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Netscape創業者が「AIの進歩を阻むのは一種の殺人」と提唱、テクノロジーが導く未来を批判的に楽観視する「テクノオプティミスト宣言」とは?


初期のウェブを席巻したブラウザ・Netscape Navigatorの開発者で、ベンチャーキャピタル・Andreessen Horowitz(a16z)の創業者でもあるマーク・アンドリーセン氏が、a16zの公式サイトで「テクノオプティミスト宣言」を発表しました。「私たちは騙されています」から始まる散文詩のような声明文には、AIなどの技術の発展こそが人類の暮らしをよりよくするとの展望がつづられており、複数のメディアが賛否両論とともにこの宣言の発表を報じています。

The Techno-Optimist Manifesto | Andreessen Horowitz
https://a16z.com/the-techno-optimist-manifesto/

Marc Andreessen’s ‘Techno-Optimist Manifesto’: Prometheus, Nietzsche, and AI | Fortune
https://fortune.com/2023/10/16/marc-andreessen-techno-optimist-manifesto-ai-frankenstein-prometheus-superhuman-industrial-revolution/

Marc Andreessen Manifesto Says AI Regulation “Is a Form of Murder”
https://www.404media.co/marc-andreesen-manifesto-says-ai-regulation-is-a-form-of-murder/

Marc Andreessen’s ‘Techno-Optimist Manifesto’ – Pixel Envy
https://pxlnv.com/linklog/techno-optimist-manifesto/

アンドリーセン氏のテクノオプティミスト宣言は、「うそ」「真実」「知能」「人生の意味」「敵」「未来」など15の項目で構成されており、それぞれの項目の観点からテクノロジーの重要性を説いたものです。

by FORTUNE Global Forum

例えば、最初の項目である「うそ」の中でアンドリーセン氏は「私たちはだまされています。テクノロジーが私たちの仕事を奪い、賃金を下げ、健康を脅かし、環境を破壊し、社会を劣化させ、子どもたちを堕落させ、人間性を損ない、未来を脅かし、すべてを破滅させる寸前だと聞かされています」と述べて、こうした主張は虚偽であると切り捨てています。

一方、次項の「真実」では「私たちの文明はテクノロジーの上に築かれました」「テクノロジーは人間の野心と成果の栄光であり、進歩の原動力であり、私たちの可能性を実現するものです」「私たちは、はるかに優れた生き方や在り方へと前進することができます」といった主張を真実として列挙した上で、「もう一度テクノロジーの旗を掲げる時が来ました。テクノオプティミストになる時の到来です」と宣言しました。


アンドリーセン氏は、テクノオプティミストにとっての社会は進歩し続けるか破滅するかであるとしており、テクノロジーを人口や天然資源に並ぶ進歩の源と位置づけた上で、人口減や資源の有限性から「永続的な成長の唯一の源はテクノロジーです」と強調しています。

また、テクノロジーの具体例としては、暗闇に対抗するための照明から、暑さ寒さに耐えるための冷暖房、つながりを求めるためのインターネット、パンデミックと戦うためのワクチン発明までさまざまな技術開発が挙げられていますが、中でも特にアンドリーセン氏が重要視しているのがAIです。


「知能」の項目でアンドリーセン氏は、「人工知能は私たちの錬金術であり、賢者の石であると私たちは信じています」と述べて、医学や自動運転車、創薬などの分野から戦争における同士打ちの防止まで、さまざまな方法でAIが人命を救うと主張しました。

AIにまつわる議論の中には、テクノロジーへの懸念からAIの開発を遅延または停止させるべきであるという意見もありますが、これに対してアンドリーセン氏は「私たちは、AIの減速は人命を犠牲にするものだと考えています。つまり、阻止されなければ存在できたAIによって防げたはずの死は、殺人の一形態です」と、強く批判しています。

ただし、AIがあれば理想郷のような社会ができるとも考えてはいないとのことで、「私たちはユートピアではなく、経済学者のブラッド・デロングが言うところの『ユートピアに向かって前のめりになること』、つまり人類にできる最善を尽くしていくことで、少しずつ状況が改善されていくのだと考えています」としています。


シリコンバレーの著名人が公開した今回の宣言に対し、複数のメディアが反応しました。例えば、ビジネス雑誌のFortuneは、アンドリーセン氏がニーチェの超人思想を引用していることに言及し、「大雑把に単純化すれば、ニーチェの超人の概念は、『神が以前あぐらをかいていた場所を機械が奪うことで、人間が自分たちの運命を決定できるようになる』というものでした。この信念は紛れもなく力強いものでしたが、20世紀の悲劇はその危険性をも浮き彫りにしています。アンドリーセン氏は、共産主義を繰り返し非難することで、その危険性を部分的に示唆しました」と解説しています。

また、海外メディアの404 Mediaは「アンドリーセン氏や技術的食物連鎖の頂点に立つ他のベンチャーキャピタリストたちが、AIをめぐる会話を制限することで最も得をする立場にあるというのは事実です」と述べて、アンドリーセン氏のAI擁護は投資家としてのポジショントークだと指摘しました。

また、カナダのフロントエンド開発者であるニック・ヒア氏はブログ記事で、「枝葉末節を省けば、進歩はいいことであり後退はよくないということに誰でも同意できるでしょうが、アンドリーセン氏のエッセイのポイントは『市場原理は慎重さより優先されるべき』という暗く悲観的な世界観です。例えば、アンドリーセン氏はAIの発展をさまたげるのは殺人と書いていますが、自律走行車による交通事故死のような、監視の欠如がもたらす死については触れていません」と述べて、ベンチャーキャピタリストがよく使ううたい文句以上のものではないと結論づけました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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