲観論者」と主張し規制なき市場での成長加速を志す「効果的加速主義(e/acc)」がテック業界で流行中、サム・アルトマンも賛同するe/accとは一体なんなのか?


AIの研究開発が急速に進む中、AIの安全性を重視するように求める声も目立つようになっています。一方で、テック業界では「テクノロジーを規制せずに技術進歩を無制限に加速するべき」とする思想「効果的加速主義(e/acc)」も広がりつつあります。

This A.I. Subculture’s Motto: Go, Go, Go - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/12/10/technology/ai-acceleration.html

A New Wave in AI: The Rise of Effective Accelerationism – Cryptopolitan
https://www.cryptopolitan.com/a-new-wave-in-ai-the-rise-of-accelerationism/

AIの研究開発が急速進む中、「AIが人類社会に取り返しの付かない悪影響をもたらすのではないか」と危惧する考えも広がっており、研究者や企業に対してAIの安全性を重視するように求めたり政府による規制を求めたりする声も大きくなっています。このような考え方は、データに基づいたアプローチをとることから「効果的利他主義(Effective Altruism:EA)」と呼ばれていましたが、単にAIに慎重な立場を指す言葉としても使われるようになりました。これとは対照的に、EA支持者を「decels(減速させる人たち)「doomers(悲観論者たち)」と非難し、「テクノロジーの規制は不要で、自由に研究開発を進められる環境が重要だ」とする考え方「効果的加速主義(Effective Accelerationism)」も広がりつつあります。


効果的加速主義の支持者らは自身の考え方を「e/acc(イー・アック)」と呼称しており、2022年頃にe/accについて語り合う小規模なコミュニティがインターネット上で形成され始めました。e/accの支持者は主にSNSやニュースレターを介して思想を広げており、「ベフ・ジェゾス」と名乗る人物「ベイズ」と名乗る人物が中心的な役割を担っているとされています。ベフ・ジェゾスとベイズの正体は不明な状態が続いていましたが、2023年12月1日には海外メディアのForbesが「元Google従業員で2022年にAI企業『Extropic』を設立したギヨーム・ヴェルドン氏がベフ・ジェゾスの正体は自分であることを認めた」と報じています。

2022年6月にはOpenAIのサム・アルトマンCEOがベフ・ジェゾスに対して「あなたは私よりも加速することはできない」とリプライを飛ばし、自らも効果的加速主義と似た考えを持っていることを示唆していました。しかし、ニューヨーク・タイムズによると2022年時点ではe/accの影響力はそれほど大きくなかったとのこと。


しかし、e/accは徐々に影響力を拡大し、著名人が続々とe/accの支持を表明するようになりました。例えば、ベンチャーキャピタル「Y Combinator」のゲイリー・タンCEOは2023年8月にベフ・ジェゾスに対して「ブラザー」と呼びかけ、「私たちは一緒に戦っています」と支持を表明しています。


また、タン氏は記事作成時点でもXの表示名に「e/acc」という単語を含めており、e/accの支持をアピールしています。


他にも、Netscape Navigatorの開発者として知られ記事作成時点では投資家として活動しているマーク・アンドリーセン氏もXアカウントの概要欄に「E/acc」という語句を含めてe/accの支持を表明しています。


さらに、アンドリーセン氏は2023年10月にAIの急速な発展を楽観的に捉える「テクノオプティミスト宣言」を発表していたのですが、宣言の発表時に「テクノオプティミズムの守護聖人」としてベフ・ジェゾスとベイズの名前を挙げており、自身の考え方がe/accと深く関係していることを強調しています。


e/accの考え方が広がる中、2023年11月7日にはサンフランシスコでe/acc支持者によるイベント「Keep AI Open」が開催されました。ニューヨーク・タイムズによると、このイベントはイーロン・マスク氏との間に子どもをもうけたことで知られるミュージシャンのグライムス氏も参加する大規模なもので、会場には「Accelerate or Die(加速か死か)」と記されたバナーや「Come and Take It(やれるもんならやってみろ)」と記されたニューラルネットワークの模式図なども掲げられていたとのこと。ただし、グライムス氏は自身のXアカウントで「はっきり言っておきますが、e/accの主張には反対です」と述べています。


また、広がりを見せるe/accに対してe/accの考え方を少し変えた思想も複数の人々によって提案されています。例えば、イーサリアムの開発者であるヴィタリック・ブテリン氏はEAとe/accを両立した考え方「d/acc」を自身のスタンスとして掲げています。この「d」は防御(defense)、分散化(decentralization)、民主主義(democracy)、差異(differential)などさまざまな意味を包含しているとのことです。

My techno-optimism
https://vitalik.eth.limo/general/2023/11/27/techno_optimism.html


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in メモ, Posted by log1o_hf

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