「ニューヨーク市警察の署内で動画を撮影する権利」を勝ち取ったYouTuberがかつて逮捕された署内で喜びのライブ配信を行う
2023年11月、ニューヨーク市警察の分署で撮影を行ったとして2度逮捕されたYouTuberのショーン・ポール・レイエス氏が、「ニューヨーク市警察の規則は不適切だ」と訴えた裁判で、裁判所から規則の差止命令を勝ち取りました。ニューヨーク市警察の分署で撮影を行うことに裁判所のお墨付きが得られたのを受けて、レイエス氏は命令書のコピーを持ってニューヨーク市警75分署でライブ配信を行っています。
You Can Now Film in NYPD Precincts, Thanks to This YouTuber - Hell Gate
https://hellgatenyc.com/you-can-now-film-in-nypd-precincts-thanks-to-this-youtuber
レイエス氏は57万人を超える登録者数を持つYouTubeチャンネル・Long Island Auditを運営しています。投稿している動画は主に警察官の活動を撮影したものであり、その目的は法執行機関や政府機関が人々をどのように扱っているのかを伝えることです。レイエス氏は、自身のように法執行機関や政府関係者の姿を撮影するYouTuberのことを、言論や報道の自由を妨げる法律の制定を禁じた「憲法修正第1条の監査人」と呼んでいます。
レイエス氏は新型コロナウイルス感染症のパンデミックをきっかけにYouTuberとなりましたが、以前からさまざまな「憲法修正第1条の監査人」の動画を好んで視聴していたとのこと。レイエス氏は、「交通違反の取り締まりを受けたり政府機関の中に行ったりして、彼らが日常的に一般市民をどのように扱っているのかを見るのです。法執行機関や政府の役人たちが、誰かが自分を録画していることにどうして腹を立てるのか、私はいつも興味深く思っていました」と述べています。
同様に警察官の活動を撮影するYouTuberは数多くいますが、レイエス氏は他のYouTuberよりも警察官に対して礼儀正しく接し、時には警察官に対して時間を割いてくれたことへの感謝を伝える点が特徴だとのこと。そのため、ニュージャージー州やオハイオ州の警察署から憲法修正第1条の訓練に招待されたこともあるそうです。
ところが、レイエス氏がニューヨーク市警察の分署内で撮影を行ったところ、「ニューヨーク市警察は分署内での動画撮影を禁止している」として2度にわたり逮捕されてしまいました。これに対しレイエス氏は2023年7月に、ニューヨーク市警察の規則は法律に違反していると主張して訴訟を起こしました。
レイエス氏は(PDFファイル)訴状の中で、ニューヨーク市警察の規則は撮影者が警察の業務を妨害したり法に違反したりしない限り「警察を録画する権利」を明示的に保証するニューヨーク州およびニューヨーク市の記録権法に反しており、規則の制定も行政手続法にのっとったものではなかったと主張しています。
そして2023年11月、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所のジェシカ・クラーク判事はレイエス氏の主張を認め、ニューヨーク市警察の規則が州及び市の記録権法に違反しているという裁定を下しました。クラーク判事は規則の執行を禁じる差し止め命令を出すと共に、すべての分署において撮影禁止の看板を撤去するように命じました。クラーク判事は命令書の中で、「記録権法は警察署のロビーを『個人が撮影できない場所』として定めてはいません。レイエス氏は、記録権法の下で主張が認められる可能性が高いといえます」と述べました。
レイエス氏の訴訟はこれで終わりではなく、規則執行の恒久的な差し止めを求めて弁護団はさらなる情報収集と検証を行うとのこと。一方でニューヨーク市警察も諦める気配を見せておらず、裁判所命令を不服として控訴しています。控訴審の判決には数年以上かかる可能性があり、その間は差し止め命令を停止することもニューヨーク市警察は求めているとのことです。
しかし、少なくとも今回の裁判で出された差し止め命令が有効である間は、ニューヨーク市警察の分署で撮影を行うことが可能です。そこでレイエス氏は、差し止め命令が出た翌週に、命令書のコピーを持って分署でのライブ配信を行いました。
Federal Judge ORDERS NYPD To Stop Enforcing No Recording Policy & Remove Unlawful Signs! - YouTube
警察署に向かう道でライブ配信を始めるレイエス氏。
左手に命令書のコピーを持っており、背後にはYouTubeチャンネルのカメラマンも同行しているようです。
かつて自分が逮捕された75分署に入るレイエス氏。
すでに署内から「撮影禁止」の看板が撤去されていることを喜んでいます。
かつてレイエス氏が75分署でライブ配信を行って逮捕された際、留置されていた部屋が指で差す方向にあるとのこと。
レイエス氏はニューヨーク市警察に対し、正式に苦情の提出を行いました。
署の外に出たレイエス氏は、「これは皆さんにとって大きな勝利です。『いいね』ボタンを押して、このビデオを共有してください。そうすれば、ニューヨーク市の誰もがこのビデオを見て、私たち市民が一緒に何を成し遂げることができるかを知ることができます。私たちは真の変革を成し遂げることができます。これはまさに私たちが勝った戦いです。まだ勝たなければいけない戦争が残っています」とコメントしました。
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